『満州鉄道 まぼろし旅行』川村湊2002年文芸春秋
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最終更新日:2023/05/29
戦跡観光
資料を活用したよくできたわかりやすい著作物。小学6年生のサツキくんと小学4年生のヤヨイちゃんをつれて道案内をする仮想旅行。大連からハルピン、ノモンハンまでを日本人観光客に説明するにはこれが一番わかりやすいものの一つであろう。
しかし、大連で、クーリーが登場する所を除けば、やはり日本人の視線。ハルピンで白系ロシアのダンサーを見る目も日本人の視線であるのは観光客としては当然であろう。ホストゲスト論をまたなくても、植民地目線にならざるをえず、当然中国人の目線からすると、満州も違った風景に見えてくるであろう。「歴史認識の違い」以前の問題である。観光資源は相対的であるのである。
観光と遊覧の言葉の出現を見ると、遊覧が多い。観光が出てくるのは固有名詞である新京観光協会、新京観光バスとしてであるが、同時に遊覧も使用されている。「御遊覧にも御視察にも御利用」と表現。
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