本山美彦著『人工知能と21世紀の資本主義』 + 人流アプリCONCURの登場
第6章(pp149-151)にナチスとイスラエルのことが記述されていた。ヤコブ・ラブキンの講演を基に作られている。その中に、イスラエル初代大統領ワイツマンへの言及がある。毒ガス発明のワイツマンは英国に毒ガス使用を認めるかわりにバルフォア宣言をださせて、パレスチナに建国を認めさせたとある。そこまでは理解できた。ワイツマンはヒトラー政権の誕生に祝福を送ったとあるのも、当時なら理解できた。ナチスとの取引の結果、30年代のパレスチナにはドイツ製品があふれていたそうだ。ドイツユダヤ人の財産はドイツ製品と引き換えなら持ち出し可能、キブツへの入植当初から監視塔と防壁が築かれ、アラブ人労働者が排除。ナチス高官はキブツに招待され、ナチス政権による移民前農業研まで実施されていたそうだ。そういう時期もあったのである。
http://www.l.u-tokyo.ac.jp/tokyo-ias/nihu/meeting/2012/20130117/index.htm
さて本題である。
注文した際に作り出されるデータは「フロントエンド」個人が入力したあらゆるデータを記録し分析類型化したものが「バックエンド」である(尾行など不要の人流情報はバックエンドとして価値がある)。米国国家安全保障局(NSA)はこの巨大なバックエンドを入手できる。幾たびかの改正により外国情報監視法(FISA)では令状なしの盗聴に協力した通信会社に対する遡及的免責が認められているからである。しかも事前に埋め込まれたばバックドアから情報を入手できるのである。
まだ霞が関に勤務していたころ、米国に関西空港の入札に米国企業を入れろと迫られたことがある。航空局の経理担当課長だったので覚えているが、嘘か真か、航空局の電話はアメリカに盗聴されているといううわさが流れていた。そんなものだろうなとは思っていたが、ネット社会ではもっと効率的になっているのであろう。戦後7年間の米軍占領下では郵便物の監視が行われていたことは江藤淳「閉ざされた言論空間」に詳しい。鳩山元総理のことを単純に悪く言うネット右翼族もこの本を読むといいと思う。
これに対して、スノードンが起こしたのがいわゆる「スノードンショック」である。2013年6月、エドワード・スノーデンが行った内部告発により、アメリカが装う「民主国家」の偽善の仮面が見事に剥ぎ取られ、アメリカという国家が、個人のすべての情報を収集する人権無視の抑圧国家であることが世界中に曝露されたのである。安易に私的アドレスのメールを使用したクリントン候補者への評価もこのことを勘案すれば、大統領候補者としては女性蔑視発言問題よりも深刻なのであろう。だからと言ってすべてを肯定・否定するつもりはないが。ロシアも中国もやっていることである。日本のマスコミは中国、ロシアには厳しいが、もとをただせばアメリカに対する自衛手段でもあろう。ビッグデータダムを中国は作るのも当然であろう。Googleもuberも中国から撤退である。世界の人口の2割は中国国籍なのだから、日本と違い、Googleがなくても構わないのである。
スノードンは、IT関係者が持て囃す「ビッグデータ」の暗黒部を暴き出したとも言える。NSAが収集しているデータの種類は、電話やメール、SNSなど現代社会のあらゆる通信手段に及ぶ。監視対象は、大義名分とする「テロ活動関係者と疑われるターゲット」だけではない。これらの人々と接触した一般市民はもちろん、同盟国の首脳クラスも対象だというのだから驚く。監視対象とされたヨーロッパ各国の首脳たちがアメリカに強く抗議したのも当然である。
私はモバイル交通革命で楽観的に人流社会の夢を描いた。インフルトレンドに代表されるいわゆる「ビッグデータの罠」はいつでも発生する。本書で引用されているコダック社の開発は早すぎる悲劇を描いている。
スマホが普及すると、スマホ情報で人流がある程度左右できる。そのことに気が付いたのも結局日本人ではない。蓮舫さんを評価はしないが、最初でなければ意味がないのである。流石、日本タクシー、ぐるなびは声をかけてもらっているようである。このページを見るといいと思う。
https://www.concur.co.jp/
動画もあるが削除されてしまった。https://youtu.be/rzf08Xv4j4o
これも最後は決済システムは支配するかもしれない。
人流アプリで考えれば、このCONCURが考えているようにタクシーのレベルではなく、航空、鉄道はもとより、レストラン、ホテル、駐車場、ドライバー派遣、レンタカー等も親指一つで手配ができ、決済も済ませられるようになるのである。いま日本はインバウンドに浮かれているが、アプリの普及は本質的にアウトバウンドの力である。世界各地のHOP ON&OFFのバスで日本語イヤホーンが使えるのは、日本人海外旅行者の数の力であった。スマホアプリはこのHOP ON&OFFのバスのイヤホーンに相当するものであるから、インバウンドの増大により、海外アプリの支配下に日本の観光産業が繰り込まれるのである。
しかし、いずれCONCURも、Google的なものが一蹴してしまうであろう。私が自分で海外旅行をみずから手配していると、最後はGoogleを活用しているのである。ここに、決済機能が加われば、他には目が向かないであろう。
ビットコインは日本では、マウントゴックス事件で有名になった。しかし、今使用できるUber、Airbnbのみならず、いずれ英国ヴァージンアトランティック航空やエクスペディアまで仮想通貨が使えるようになると言われている。海外旅行に出かけるときは、為替レートを気にせずに支払うことのできる仮想通貨のほうが、日銀総裁の発言に左右されどうなるかわからない為替レートより安心できるかもしれないからである。本書は、珍しく、このアナーキーなシステムを評価するが、観光は本質的にアナーキーなのである。
なお、2009年創業のUberは2015年6月5日時点の時価評価額412兆ドルと、JR東2015年時価総額4.5兆円400億ドル弱を上回ることをあげている。その通りであり、どこか不思議である。小池知事とUberに共通する不思議である。
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