*

『「鎖国」という外交』ロナルド・トビ 2008年 小学館 メモ 歴史は後から作られる

公開日: : 最終更新日:2018/01/17 観光資源

ロナルド・トビさんは、江戸時代から日本には「手放し日本文化礼賛論」があったことを説明し、富岳遠望奇譚となずけている。「霊峰」富士山が朝鮮半島からも見えたという奇譚である。現在のインバウンドブームもややそれに近い印象がある。征韓論という形で発露された日本人の朝鮮認識は江戸時代から萌芽がみられ、途切れることなくその縁を伸ばし続けており、現在の嫌韓論にまで続くのであろう。

p.277 国境を越えて「三国一」になったのは、近世以降の現象。頼山陽も清正の富岳遠望奇譚を歴史的事実として受け止め『日本外史』の中に取り入れている。

p.298 19世紀の日本では、対外危機感が日に日に増してゆく中、日本外国と戦った「異国退治譚」が流行。「三韓征伐」「朝鮮征伐」「蒙古退治」が飛ぶように売れていった。

p.309 朝鮮通信使は霊山金剛山には及ばないと必ず言った。

愛国心の高揚を図った政府の思惑で、国定教科書でも清正が朝鮮で果たした「遊飛」が語られ、学童に教えられるようになり、清正は国民的英雄に担ぎ出されたのである。

日清戦争直前に出された延一による『加藤清正朝鮮ヨリ富士ヲ望ム』という新聞錦絵も、江戸時代に築き上げられてきた富岳遠望奇譚や、富士山対異国人という言説のさらなる力を雄弁に物語っているのではないかと思われる。
雨森芳洲 盧泰愚大統領が紹介して知られるようになった。善隣外交の意思を持っていた例外的人物
p.332 江戸時代の日朝関係が友好的であることを強調すればするほど、何故、急に明治時代に急に「征韓論」が生じてくるのかが説明できなくなる。

近・現代の征韓論の土壌に、近世以前からの神功皇后の三韓征伐神話や近世初頭の秀吉の朝鮮侵略があり   明治期になって征韓論という形で発露する日本人の朝鮮認識は江戸時代から萌芽見られ、江戸時代にも途切れることなくその根を伸ばし続けていたのではないか

関連記事

no image

『明治維新を考える』三谷博 有志舎 2006年

序章 明治維新の謎 維新という言葉 幕末から頻用されてきた「一新」という言葉を中国の古典に置き換え

記事を読む

no image

観光資源の評価に係る例 米国の有名美術館に偏り、収蔵作品は「白人男性」に集中

https://www.technologyreview.jp/s/117648/more-th

記事を読む

no image

観光資源と伝統 『大阪的』井上章一著

今年も期末試験問題の一つに伝統は新しいという事例を提示せよという問題を出す予定。井上章一氏の大阪

記事を読む

no image

偽物が本物を上回る例 コスモスの「ロッチビックリマンシール

https://www.youtube.com/watch?v=vwBlC73ZmuE

記事を読む

no image

畑中三応子著『ファッションフードあります』日本食は変化が激しい。フードツーリズムに法則があるのか?

ティラミス、もつ鍋、B級グルメ……激しくはやりすたりを繰り返す食べ物から日本社会の一断面を切り

記事を読む

no image

『ピカソは本当に偉いのか?』西岡文彦 新潮新書 2012年 を読んで

錯覚研究会での発表に備えて読んでみた。演題が「ピカソの贋作は本物を超えるか」としたため、慌てて読んで

記事を読む

no image

蓮池透・太田昌国『拉致対論』めも

p.53 太田 拉致被害者家族会  まれにみる国民的基盤を持った圧力団体 政府、自民党、官僚、メディ

記事を読む

no image

筒井清忠『戦前のポピュリズム』中公新書

p.108 田中内閣の倒壊とは、天皇・宮中・貴族院と新聞世論が合体した力が政党内閣を倒した。しかし、

記事を読む

no image

有名人の観光資源化

昔懐かしい、T新聞I記者から電話があった。有名人を顕彰する博物館が崩壊しそうであり、何か観光資源とし

記事を読む

no image

大衆軍隊出現の意味 三谷太一郎講演メモ 学士会報2018-Ⅳ

226事件は、天皇の統帥権の名目化  軍隊の大衆化 軍隊内の実権は将官、佐官、尉官へと下降した

記事を読む

PAGE TOP ↑