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運送機能(施設提供、労働者派遣及び集荷集客)の分化に逆行する道路運送法解釈

公開日: : 最終更新日:2023/05/30 ライドシェア

金沢学院大大学院で非常勤講師の教鞭をとったのが気象庁次長時代の2001年。五千円以上の報酬を受け取らなければ、可能であった。
講義内容は運送機能の分化であった。海運も航空も物流も運送機能の分化により進化してきた。
座席一席当たり、コンテナ一個当たりの原価計算を行えるようになったのもこのことによる。
船員はマンニング会社からの派遣、船舶はリース、集荷はフォワーダーや共同集荷と、海運会社は全体のシステムをコントロールする機能に特化していった。
コスト管理が極めてやりやすくなり原価がはじき出され、投資の意思決定が早くなったのである。
おなじことは航空でも発生し、LCCが登場した。
日本の陸上でも、トラックの世界では同じ傾向が表れている。

運送機能の分化が進んでいない典型はタクシーである。進むどころか、道路運送法の法解釈により徹底的に未分化を維持させている。
従って、車一台当たりの原価計算ができないというか、できても効果を発揮させることができないでいる。
海外では、カーシェアの登場で、完全に先行しており、お隣中国も同様である。
海洋レジャーや航空レジャーにおいて、施設所有者からヨットや小型ジェット機等の施設を借り、船長やパイロットも派遣してもらい、一定期間旅行者にサービスを提供するビジネスは、既に始まっているであろう。富裕層も常時自分で使用するわけではないからである。陸上レジャーも、ロールスロイスをレンタカー会社から借り、評判の高い中国語も英語も堪能なカリスマ運転手を派遣会社から派遣してもらい、中国人富裕層に満足していただく商品があってもよさそうであるが、一体運用をすれば道路運送法の有償運送に該当するということで、料金からしておよそビジネスの成り立たない仕組みを押し付けていることになっている。別に日本に限らず世界中のタクシーはおなじ状況であろう。歩合制賃金も同じであるから、原因は同じなのかもしれない。

今回の、通訳案内士が行う自家用車による案内は、道路運送法の有償行為に該当し、信用失墜行為で該当するという行政解釈の事務連絡文書を読んだときに、まずこのコトを感じたのである。
レンタカー手配システムと運転手派遣システムは非一体でなければならないという方針のもと、グレーゾーン救済制度により明らかになった解釈は、およそICTの進化を受け入れない恐るべきスタンスである。ICTが進めば、レンタカーを借りたいという情報と、派遣運転手を求める情報は、AIが自動的にマッチングするようになるのは時間の問題であり、googleがその前に検索に入って来た者を捕まえて、このレンタカーをお借りになるのであれば、ここにふさわしいドライバー群がいますよと連絡してくるようになるであろう。それを非一体ではないといっていては笑いものになるだけである。むしろ、陸上交通政策を考えるのであれば、積極的に導入することを考えるべきではないかとさえ思われるのである。

私は一種の乗り放題運賃のJERONタクシーのとき、構想段階から相談を受け、旅行業法の仕組みを活用すれば、約款の手直しで済むとアドバイスした。自動車局の担当者は先進的意識の持ち主であったようで、直接道路運送法に抵触しないということで、むしろシンパシーを示すようであったと聞いている。
しかし、こと直接、道路運送法になると、今回の通訳案内士の白タク行為解釈のようになってしまうのは、業界、労働組合の蟻の一穴も許さないという気迫に押されてしまうのであろうか。Uberで大騒ぎになっているから仕方がないような気もする。私はUberの福岡での拙劣な実験が、全体に大きなマイナス効果をもたらしたと思っている。きちんとした法解釈を打ち出し、小倉昌男さんのように裁判に持ち込んでも行政に勝てるという気迫をもって臨むべきなのに、システム自体が穴があり、しかも気迫にもかけていたから、日本全体にマイナス効果だけを残してしまったと思っている。後に続く人たちには、日本のUBER経営者は大変な迷惑をかけたのである。知識の乏しい私でも、もう少し知恵を働かせてことに臨めたと思っている。

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