『眼の神殿 「美術」受容史ノート』北澤憲昭著 ブリュッケ2010年 読書メモ
公開日:
:
観光学評論等
標記図書の存在を知りさっそく図書館から借りてきて拾い読みした。
観光資源の文化資源、自然資源という分類法に異を唱えている立場から、本書は参考になった。
公開の思想
p.133 博物局博物園博物館書籍館建設之案」には「放観」の語と共に「人口ノ進歩」という言葉が記されているのだ。この「進歩」を促し、体現するのは明治の国家であり、国家はそのために「放観」を実践したのだが、古社寺調査では、「放観」を目指して、個人の所有物にまで手を広げることになったのであった。
自然と人工
p.134 江戸の本草学でいう人類と物類という発想
人工物、自然物という対立
p.136 美術というもの自体がそもそも人工物、自然物という対立の中から、いわば人工物の代表格として登場してきたのではなかったか。
自然というものを客体としてつきはなすのではなく、具体的な体験性においてとらえることを得意とした日本人 おそらく臆するところがあった
では、近代の日本人はかかる前代の自然観をよく近代西洋の自然観に改めえたかというと、むろんそんなことはない。
文化財保護法の「文化財」概念には自然物(天然記念物)までもが含まれておいるのであり、
p.361
足立元の解説
日本(語)の「美術」が近代に新しく形成された制度の一つ 日本美術を学ぶものの共通認識 このような共通認識は1989年出版の本書を契機としてこの20年間に形成された。
「美術」概念が明治の初めに西洋から輸入されたもの 1872年の官製訳語であることは周知のこと
「日本美術史」も「美術」という言葉により構築された近代の諸「制度」によってはじめて可能になったことを明らかにした。
杉本つとむ著『江戸の博物学者たち』
本草学は、動・植物学、鉱物学等にわたる壮大な学問であり、ほぼ博物学に相当する。中国渡来のこの学問は、江戸期に日本独自の本草学を創成し、小野蘭山、畔田翠山により、その研究は頂点へと達した。明治期、本草学は欧米流学問の奔流に呑み込まれていくが、その成果は生物学、民俗学、方言学等に継承された。学問史に異彩を放つ日本本草学の消長。
狩猟民ではない農耕と魚撈(ぎょろう)の日本人はおのずと自然を友として、自然を人類のうちなる物類と認識したのである。五穀豊穣というように、物類の中核が草木であれば、自然を対象とする研究に草(そう)を本(もと)とする本草学の名が与えられ、卓越した詩人と求道者によって本草学が創造されていったのも当然のことといえよう。……人民の厚生を念じた日本の本草学者、それをとりまく社会・学芸・文化を時代とのかかわりで記述してみた。
〇
https://blog.goo.ne.jp/yousan02/e/44f417134f8ad5f4e63993d6941f5129
源内の、『物類品隲』は、本草学の中でも異彩をはなち、日本博物学史上の傑作と評価されているようだが、この”物類”という名称には、彼の自然観が反映しており、源内以前に貝原益軒は本草学で、”人類・博物”の用語を使っているが、この”物類”という用語はは、当時本草学が博物学に更に深く傾斜していったことの表れでもあり、”人類”と一応対応する概念だという
関連記事
-
-
『仕事の中の曖昧な不安』玄田有史著 2001年発行
書評ではなく、経歴に関心がいってしまった。学習院大学教授から東京大学社研准教授に就任とあることに目
-
-
日本観光学会に参加して
6月26日日大商学部で日本観光学会が開催され、「字句「観光」と字句「tourist」の遭遇」と題して
-
-
河口慧海著『チベット旅行記』の記述 「ダージリン賛美が紹介されている」
旅行先としてのチベットは、やはり学校で習った河口慧海の話が頭にあって行ってみたいとおもったのであるか
-
-
学士会報第20回関西茶話会「新興感染症の脅威と現代世界」光山正雄
感染症は今も世界の人々の死因第一位 歴史上の重大感染症 ①ペスト 14世紀 欧州で大流行 当時の
-
-
「DMO」「着地型観光」という虚構
DMOという新種の言葉が使われるようになってきていますが、字句着地型観光の発生と時期を同じくします。
-
-
観光学が収斂してゆくと思われる脳科学の動向(メモ)
◎ 観光学が対象としなければならない「感情」、「意識」とは何か ①評価をする「意識」とは何か
-
-
マルティニーク生まれのクレオール。 ついでに字句「伝統」が使われる始めたのは昭和初期からということ
北澤憲昭の『<列島>の絵画』を読み、日本画がクレオールのようだというたとえ話は、私の意見に近く、理解
-
-
字句「美術」「芸術」「日本画」の誕生 観光資源の同じく新しい概念である。
日本語の「美術」は「芸術即ち、『後漢書』5巻孝安帝紀の永初4年(110年)2月の五経博士の劉珍及によ
-
-
京都大学経営管理大学院講義録「芸術・観光」編を読んで
湯山重徳京大特任教授が編者の講義録、京都大学なので興味が引かれた。エンタテインメントビジネスマネジメ