国立国会図書館国土交通課福山潤三著「観光立国実現への取り組み ―観光基本法の改正と政策動向を中心に―」調査と情報554号 2006.11.30.
公開日:
:
最終更新日:2023/05/30
観光学評論等
加太氏の著作を読むついでに、観光立国基本法の制定経緯についての国会の資料を久しぶりに読んだ。
そこで、私の論文が紹介されていることを発見し、久しぶりに昔のことを思い出したので、既述しておく。
観光基本法を改正したいという二階俊博代議士の意向をうけ、基本法として規範性の欠如に問題があることと、改正理由に中央集権規定の削除がタイムリーであることを申し上げたことを思い出した。中央集権規定は佐伯宗義代議士が大反対していたことを申し上げると、二階代議士は当時の佐伯代議士のことを記憶されていたので話が早かった。当時私は日本観光協会の理事長とともに、日本観光戦略研究所という二階代議士のシンクタンクの理事をしていた関係で接触できる機会を多く得ていたからである。実行力という意味で、小泉総理を動かし観光立国宣言を世に出し、旅フェアに総理を出席させ、基本法を改正させ、観光庁を設立した政治家としての力量は比類のないものであろう。
観光基本法は議員立法であったから、その改正法も議員立法になるのが通例であり、内閣法制局審査もない。従って国会事務局職員の手で原案が作成されるのであろうから、その間の経緯も事務的には一番知りえる立場であったであろう。
福山論文では、「一般に基本法とは、その対象とする政策分野に関係する他の法令に参照されながら、一つの法体系を構築し、全体として規範性を発揮するものである7。観光分野においても、関係する法令は数多く存在する。しかし、こうした法令の中に観光基本法を実質的に参照しているものはなく、体系的な法規範は構築されていない。また、基本計画の作成が法定されていないことも、批判されている。観光に関する計画は、いくつかの法令が個別に法定しているのが現状であり8、その関係性を明確にするためにも、基本法を根拠とする基本計画の法定が求められている9。」として私の教科書を紹介している。
「7 寺前秀一『観光政策・制度入門』ぎょうせい,2006,pp.8-12.例えば、「災害対策基本法」(昭和 36 年 11 月 15 日法律第 223 号)と「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律」(昭和 37 年 9 月 6 日法律第 150 号)の関係など。」
「9 寺前 前掲注 7,pp.33-34. 」
「政府内で、観光政策を所掌しているのは国土交通省総合政策局であるが、実際には様々な省庁が観光を目的に掲げて、施策を実施している。そのため、各施策間の調整が機能していない例も指摘されており10、「観光庁」のような組織に一元化すべきであるとの主張も強い11。また、地方公共団体も施策の実施主体として規定されているが、「国の施策に準じて施策を講じる」受動的な立場であると批判されている12。」
「12 寺前 前掲注 7,p.27.」
すでに10年以上も昔のことになってしまったのである。
関連記事
-
-
「若者の海外旅行離れ」という 業界人、研究者の思い込み
『「若者の海外旅行離れ」を読み解く:観光行動論からのアプローチ』という法律文化社から出版された書
-
-
学士会報第20回関西茶話会「新興感染症の脅威と現代世界」光山正雄
感染症は今も世界の人々の死因第一位 歴史上の重大感染症 ①ペスト 14世紀 欧州で大流行 当時の
-
-
千相哲氏の「聞蔵Ⅱ」を活用した論文
「「観光」概念の変容と現代的解釈」という論文を偶然発見した。 http://repository.
-
-
マルティニーク生まれのクレオール。 ついでに字句「伝統」が使われる始めたのは昭和初期からということ
北澤憲昭の『<列島>の絵画』を読み、日本画がクレオールのようだというたとえ話は、私の意見に近く、理解
-
-
『佐藤優さん、本当に神は存在するのですか?』メモ
竹内久美子×佐藤優 著 文芸春秋 本当に対談で語られたことなのか、発行済みの著作物をもとに編集部が
-
-
『眼の神殿 「美術」受容史ノート』北澤憲昭著 ブリュッケ2010年 読書メモ
標記図書の存在を知りさっそく図書館から借りてきて拾い読みした。 観光資源の文化資源、自然資源という
-
-
日本観光学会に参加して
6月26日日大商学部で日本観光学会が開催され、「字句「観光」と字句「tourist」の遭遇」と題して
-
-
『訓読と漢語の歴史』福島直恭著 観光とツーリズム
「歴史として記述」と「歴史を記述」するの違い なぜ昔の日本人は、中国語の文章や詩を翻訳する
-
-
脳波であらすじが変わる映画、英映画祭で公開へ
映画ではここまで来ているのに、観光研究者は失格である。 http://jbpress.isme
-
-
人流観光学の課題(AI活用)江戸時代の旅日記、紀行文はその9割以上が解読されていない。「歴史学の未来 AIは膨大な史料から 何を見出せるか?」
江戸時代の旅日記、紀行文は2%程度しか解読されていない(『江戸の紀行文』板坂曜子)。古文書を読む人手
