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ピカソの贋作は本物を上回るか~人流概念の提唱~第10回錯覚ワークショップ「錯覚科学への心理学的アプローチと現象数理学的アプローチ」における講演要旨

公開日: : 最終更新日:2023/05/20 観光情報 コミュニケーション

杉原厚吉先生から、第10回錯覚ワークショップ「錯覚科学への心理学的アプローチと現象数理学的アプローチ」(2016年3月7日(月)、8日(火))の講演依頼をいただいた。
気象庁時代に「夢工学」を一緒に勉強した元東大工学部教授で、現在明治大学の特任教授をされている方である。

講演要旨案

観光とは「日常生活圏を離脱して非日常体験をすること」と整理して表現される。長らく楽しくない旅が一般的であったが、次第に楽しみの旅が発展し、tourist概念が誕生した。文学ではtravelerを能動的、touristを受動的なものと区分する。経済学では最終消費財を観光とし、出張等の中間財を含めない。私の専門の政策論では、日常(通勤等)と非日常(レジャー等)が相対化し、両者を区分する必要性が少なくなっていると考えている。従って外形的にとらえられる人の移動に着目したほうが客観的な分析ができると考え「人流(Human Logistics)」を提唱している。
人流資源とは人を移動させてまで見に来させる力のあるものである。「好き」でも「嫌い」でもかまわない。「興味」があれば力を持つ。法律、宗教戒律等により禁止するくらいであるから、人は風俗、暴力、賭博、薬物に興味を持ち、人流資源となる。観光がアナキーである所以でもある。
風景も人間の認識であるから、文化を反映したのである。和歌等にみられる定数名所のように「意味の風景」であったものが、交通手段の発達により「視覚の風景」へと変化した。そこには、地理学の発達が影響している。
芸術や歴史等は脳の中のことである。偽物のピカソの絵が、本物より話題性があれば、有力な人流資源となる。同じパソコンでもビルゲイツが使用したと信じれば力を持つ。錯覚でも構わないのである。スラム観光等は、「興味」度が高いもののうち、「嫌い」度が高いものである。しかしながら「嫌い」度が強くて「興味」度を遥かに超えてしまうと価値が消滅してしまう。
すべて脳の中の反応「感性」のなせる業であるとして、ウェアラブルデバイスを用いて、資源に対する人の感性の違いを把握する実証実験を行った。https://youtu.be/Sq4M3nvX6Io

富士山と桂離宮の資源としての比較評価を主観的なアンケートで収集しても意味がないからである。 結果としてあらわれる複雑な人の心の動きはウェアラブルデバイスを活用すればヒトの移動と脳の反応の関係に関してデータ取得の可能性が開かれることになった。人流資源に対する人の脳の反応(脳波等)が、その人の属性や周りの環境等に対応してどのように出現していのかを深く分析することにより、観光行動の科学的分析が可能となると思っている。さらに ヒトの移動、宿泊等を含んだ人流概念を発生させる契機もそこにあり、いずれは人流・観光学は脳科学へ収斂すると思っている。

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