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『高度人流社会を迎える配車サービスの動向』 WEB観光政策フォーラム(https://www.kankou-seisaku.jp/)視点(2月)原稿

公開日: : 最終更新日:2016/11/25 用語「人流」「観光」「ツーリズム」「ツーリスト」

スマホに目的地を入力するとたちどころに経路と時間が表示される。高精度GPSが装備され、Wi-Fiにより、地下・高層ビル等でも使えるから、世界中の大都市で「どこからでも車が呼び出せる環境」になってきた。
その武器を活用する配車サービスが出現し、世界中でUber等が話題になるのは必然である。当然在来型サービスとの摩擦が発生する。自家用車を活用した配車サービスは「白タク」行為だとして大騒動になる。しかし、日本と異なり、バスやタクシー政策は主要先進国では自治体行政により行われているから、十分にタクシーが配車されていない地区では、利用者がその配車サービスを支持する。従って市長や議会は政治的に様子を見てしまうから、カリフォルニアのように既存のタクシー会社が倒産するところもあれば、ドイツのように厳しく白タク行為が取り締まられるところもあるのである。
海外と日本の大都市タクシーの大きな違いは「流し営業」と「車庫待ち営業」の在り方である。ロンドンでは、「車庫待ち」は公共交通機関とは認められず、自家用車の扱いである。この車庫待ち営業は事前に顧客情報が入手でき、サービス内容も事前に確定できることから、スマホ配車の普及が進展しやすい。Addison Leeが普及する理由もそこにある。
日本、特に東京では高度な流し営業サービスが普及しており、スマホ配車の必要性が低い。しかし、スマホ配車の普及した海外からの利用者にとって、自国でダウンロードした使い慣れたアプリによる配車サービスは、キャッシュレス化や言葉の障害を乗り越えた利点があり、東京オリンピック時にはそのニーズも高まるであろう。オリンピック終了後は、中国人観光客のビザなし渡航が実現するに違いない。世界最大の人流大国・中国では、スマホ配車が当たり前の時代であるから、東京でもスマホ配車ができない会社は生き残れないかもしれない。
スマホ配車の利点に、事前に運賃を確定できる点がある。ロンドンではむしろ事前に決定しなければならない。しかし流し営業を主体とした日本では、時間距離併用のタクシーメーターを前提としており、公共交通機関としては例外的に確定運賃制度となっていない。そのため、旅行業法を活用した確定額運賃サービスの提供が、「たくあしくん」、「らくらくタクシー」等によって提供されている。
UberやAirbnbの登場でライドシェア、ルームシェア等が話題になっている。社会経済が進展し、施設等が飽和状態になれば、情報通信手段を活用して、シェアリング経済が発展するのは必然である。海運や航空で、NVOCCやDHL等といった混載サービスが急速に進展したのもそのことによる。日本で宅配便が発展したのも同様である。その結果、道路運送自体が改正された。それまでは、地域トラックは混載が禁止されていた。それで物流合理化などできるはずもなかった。
構造改革特区構想において、自家用自動車のライドシェアが話題になっており、既存業界も危機感を持っている。しかし、営業用運送サービスが成り立たない市場である地方では、ライドシェア以前の状態である。むしろ「無償サービスのビジネスモデル」を考えたほうが現実的である。軽自動車税や病院、コンビニの広告費等をもとに、無償での事業を検討したほうが現実的である。無償であれば、道路運送法の問題は発生しない。
私が『モバイル交通革命』で提唱したのは、使い放題定額制ビジネスモデルの普及である。インターネットや携帯料金、通勤鉄道料金は、月極定額制によって普及した。CATVや町のコーヒースタンドにまで、月極定額制が普及してきている。タクシーも月極使い放題制にすることにより、新たなビジネス展開ができるのではないかと考えた。普及するどころか、顧客情報を把握することにより総合生活移動産業に脱皮できるのではないかと考えたのである。
福岡市で月極乗り放題のジェロンタクシーの実証実験が開始される。限定的ではあるが、私がこれまで主張してきた定額乗り放題タクシーの最初の試みである。これを実施するにあたり障害になっていた、パック旅行に係る特別補償制度に関する旅行業約款の改正ができた。創意工夫を身上とする旅行業において、一般標準約款がむしろその阻害になっていたことは皮肉なことであった。
乗り放題であるから、自宅と病院、コンビニ等の間を何度も往復するのであるが、在宅時の事故等の補償をどう取り扱うかが焦点になった。保険料の問題ともいえるが、一応、在宅時の事故を除外することが可能な約款となっている。この新しい約款を活用すれば、新しい定額乗り放題サービス商品をいくらでも生み出すことが可能となる。まさに旅行業者、あるいは交通事業者の創意工夫が期待されるのである。総合生活移動産業の幕開けである。サードパティ・ヒューマン・ロジスティックスの幕開けである。

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