*

観光行動学研究に必要なこと インタラクションの認識科学の理解

公開日: : 最終更新日:2023/05/31 観光学評論等

ミラーニューロンを考えると、進化の過程で人間が人間をみて心を想定するように進化したとおもっていたから、ロボットを見てロボットにミラーニューロンを与えるためには、人間の脳の仕組みを正確に理解しないと、完全なるロボット、つまり完全なるAIはできないのだろうと思った。従って、人間の脳の完全なる理解ができるか否かが、AIが実現できるか否かということになるのあろう。少しずつではあるが進んでいることは間違いはない

「インタラクションの認知科学」のまえがき

 人は赤ん坊のときから両親や様々な人とインタラクションすることで成長していきます。生活の中でも友達・先生・同僚・上司と日々インタラクションしながら、学んだり、助け合ったり、ときには喧嘩したりと、人と人がお互いに関わり合いながら社会を構成しています。誰かとインタラクションできる人の知性や能力を知ることも、認知科学という人の知的活動の仕組みを明らかにする学問の重要なテーマです。本書は、人とインタラクションできるロボットを題材として、ロボットに必要な仕組みを考えながら、人が行うインタラクションの仕掛けを紐解いていきます。

 インタラクションの認知科学を考える上で、なぜロボットを引き合いに出すのかをまず説明しましょう。スムーズにインタラクションが行われるためには、インタラクションの参加者がお互いに共通の仕組みや約束事を持っていたり、共通の情報を持っていたりする必要があります。持っていないと大変な思いをすることは、日本語の話せない外国人と会話する場面を想像するとわかりますね。人とスムーズにインタラクションするロボットを作って行く中で、人の持っている仕組み・約束事・知識を、共通に使えるようにロボットにも入れていく必要があります。問題は、何が共通なものとして重要なのか自体がわからないことなのです。人とインタラクションできるロボットを作ることを通して、インタラクションの中で人がどのような仕組みを働かせ、どのような約束事に従い、どのような知識を活用しているのかが明らかになります。これは、人の知的能力を明らかにする認知科学の目的そのものです。ロボットを活用したやり方で可能になる認知科学研究を知ることができるのも本書の特徴です。

 ロボットが人とインタラクションする際に難しいのは、言葉を認識することや、目の前の人を認識することだけではありません。人とロボットが周囲で起きている出来事や周辺にある物を話題として会話することが難しかったりもします。本書は、人とロボットを実際にインタラクションさせた実験をたくさん紹介します。実験を通して、ロボットが人と状況を共有し、自然な形でコミュニケーションする際に必要となる能力がどういうものなのか解説していきます。

 インタラクションの実験、特にロボットを用いた実験は、文章だけからでは実際の雰囲気がわからないことが多々あります。実験で何が起きていたのか、ロボットがどのように動いたのか、よりわかりやすく伝わるようにビデオが閲覧できるホームページを用意しました。下記のURLでアクセスしてみてください。人やロボットの些細な動きがいかに影響力を持つのか、本で読んでもわからなかった部分がきっと理解できると思います。

http://www.ailab.ics.keio.ac.jp/webpage_personal/cognitive_robot_interaction/

 本書は、認知科学の知見を紹介するとともに、人とインタラクションできるロボットの構造の説明にもなっています。人とコミュニケーションできるロボットを設計する上での基礎知識にもなります。インタラクションにおける人の知的な振る舞いを知りたい人から、人とインタラクションできるロボットを将来作ろうと思っている人まで楽しんで読んでいただける内容になっているかと思います。人の知性、ロボットの知能の双方の側から、インタラクションという現象を解き明かしていきますので、どうぞお楽しみください。 

関連記事

『科学の罠』長谷川英祐著「分類の迷宮」という罠 を読んで

観光資源論というジャンルが観光学にはあるが、自然観光資源と文化観光資源に分類する手法に、私は異議を唱

記事を読む

no image

メンタル統合 

人類の文化的躍進のきっかけは、7万年前に起きた「脳の突然変異」だった:研究結果 https:

記事を読む

no image

Deep learning とサバン(思い付き)

「 スタンフォード大学の研究チームが、深層学習を用いて衛星画像からソーラーパネルを探し出すディープ

記事を読む

no image

観光学が収斂してゆくと思われる脳科学の動向(メモ)

◎ 観光学が対象としなければならない「感情」、「意識」とは何か ①評価をする「意識」とは何か

記事を読む

no image

人流抑制に関する経済学者と感染症学者の意見の一致「新型コロナ対策への経済学の貢献」大竹文雄 公研2021年8月号No.696を読んで

公研2021年8月号No.696にコロナ関連の有識者委員等である、行動経済学者大竹文雄氏の「新型コ

記事を読む

no image

「旅館の諸相とその変遷について」「近代ホテルにおける「和風」の変遷とその諸相」を読んで

溝尾良隆立教大学名誉教授が中心となっている観光研究者の集まりが7月8日池袋で開催された。コロナ後の久

記事を読む

no image

『仕事の中の曖昧な不安』玄田有史著 2001年発行

書評ではなく、経歴に関心がいってしまった。学習院大学教授から東京大学社研准教授に就任とあることに目

記事を読む

no image

京都大学経営管理大学院講義録「芸術・観光」編を読んで

湯山重徳京大特任教授が編者の講義録、京都大学なので興味が引かれた。エンタテインメントビジネスマネジメ

記事を読む

『眼の神殿 「美術」受容史ノート』北澤憲昭著 ブリュッケ2010年 読書メモ

標記図書の存在を知りさっそく図書館から借りてきて拾い読みした。 観光資源の文化資源、自然資源という

記事を読む

角本良平著『高速化時代の終わり』を読んで

久しぶりに金沢出身の国鉄・運輸省OBの角本良平氏の『高速化時代の終わり』を読んでみた。本を整理してい

記事を読む

no image
🕌🎒2025シニアバックパッカー国連加盟国192か国達成の旅  リビア トリポリ

https://youtu.be/MDVZuy3TE3o

no image
🕌🎒2025シニアバックパッカー国連加盟国192か国達成の旅 計画作成

国連加盟国192か国を訪問するという計画も残り4か国となっている。その

no image
🌍🎒2024シニアバックパッカー南極太平洋諸国の旅 福建省(24番目)厦門

中国渡航にビザが必要な段階で計画したので、金門島から廈門に渡る

🌍🎒シニアバックパッカー南極太平洋諸国の旅 台湾省🏳‍🌈 金門島

  昨夜桃園空港から台北駅に鉄道で移

no image
🌍🎒シニアバックパッカー南極太平洋諸国の旅 台湾省🏳‍🌈 台北

国連加盟国第一か国目は中国。1970年に香港、台湾と旅行した。当時は、

→もっと見る

PAGE TOP ↑