*

『1937年の日本人』山崎雅弘著 1940年東京オリンピック中止と関連

公開日: : 戦跡観光

北支事変、シナ事変は、観光税制において重要な事件。通行税、入場税、遊興飲食税が創設されたからである。詳しくは拙著「観光政策学」を読んでもらいたい。財団JTBが最近観光政策と観光税制に興味を持っているようだが、本当はこのあたりからしっかり勉強してもらわないといけないと思う。

さて、本書は「なぜ、日本は戦争への坂道を歩んでいったのか」をテーマに記述している。
7月7日は七夕でしかないが、シナ事変、つまり日中戦争開始の日である。北京郊外で「盧溝橋事件」が発生、1945年までの8年間にわたる日中戦争がはじまった。当時の日本政府は大東亜戦争といった。
事件当初はすぐに終わるだろうという楽観的雰囲気があったが、汪兆銘は情勢の深刻さを正しく認識。「中国は遅れているので日本軍の侵攻に軍事面で抗争できないため、何らかの方法で日本軍侵略の程度を少なくすべく努力しなければならず、全国民は最大に犠牲を覚悟しなければならない」 日中戦争の勃発を「天祐」と呼んだ財界人の小林一三。

客観的判断ができない日本は、南京入城に際しても、フライングしている。戦争が早く終わってほしい気持ちを抑えきらないから、現地部隊の指揮官は入城式の延期を求めたが、一日も早い挙行を望む松井石根司令官は、17日の開催を命じた。蒋介石は16日に、漢口から放送し、あくまで抗争を継続すると述べている。

アメリカ軍がベトナムや朝鮮半島、アフガニスタン等で犯した情勢判断の誤りと同じことが、既にみられるのである。

関連記事

no image

◎◎3 戦争、観光、メディア~戦争も観光資源へのパスポート~

 戦争・戦闘はメディアが好んで取り上げる。メディアは刺激を基本とするからである。観光を論じる意義とそ

記事を読む

no image

『細菌戦部隊と自決した二人の医学者』常石敬一、浅野富三

p.97に「厚生省の設置」の記述があるが、著者は「厚生」の語源には興味なく触れていない。観光研究

記事を読む

no image

東アジア人流観光論の骨格(人口と人流)

○東アジアの人流を考える場合に、まずその地域の定住人口の推移を把握しておく必要がある。私は定住人口の

記事を読む

no image

『骨が語る日本人の歴史』を読んだAMAZON感想文のメモ

「歴史は後からつくられるから、観光資源なぞいつでも作ることができる」と常日頃主張させていただいている

記事を読む

no image

福間良明著『「戦跡」の戦後史』岩波現代全書2015年を読んで

観光資源論をまとめるにあたって、改めて戦跡観光を考えていたが、偶然麻布図書館で福間良明氏の『戦跡の戦

記事を読む

no image

蓮池透・太田昌国『拉致対論』めも

p.53 太田 拉致被害者家族会  まれにみる国民的基盤を持った圧力団体 政府、自民党、官僚、メディ

記事を読む

no image

マニラ市街戦 NHKのドキュメンタリーを見て

港区図書館で表記DVDを借りて早速見てみた。マニラは二回訪問しているが、最近はUberも登場している

記事を読む

no image

グアム・沖縄の戦跡観光論:『グアムと日本人』山口誠 岩波新書2007年を読んで考えること

沖縄にしろ、グアム・サイパンにしろ、その地理的関係から軍事拠点としての重要性が現代社会においては認め

記事を読む

no image

QUORAにみる観光資源 フランスには第一次世界大戦がきっかけで未だに住むことのできない地域があるって本当ですか

この回答は次の質問に対するQuora英語版でのRichard Sampleさんの回答です (ご本人

記事を読む

no image

保阪正康氏の講演録と西浦進氏の著作物等を読んで

日中韓の観光政策研究を進める上で、現在問題になっている「歴史認識」問題を調べざるを得ない。従って、戦

記事を読む

PAGE TOP ↑