大衆軍隊出現の意味 三谷太一郎講演メモ 学士会報2018-Ⅳ
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歴史は後から作られる」
226事件は、天皇の統帥権の名目化
軍隊の大衆化 軍隊内の実権は将官、佐官、尉官へと下降した
岡田内閣打倒の政友会が菊池武夫遺族員議員演説に便乗し、軍部や右翼と結託して、天皇機関説排撃運動を全国で展開。政府は事態を収めるため、定見なく機関説を禁止。美濃部攻撃の先頭に立った鈴木政友会総裁、しかい、選挙結果はさんさんたる大敗北、総裁も落選。大敗の原因は天皇機関説排撃と国体明徴運動の貫徹を選挙の争点にしようとしたことにあった。朝日新聞はファッショ的風潮に対する国民的反感の表れと分析。このような記事が226事件の朝日新聞社への乱入行為につながった。226事件の首謀者たちにとって、総選挙の結果は想定外であり、それによってクーデター計画の実行のタイミングが早められたと思われる
226事件の前年、1935年の経済状況
管理通貨制度の下、日銀による国債引き受けによって財源をねん出し、農村部にも及ぶ公共事業を積極的に展開。その結果農村部の所得も確実に増大。1933年日本は1929年の経済水準を回復し、世界に先駆けて景気回復を果たした。226事件当時、国民は農村部を含めて高橋財政に不満をもっていたとは思われず、選挙結果にも表れた
事件終結に至る4日間の反乱軍の位置づけの変化
26日午後三時、東京警備司令部が発した告示では反乱軍は正規軍と認められ、皇軍同士で相打ちしてはならないとめいじられた。
28日午前6時30分 反乱軍とされる
一般兵士の共通の特徴
「上官の命令、しかも直属の中隊長の命令に従って何が悪い」という意識
軍隊の行動を決定するのは、「正当性」の意識ではなく、こうした狭い意味の「合法性」の意識であることが226事件で見てとれる
この意味で「大衆軍隊の反乱」であった。
寺前は、近畿財務局の公文書改ざん事件も、「大衆公務員の反乱」の変形であったが、一人の自殺者がそれを覆したと思っている。
ホロコーストに加わったドイツの一般兵士 多くが予備隊員、日本の初年兵より高齢。社会階層から見て大量虐殺など考えられない人々
彼らの80~90%は命令に従ったが、10~20%は殺害命令を拒否した。隊長もそれを認めた(『普通の人びと ホロコーストと第101警察予備隊』C.R.ブラウニング)
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