*

マルティニーク生まれのクレオール。 ついでに字句「伝統」が使われる始めたのは昭和初期からということ

公開日: : 観光学評論等, 観光資源

北澤憲昭の『<列島>の絵画』を読み、日本画がクレオールのようだというたとえ話は、私の意見に近く、理解できた。ついでいえば、世界中がクレオール化している。
このクレオールが、マルティニークから発生したことは、うかつにもこの本で知った。今年の2月にマルティニークで、飛行機の時間を見損なったから、よく覚えているが、クレオールの発祥の地であれば、もっとしっかり観察してくるべきであった。その時はカリブ海クルーズ客の動向にばかり目が行っていた。

北澤論は・・・「絵」の不在というのは、絵画のクレオール化の根底にオリジナルのものを想定できないということを意味する。言い換えれば底止することなきクレオール化の連鎖ということだが、こうした認識においてこそ、最もラディカルな「日本画」の在り方が可能となる・・・

p.28 伝統という言葉 これが何か誇りのようなものを含意する熟語として  旧日本陸軍の『歩兵操典(1909年(明治42年)11月8日軍令陸第7号)』に見える「赫々タル伝統ヲ有スル国軍」という文言に示されるように   使われるようになるのは明治以降のことであり、この語が、そのような意味で一般的に流布するようになるのは昭和初期以降のことなのである。

https://blogs.yahoo.co.jp/skylinegtrr33jp/36518918.html

このような意味あいで「伝統」の概念が重視されるようになったのは、一つには、。自民族中心主義に由来するところが大きいのだが、それとともに、近代国家としての体裁を整えるという要請にもかかわっていた。

絵においても、「廃藩置県」と同様の動きが起こった。京都/江戸という双分組織的な文化構造や身分制に基づいて江戸時代までに形成された様々な画派が「日本画」の名のもとに統合されてゆくのである

p.39 かつての日本画は、西洋画とあい携えて、植民地の美術界に宗主国の絵画として君臨していた。和製西洋画は被害アジアにおける先駆的近代化の証として、日本画は日本文化の代表として、それぞれ政治的意義を担っていた。その玉座として設けられたのが朝鮮美術展覧会と台湾美術展覧会である。

富士山は、  その末広がり形状が図像的コンベンションとして長い間流通してきたために、個性化が求められる平時の近代的心情に対して、どれほど魅力を持つか疑わしい。
<海山十題>的自然はすでに魅力を失っている。
実は自然は魅力を失っている。  保護されるべき対象と化している。介護老人保健施設で、静かに余生を送っている。
東北大地震は「非自然災害」

以上が本書のメモ

ついでに、
初詣」の誕生は明治中期である。1872年、東海道線が開通し、川崎大師へのアクセスが容易になる。川崎大師は江戸から見て恵方にあたり、行楽も兼ねて参詣に行く人が急増し、特に1月21日の縁日(初大師)は大盛況となった。とはいえ、恵方は5年に1回しか来ない。当たり前だが鉄道会社としては毎年来てくれたほうが儲かる。そこで、大晦日から寺社に籠って元日を迎える「年籠り」、年明けはじめての縁日に参詣する「初縁日」、居住地から見て恵方にある寺社を参詣する「恵方詣り」といった古来からの行事を組み合わせ、縁日も恵方も関係ない「初詣」をつくりあげ宣伝文句とした。「重箱のおせち」もかなり新しい伝統だ。おせちは「お節」と書き、祝いの席の料理として奈良時代から存在したが、正月のおせちを重箱に詰めるようになったのは幕末から明治にかけてで、戦後、デパートの販売戦略によって定着した。
讃岐うどん」という言葉自体は60年代の誕生で、「越前竹人形」は水上勉が1963年に発表した小説『越前竹人形』が初出

関連記事

『枕草子つづれ織り 清少納言奮闘す』土方洋一   紙が貴重な時代は、日記ではなく公文書

団塊の世代が義務教育時代に学修したことの一部が、その後の研究により覆されている。シジュウカラが言

記事を読む

no image

童謡「赤とんぼ」から躾を考える

村のしつけが対象とするのは正規メンバーだけで、共同体からはみ出た子供たちは、アウトサイダーとして

記事を読む

no image

ヒトラー肝いりで建造の世界最大のホテル・プローラ

観光政策というより、福祉政策なのかもしれませんが、現代なら民業圧迫という声が出るでしょう。

記事を読む

no image

観光とツーリズム~日本大百科全書(ニッポニカ)の解説に関する若干の疑問~

日本大百科全書には観光に関する記述があるが(https://kotobank.jp/word/%E8

記事を読む

no image

吉田松陰と北一輝

歴史は後から作られるの例 『対談 昭和史発掘』 松本清張 2009年 文春新書 p.60 北

記事を読む

no image

欧米メディアの負の本質 ナイラ証言(Nayirah testimony)

ナイラ証言とは、「ナイラ」なる女性(当時15歳)が1990年10月10日に非政府組織トム・ラントス

記事を読む

no image

「元号と伝統」横田耕一 学士會会報No.937pp15-19

元号の法制化に求めた人々に共通する声は元号は「日本文化の伝統である」というものだった。 一世

記事を読む

no image

『明治維新を考える』三谷博 有志舎 2006年

序章 明治維新の謎 維新という言葉 幕末から頻用されてきた「一新」という言葉を中国の古典に置き換え

記事を読む

no image

小川剛生著『兼好法師』中公新書  安藤雄一郎著『幕末維新消された歴史』日本経済新聞社

『兼好法師』 現在広く知られている兼好法師の出自や経歴は、没後に捏造されたもの。 一世紀を経

記事を読む

no image

加太宏邦の「観光概念の再構成」法政大学 法政志林54巻4号2008年3月 を読んで

加太宏邦の「観光概念の再構成」法政大学 法政志林54巻4号2008年3月の存在をうかつにも最近まで知

記事を読む

PAGE TOP ↑