観光と人流ビッグデータとウェアラブルに関する意見交換会
公開日:
:
最終更新日:2016/11/25
観光学評論等
2015年2月17日14時から一般社団法人日本情報経済社会推進協会/gコンテンツ流通推進協議会において表記の意見交換会を行いました。先ず私から「人流ビッグデータによる未来の観光について」(資料)を説明し、株式会社電通サイエンスジャム代表取締役神谷俊隆氏から「人の感性を見える化するデバイス」について説明を頂き、そのあと意見交換を行いました。
私からのプレゼン資料はこの人流観光研究所のHPの各種講演会資料にアップしてあります。簡単にまとめますと、①観光資源の評価がこれまでアンケート調査によるものが主体であり、客観性に欠けていたけれども、位置情報、属性情報が簡単にビッグデータとして整理できる時代になった。②これに加えて、これまで主観的データであった「感性」といわれるものも、ウェアラブルデバイスを活用すれば容易にデータギャザリングできる可能性が出てきた③これらのデータを解析すれば観光・人流需要を先回りして把握できるようになるのではないか ということでした。
神谷さんと電通の嶋田敬一郎さんからは感性が見える化された現状とその経緯を説明頂きました。素人の私にはウェアラブルデバイスがここまで進化してきているのかと驚きでありました。既に一部の企業ではこのデバイスを活用し始めているようです。一方でGoogleglassに代表されるように、ウェアラブルのもつ社会的問題点も指摘されました。
電通の嶋田さんから、今後どのようなウェアラブルなら利用されるかという質問があり、私は、団塊の世代は老眼鏡や補聴器を必要とするので、帽子(キャップ)のような物に組み込んでもらえれば普及するのではと答えました。しかし、今ひらかけれているロンドンのファッションショーでは、ウェアラブルコンピュータがテーマで新作デザインを発表しているとのニュースが流れており、この分野でも西洋ブランドに後れをとってしまうのかなと恐れを抱きました。
以下、Googleで検索可能な画像を紹介しておきます。
頭頂部で脳波を測定するもので、スマホをセットして自分がみたものを録画して、反応を測定できることから「一目ぼれ」も客観的に判別できる可能性があるようです。一万円を切る価格のようで、観光資源調査にも活用できると思われます。
次にわかりやすい動画を掲載しておきます。
https://www.youtube.com/watch?v=qvHcBq7UaY0
感性データは下記のように(画像は薄くてみにくいかもしれません)慶応大学の満倉靖恵純教授が研究している五種類のものが分析されています。高速道路と一般道での運転には明らかにドライバーに対する刺激に差異があることが客観的データで分析されていますから、東京タワーをみた外国人、それもアジア、ヨーロッパ、男女、年齢等により感激の仕方に違いがあるのかないのか、東京タワーと増上寺では反応に違いがあるのか、スカイツリーと東京タワーでは違うのか、といった分析ができる可能性があります。分析結果次第では、新しい観光商品開発に活用することができます。味覚反応が分析できれば「おいしくないラーメン屋 」は駆逐されますから、厳しい時代がやって来るかもしれません。もっとも「味」は文化ですから判断基準が変わる可能性があり、その基準分析ができれば更に面白いのですが。
なお、膨大な数が存在する音楽配信ではレコメンド型の配信サービスが始まっており、その人のその時の感性に応じた音楽を配信するサービスまであらわれているようです。動画配信もお勧め機能をもったNetflixが日本でもサービスを開始すると報道されています。旅行も生活もその個人に見合ったお勧めサービスが始まれば世の中が変わるかもしれません。
意見交換会の最後に、私の方から折角の意見交換会でしたので、このまま終わらせるのはもったいないという気がしているということを申し上げました。
後日gコンテンツ流通推進協議会の協力も得て、パイロット調査等ができないかと思っております。感性デバイスも一万円を切る価格であれば予算的にも無理のない範囲で観光客調査ができるのではないかと思われます。神谷さんや満倉先生等の研究やビジネスの発展にもお役に立てれるのではないかとも思われます。
本ブログを読まれたかたで、この件に関しご意見や参加希望のある方は遠慮なくご連絡ください。(steramae@nifty.com v寺前秀一)
関連記事
-
-
『コンゴ共和国 マルミミゾウとホタルの行き交う森から 』西原智昭 現代書館
西原智昭氏の著書を読んだ。氏の経歴のHP http://www.arsvi.com/w/nt10.h
-
-
人流観光学の課題(AI活用)江戸時代の旅日記、紀行文はその9割以上が解読されていない。「歴史学の未来 AIは膨大な史料から 何を見出せるか?」
江戸時代の旅日記、紀行文は2%程度しか解読されていない(『江戸の紀行文』板坂曜子)。古文書を読む人手
-
-
国立国会図書館国土交通課福山潤三著「観光立国実現への取り組み ―観光基本法の改正と政策動向を中心に―」調査と情報554号 2006.11.30.
加太氏の著作を読むついでに、観光立国基本法の制定経緯についての国会の資料を久しぶりに読んだ。 そこ
-
-
加太宏邦の「観光概念の再構成」法政大学 法政志林54巻4号2008年3月 を読んで
加太宏邦の「観光概念の再構成」法政大学 法政志林54巻4号2008年3月の存在をうかつにも最近まで知
-
-
「植民地朝鮮における朝鮮総督府の観光政策」李良姫(メモ)
植民地朝鮮における朝鮮総督府の観光政策 李 良 姫 『北東アジア研究』第13号(2007年3月
-
-
京都大学経営管理大学院講義録「芸術・観光」編を読んで
湯山重徳京大特任教授が編者の講義録、京都大学なので興味が引かれた。エンタテインメントビジネスマネジメ
-
-
若者の課外旅行離れは本当か?観光学術学会論文の評価に疑問を呈す
「若者の海外旅行離れ」を読み解く:観光行動論からのアプローチ』という法律文化社から出版された書籍が
-
-
ジョン・アーリ『モビリィティーズ』吉原直樹・伊藤嘉高訳 作品社
コロナ禍で、自動車の負の側面をとらえ、会うことの重要性を唱えているが、いずれ改訂版を出さざるを得な
-
-
観光資源論と 観光学全集「観光行動論」を考える ベニスのクルーズ船反対運動への感想と併せて
現在「観光資源論の再構築と観光学研究の将来」と題した小論文をまとめているが、観光資源(正確には観光対
-
-
日本の観光ビジネスが二流どまりである理由
日本の観光ビジネスが二流どまりになるのは、人流に関する国際的システムを創造する姿勢がないからです。