白タクに関する記事の増加と、中国人の素朴な疑問(なぜ白タクがいけないのか?)
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最終更新日:2017/10/25
中国人旅行者増大と白タク問題, 配車アプリ
白タクに関する記事が増加している。日本のマスコミは付和雷同型の記事を書くから、誰かが情報操作に成功すれば、途端に多くなる。
白タクよりも白バス禁止ならばまだわかるが、白タクは中国語のできる運転手がいない以上、その存在を一方的に否定してみても仕方がないであろう。
日本人が行う場合は、暴力団関係者の資金源になる可能性があるが、ネット決済までされていれば中国語の話せない暴力団も手が出せないであろう。
在日中国人を対象としたフリーペーパーの「看中国」の編集部を訪問した際にも、「なぜ白タクがいけないのか」と疑問を持たれた。
日本の警察は刑事訴訟法を理解しているから、きちんとした証拠がないかぎり対応しないとこたえ、タクシー業界のために取り締まるということはないと説明しておいた。
順法精神は重要であるが、脱税等日本人の順法精神もご都合主義的なところがあるから、やはり情報操作が始まっているのであろう。
中国人の白タク禁止に関する疑問は、その通りである。公共交通機関保護の発想は、バスや鉄道から始まっている。運送の独占と競争の法理として発展した。
乗合バスを維持するためには、ある程度の独占を認めざるを得ないという経験則であり、経済学者もその説明を市場原理を使っておこなってきた。
貸切運送のタクシーはその範疇には入っていないのである。むしろバスの競争機関として見られていたくらいであるから、乗合タクシーもバスに影響しないように行政的な配慮がされていた。
現在、自家用車の普及により乗合バスは公共交通機関としての役割を多くの地域で喪失してしまった。
従って、バスを中心とした道路運送法の中身が変質したのである。
(スマホの登場で貸切と乗合の相対化が加速されたことはここでは触れないでおく。)
タクシーは流し行為を行う場合に準公共性が認められるということで、英米ではある程度独占性が認められてきたが、
流しをしない貸切運送は、自家用車並みの扱いであり、経済規制はなされない。
せいぜい治安維持のための規制である。運転手付きレンタカーが多くの国で経済規制を受けていないのと同じである。
その点日本は、バスを保護するという道路運送法の思想がいつのまにか変質して、タクシーを頭から保護するものだという発想になってしまった。
伝統的な行政を行ったことのある役人はそのことがわかっているから、規制緩和を求める関係省庁の問題も考慮して規制強化に慎重になるのであるが、理解不足の役人もまだ存在する。
ましてや政治家はなおさらである。業界や組合は立場での主張であるから、生活のためとそれはそれで理解できる。
タクシー運転手の待遇の悪さをメディアが大きく取り上げ、規制強化が議員立法(政府提案ではない)により行われたが、今ではリクルートの障害となってしまっている。
東京と地方の違いを無視して議論をしてしまった結果でもある。
メディアと大学の研究者も質の劣化が激しい。
交通経済学もミクロ経済学者が興味を失って、環境等の門外漢の学者がタクシー問題を論じるようになってきたから、
なぜ白タクがいけないかという問いにきちんと答えられなくなっている。
中国人は素朴に疑問を抱くのも当然である。
交通を専門とする発信力あるマスコミ人もいなくなってしまった。
Uber等話題になることを追いかけるだけである。残念なことである。
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