『中国人のこころ』小野秀樹
本書を読んで、率直に感じたことは、自動翻訳やAIができる前に、日本型AI、中国型自動翻訳が登場するのだろうということである。言葉がコミュニケーションの手段であるのであるから、コミュニケーションの取り方が異なれば、伝わり方も変わるわけで、ニーハオとコンニチハは誰が使っているかで違ってくる。AIにはそれがすべてわかるはずがないわけで、中国人用のAIと、日本人用のAIでは違うということである。それは、AIが人間にとって代われないのではなく、人間がする誤解をAIも同じようにするものまでは実現するが、それ以上のものはないということなのである。
日本人「あなたたちは、いま何時だかわかっているのか!?」 中国人「……夜の2時半です」
日本人バスガイドさん「皆さま、お疲れ様でした」 中国人観光客「いえ、私は別に疲れていません……」
上記のような「噛み合わない」やり取りは、今日もまたどこかの日本人と中国人との間で交わされているに違いない。
それではなぜ、こうした誤解やすれ違いが生じてしまうことになるのだろうか?
その答えのカギは、日本語と中国語のそれぞれの「ことば」がもつ特質と、それぞれの発想法の違いにあるのだという。
本書は、30年以上にわたり中国語を研究してきた著者が「言語」を切り口にして、
日本との比較を行いながら中国人に特有の思考様式や価値観について分析・紹介した、思わず笑える知識が満載のユーモア溢れる言語文化論である。
グローバル化が進み、中国人との日々の接点が増えている現代日本人にとって、必読の一冊だ。
【中国人の特徴を示すエピソード】 ( 本書内容より一部を抜粋 )
●定番の挨拶と思われている「你好(二―ハオ)」は、実はごく限られた場面や相手にしか使わない
●タテ社会ゆえ、人の呼び名にとりわけ細かい神経を使う
●「身内」か否かによって、その相手に対する態度がまったく違う!
●日本人に「いつもお世話になっております」と言われると、「世話をした覚えは無いのに……?」と反応に困ってしまうことも
●数字の験担ぎにとにかくこだわる
→最強のラッキーナンバー「99999」が付いた自動車のプレートが、なんと単体で5000万円で落札!!
●手土産はとにかく「大きさ」「豪華さ」が重要という文化
●ご馳走をするときは渋くて上品な和食料亭よりも、明るくて賑やかなファミレスがウケることも
●初対面の相手には「収入」を訊くのが定番だが、それはなぜか?
関連記事
-
-
動画で考える人流観光学 観光資源、質量の正体は一体何なのか -質量の起源-
https://youtu.be/TTQJGcu-x3A https://
-
-
『鉄道が変えた社寺参詣』初詣は鉄道とともに生まれ育った 平山昇著 交通新聞社
初詣が新しいことは大学の講義でも取り上げておいた。アマゾンの書評が参考になるので載せておく。なお、
-
-
『尖閣諸島の核心』矢吹晋 鳩山由紀夫、野中務氏、田中角栄も尖閣問題棚上げ論を発言
屋島が源平の合戦の舞台にならなければ観光客は誰も関心を持たない。尖閣諸島も血を流してまで得るもの
-
-
書評『情動はこうしてつくられる』リサ・フェルドマン・バレット 紀伊国屋書店
参考になるアマゾンの書評の紹介 ➀ 本書のサブタイトルにある「構成主義(const
-
-
『観光の事典』朝倉書店
「観光の事典」に「観光政策と行政組織」等8項目の解説文を出筆させてもらっている。原稿を提出してか
-
-
Quora 古代日本語の発音
youtubeで、「百人一首を当時の発音で朗読」という動画を見ました。奈良・飛鳥時代の上代日本語
-
-
ジャパンナウ観光情報協会機関紙138号原稿『コロナ禍に一人負けの人流観光ビジネス』
コロナ禍でも、世界経済はそれほど落ち込んでいないようだ。PAYPALによると、世界のオンライン
-
-
『一人暮らしの戦後史』 岩波新書 を読んで
港図書館で『一人暮らしの戦後史』を借りて読んでみた。最近の本かと思いきや1975年発行であった。
-
-
世界人流観光施策風土記 チベット旅行の検討から見えてきたこと
物流行政をしていたころ、港湾運送事業者が、貿易手続きが複雑なことが自分たちの仕事が存在する理由だとし
-
-
『素顔の孫文―国父になった大ぼら吹き』 横山宏章著 を読んで、歴史認識を観光資源する材料を考える
岩波書店にしては珍しいタイトル。著者は「後記」で、「正直な話、中国や日本で、革命の偉人として、孫文が
