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「観光をめぐる地殻変動」-観光立国政策と観光学ー石森秀三 を読んで

公開日: : 最終更新日:2016/11/25 人流・観光政策への評論

学士會会報2016年ⅳに石森秀三氏の表題記事が出ていた。論調はいつものとおりであり驚かなかったが、感想を整理しておく。

〇まず大学の観光学関係の学部学科が増加したことを紹介している。事実関係であるから問題はないが、学生数が減少するなか、多くの地方大学観光関係学部学科の経営はこれから定員割れを迎え大変であろうが、そのことには触れられていない。観光が職業教育として重要であることは不変であろうが、大学院教育等での問題となると大いに研究者や教師に責任があると思う。

〇「観光ビッグバンへの対応」 いつもの記述である。日本観光研究学会発行観光学全集9巻『観光政策論』の中でも批判しておいたが、ビッグバンは質的転換が必要であるが、石森氏の強調するところは量的拡大である。現在では中国人のマスツーリズムが論拠になっており説明不足感がある。テキサス大学のマクシミリアン教授のように実証的な資料を基にビジュアルに解説されれば説得力を持つが、その内容は概念の不明確な観光ではなくなり人流になってしまうであろう。

〇石森氏は観光学者が政府の観光政策に参加していないことを問題視している。観光学者の定義も不明確であり本格的な論評をするには値しないが、国鉄改革時交通学研究者が参加できなかった。中心となった学者は公共経済学の加藤寛等であった。改革後交通学会で住田JR東日本社長が、交通研究者に向かって、誰一人改革論議に参加しなったのは、国鉄体制派(組合を含む)につくか改革派につくか判断できなかった日和見の学者態度にあると批判されたと伝承されている。そのご、航空政策の転換期に航空当局と航空会社が対立したことがあったが、航空学研究者の代表的学者がどっちについていいのかわからず、困ったことであると感想を私に漏らしたことがあるが、私は住田発言を紹介ておいたことを思い出す。観光学研究は交通学以前の状態であり、観光庁から見れば全く頼りにならず、権威づけにもならないのであろう。ただ、石森氏の研究者の状況を憂うる態度には同感する。

〇日本の観光資源がアジアの中でも優れていることを強調され、地域主導の自律的観光振興が不可欠であり、人材養成が不可欠であると主張する。産官学連携よりも観光学会一致団結したビジョンづくりを提案されている。
学会の乱立は30年越しの問題であり、今更始まったことではない。おもてなしの研究者と観光政策の研究者が一緒に論じる必要性がないこともあるが、私は「観光」概念を論じる意味を考えると、人が移動することに着目する立場を捨てないのであれば、「「楽しみ」のための旅」の「楽しみ」の科学的研究は脳科学に吸収されるものであると思っている。人が移動する点を強調するのであれば、楽しみであるか否かに関わらない「人流」学として再構築することを目指すべきであると思っている。
観光が地域の個性の発揮であるとすれば、脳の仕組みを研究するしかないのであるが、法則がわかれば今度は皆な同じことを行い個性が発揮できないという矛盾をかかえる。従ってそれまでは、職人技に期待するしかないのであるが、当分は職人技で大丈夫であろう。

〇「地殻変動」の趣旨が今一つ理解できなかったことを付け加えておく。

最後に、石森氏の憂いである観光学の現状については全く同感である。

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