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観光学が収斂してゆくと思われる脳科学の動向(メモ)

公開日: : 最終更新日:2016/11/25 観光学者への辛口評論等~観光学研究発展のため~

◎ 観光学が対象としなければならない「感情」、「意識」とは何か

①評価をする「意識」とは何か
②「意識」を説明する確立したものはない
③脳内反応(二元論の否定)
④電気的反応と化学的反応
⑤ゲノム解析と同じ 塩基配列がわかってもその意味分析はこれからの課題
⑥コピペ発見ソフト 同じものを探す ホモロジー
⑦脳内反応はゲノムより一段階困難
⑧シナプスネットワークは個人により違うのでは
⑨ロボットは意識を持てるか

①③ 『赤を見る―感覚の進化と意識の存在理由』ニコラス・ハンフリー著
スクリーンに映し出された赤い光を見るという行為の中に生まれる感覚とその性質、それが進化してきた過程を探りながら、人間の意識の謎に迫ろうという大変おもしろい試みを、実際に2004年春にハーヴァード大学で行なわれた講演をベースに再構築して書かれた本。感覚から知覚が連続的に生み出されるという従来的な見方を採用せず、感覚と知覚は別々のものとして同時に生じているのだというハンフリー独自の見方がある。
*盲視とは、視野の一部分において知覚的には盲である人物が、知覚的な経験(‘クオリア’)を伴うことなく、視覚刺激への何らかの応答を示す現象のこと。盲視は、視覚に関与する脳の損傷によって生じる。盲視状態にある患者は、実際には「見えている」のに「見えている感覚がない」そうで、目の前に赤いスクリーンがあるのを正確に推測できるにも関わらず、自分がそれを見ているという感覚がないために、それを事実として受け止められない。それゆえに自分が赤を見て、そこに赤があるという推測をしているとは信じられず、自分が実際に見て推測しているのか、単なる当て推量でそう答えているのかがわからないのだそうである。こうした盲視に見られる「見える」という知覚のみがあり「見えている」という感覚のない患者の症例から、ハンフリーは知覚と感覚が別に生じうることを見出している。

「経験があって初めて経験をする主体が存在しうる」
 感覚というものの特徴を次のような形で捉える。
• 感覚は主観的で、かつ、私秘性をもつ。
• 知覚されたものは客観性をもち、主体が関わるかどうかに関わらず、そこに存在する。
• それは他者との交換が可能だが、感覚それ自体はきわめて私秘性が高いがゆえに他者の交換、共有が厳密には不可能といえる。
• 感覚は、主体その人がつくり出すものであると、同時に、ハンフリーは感覚こそが主体を作り出しているのだと考える。
ハンフリーはアメーバのような原生生物が自分の内と外を区別する際の、外部刺激に対応した内部の身悶えに感覚の起源を見出す。ハンフリーはこの身悶えという表現行為に感覚のはじまりを見出し、次のような図(省略)とともに感覚の進化を説明する。
「映像記憶の喪失と言語の獲得」
 ハンフリーは、人類は映像記憶を喪失した代わりに概念記憶(言語)を獲得したという考えである。映像記憶は刻々と変わり、それは無垢の眼で見ているのみである。従って、この場合時間の概念は生まれない。 過去・現在・未来の時制(概念)が生まれるのは、言語の使用つまり概念記憶となってからである。人は、感覚により意識を持つようになる。感覚はその都度自己を確認する。そして、「意識」が成立するには自己言及つまり、記憶・時間という言語概念を必要とする。「自己意識」とは、錯覚であり実体はない。また、「意識」とは、言語による偽りの実体を創り出すメカニズムである。そして、錯覚であることを隠蔽せざるを得ないため「意識」は解かりにくくなるのである。 心身二元論も「意識」の罠である。

②④『意識をめぐる冒険』クリストフ・コッホ著 アレン脳科学研究所所長
• 欧米では、人や霊長類、ネズミの脳の細胞や結合状況をすべて分析する計画が次々と進められている
• 脳科学における「ゲノム計画」はシアトルのアレン研究所が中心
• まだ方法論は確立していない
• 意識にかかわる細胞や物質はまだ特定されていない
• コッホは「脳の働きは、脳の神経細胞が作る回路の働きを総合したもの」という脳科学の伝統的考え方
• 神経細胞の働きと脳の中で起きている意識現象との相関関係(子リレーション)をとことん調べる
• 脳のどこかに解明のカギとなる「遺伝子」のようなものがあると考えた
• 電気信号のやり取りではない脳の働きの解明 脳の持つ「ケミカルマシン」としての働き 
• 以前から人間の脳には電気信号系だけではないウェットな化学物質系の働きがあり、両者を総合しないと脳の働きはわからない 
• その方法論がわからないため研究する人がいなかった
• 臨死体験は「脳内現象」である死の間際にネズミの脳の中で、セロトニンという幸福感を感じさせる神経伝達物質が大量に放出される現象が確認
• 大脳辺縁系が、死の直前、神秘的な体験をさせることが突き止められている 辺縁系は爬虫類も持っている進化の初期段階で生まれた部分で、眠りの制御をおこなったり、幸福感を感じさせる神経伝達物質が放出される場所であることがわかっている

明晰夢
• 意識と無意識の間で人は夢を見る
• スティーヴァン・ラバージは眠っている途中に「今、明晰夢を見ている」と研究者に伝える方法を考え出した。人は半睡眠状態でも眼球だけは意識的に独立に動かせる
• ニューヨークでは、ラバージの理論をもとにしたアイマスクが売られている 誰でも明晰夢が見られる 百ドル程度
• この延長に「インセプション」映画

②意識の数式化ジュリオ・トノーニ教授(ウィスコンシン大学)
• 主観的な意識の量は数学的に表現できる
• 神の数式 統合情報理論 意識は脳の特定の分野に存在するのではなく、脳の情報と情報の「つながり」が作るネットワークによって生み出されているとする
• 起きているときにあったのが、情報と情報をつなぐ「つながり」、このつながりを線でつないでゆくとまるで「蜘蛛の巣」のようなものが浮かび上がってきた

②複雑化・意識下の法則
• フランスの進化生物学者 テイヤール・ド・シャルダン
• 生物はより複雑なものになる過程において、その複雑性がある限度を越すと「意識」が生まれる

④脳とつながる「バイオニック義手」手術が成功
http://wired.jp/2015/04/03/bionic-reconstruction/
• 「わたしたちは神経移行手術を通して、新しい神経信号をつくり出すこと、あるいは取り出すことに成功しました。そしてさらに、その信号を増幅して筋肉に伝達することに成功しています。信号は解読され、バイオニックな腕の物理的な動きに変換されるのです」
• 切断手術を前に、患者3人は、9カ月間の認知訓練のプログラムを受けた。そこで彼らは、自身の脳の電気信号を用いてヴァーチャルな腕を制御する方法を学んだ。まずはコンピューターで訓練を行い、さらに、自身とはまだ接続していない義手を使い、さらなる練習を行った。
• このアプローチは、義肢システムにさらなる神経入力を供給して、その機能を高めるからです。しかしながら、有効性を確定させるには、長期間にわたって結果を評価する必要があるでしょう。こうしたプロセスが、常に必要なのです
• https://youtu.be/lgu6ajeiwnk
⑤カントルコーディング仮説
• カントル集合がエピソードの情報表現になっている
• カオス軌道の分布が非常に偏った「非一様カオス」では初期条件に含まれた情報は時間経過に比例して失われず  情報の重ね合わせが発生
• 海馬は一連の出来事の連鎖すなわちエピソードの記憶を形成するのに必須の器官といわれている。本研究においては複雑系科学の観点からエピソード記憶形成の問題を捉える。高次元力学系の研究で得られた知見をもとに、エピソード記憶の形成機構を明らかにする事を目的に研究計画をたてた。
• 今年度の研究によりγ波、θ波とエピソード記憶の関係を明らかにするモデルを構築出来た。一つの仮説として意識による離散化はγ波によって行われると考えた。一方、海馬-皮質の相互作用系は約200ミリ秒の回帰時間を特徴的な時間として持ち、θリズムと同期している。従って、海馬への入力はθ波をγ波が離散化することによる事象の連鎖と考えられる。
• CA3に現れるカオス的遍歴は、出来事の連鎖すなわちエピソードを表現しており、カントール集合の階層性はカオス的遍歴の履歴を表現しているので、カントール集合はエピソードのカテゴリーを表現しているということを明らかにした。CA3におけるカオス的遍歴では事系列を構成する各パターンの間に自然な距離の概念があるが、事系列間の距離を定義できるしくみにはなっていない。この事系列間の距離はカントール集合内のサブクラスター間の距離で計測可能であるので、CA1のダイナミックスで表現されている可能性が指摘できる。以上の結果から次の仮説を導いた。
• 仮説:エピソード記憶は思考の原型である。エピソード記憶のカントールコードのような符号化が、自然言語と結び付くことで演繹推論が可能になったであろう。カントールコードの学習はカテゴリー学習である。このようなカテゴリー分類はルール生成や関係生成である帰納推論の原型になった可能性がある。
⑤オプトジェネティクス
• 遺伝子工学と光学を組み合わせて神経細胞(ニューロン)の集まりを観察したり,制御したりする「オプトジェネティクス」という分野が芽生えつつある。遺伝子にコードした蛍光色素を使って神経活動を可視化する手法だ。この方法を用いると,ニューロン同士の接続や特定のニューロン集団の機能を“見る”だけでなく,光のスイッチを切り換えて,ニューロンを遠隔操作することもできる。いずれは脳の神経ネットワークを解き明かし,病気の治療にも役立つかもしれない。
• 従来,脳細胞を調べるには,細胞を刺激して,その活動を電極で記録する方法がとられてきた。しかしこの方法は間接的で,実験上の制約も多く,ニューロン集団を分析するには向かない。この問題を解決したのが,ノーベル化学賞を受賞した下村脩博士が発見した緑色蛍光タンパク質(GFP)だ。多数の研究グループが,GFP遺伝子に手を加えることで,神経伝達物質や電圧,カルシウム濃度などの変化を検出できるさまざまな光感受性タンパク質を作り出した。これらの分子をニューロンに組み込み,光を発する分子センサーとして用いることで,神経ネットワーク内の情報処理を追いかけることができる。
⑤巨額が投資され、「脳の透明化」が進む神経科学
2014/12/02, MIT Technology Review
• 人間の脳に約860億個もあって、何千もの種類に分かれる神経細胞について、科学者たちがそれぞれの機能を特定する作業を開始
• ロボット工学と微小電極を利用すれば、生きている動物の個々の細胞の活動に聞き耳を立てることができる。
• 進化した画像撮影法で、「神経細胞の接続」の3次元マップを作ろうとする研究者たちもいる(彼らは、脳の薄片内の神経細胞と繊維の分析へと向かっている)。
• こうしたツールを使い分けて、脳の活動に関する理解を積み重ねながら、科学者たちは最も大きな謎を攻略したいと望んでいる。つまり、記憶、意思決定、意識等である
⑤脳のすべての接続状態をマッピング
• 欧州委員会は2013年1月、「ヒューマン・ブレイン・プロジェクト」の立ち上げに10億ユーロを出資すると発表。今後10年をかけて、脳のすべての接続状態をマッピングしようという取り組みだ。
• 2013年4月、アメリカのオバマ政権が「BRAIN」イニシアチブを発表。BRAINは、「Brain Research through Advanced Innovative Neurotechnologies」(高度で革新的な神経工学による脳研究)の略で、こちらは1億ドルにのぼる初年度予算の多くを技術開発に費やすという。
• アメリカ国立衛生研究所(NIH)が支援する「ヒト・コネクトーム・プロジェクト」も進行中。電子顕微鏡による脳の連続スライス画像を用いて、3次元の地図を作製しようとするプロジェクト(コネクトームとは、脳の神経細胞の接続状態を表した地図のこと)。
⑧ノーベル賞学者エーデルマン
「神経細胞群選択説(TNGS)=神経ダーウィニズム」1987年提唱
「ダイナミック・コア」仮説1998年提唱
⑧神経細胞群選択説=TNGS(Theory of Neuronal Group Selection)
• 脳神経科学者、ジェラルド・M・エーデルマンのグループが提唱する、中枢神経系の多様性と統合性を説明する脳の大局論。

以下の3つの原理からなる。

発生選択:胎児の脳が一応の解剖学的構造を整えるまでの期間に発育していくニューロンが後成的な影響を受けながらさまざまな結合パターンのレパートリーを構成するプロセス。
• 経験選択:主要な解剖学的構造ができあがった後に、個体が行動するなかで環境からの様々な入力を得ながら、シナプス結合に多彩な結合強度を生み出していくプロセス。
• 再入力:時空間的相関および意識の統合性を可能にする最重要プロセス。
原意識
• 原意識は、価値カテゴリー記憶を処理する領域と、知覚カテゴリー化を処理する領域とが再入力によってやりとりすることで生まれる。ようするに、このやりとりの結果、意識シーンが構成されるということだ。このようなやりとりはいわば意識部分を引き出すための“神経的取引”といえるが、この取引を主に担うのはダイナミック・コアで、基本的に視床-皮質系を拠点に営まれる。
⑧「ダイナミック・コア」説
「主に(すべてではない)視床ー皮質系の内部で、再入力によってダイナミックに変動しながら相互作用するこの機能クラスターを「ダイナミック・コア」と呼ぶ」

そしてこれが、意識にほかならない
http://gitanez.up.n.seesaa.net/gitanez/image/dinamiccoa.jpg?d=a214
• 前図は、意識プロセスをC、それに対応するダイナミック・コアの神経プロセスをC‘とした場合の両者の関係を描いた図
• 外界からの信号、脳内そして身体のほかの部分からの信号がダイナミック・コアに作用し、さらにその活動C‘が神経活動や動作に影響を及ぼす。コア・プロセスにより高次の識別が可能になる。そして、この高次の識別こそがクオリアであるとされる。
• 脳内のニューロンのネットワークのような複雑系において、再入力と呼ばれる縮退のしくみをもったプロセスが働くことで、「ひとまとまりに統合されていて脳内で構成される」「膨大な多様性をもち、次々と変化する」などの特徴をもった意識が生まれるというわけ。そして、それは脳内の神経プロセスC‘が必然的にもつ特性であり、かつ、それが進化論的に実現されたのはその機能が高次な識別という生物の生存においてきわめて有利な特徴をもたらすからだったと、エーデルマンは述べている。
• ダイナミック・コアの活動からクオリアへ、という現象変換が起きるということは、コアの神経活動によって高次元の識別がもたらされるということであり、言い換えれば、コアの活動なくして高次元の識別はないということでもある。つまり、その現象変換(すなわちたくさんの区別が重ね合わされた高次元の識別)は、コアのその神経活動によって必然的に引き起こされる。いや、厳密に言えば、その活動によって引き起こされるのではなくて、その活動と同時に生まれる特性というべき
• 主観的体験としての意識Cは脳内に時々刻々成立するダイナミックコアプロセスC‘に必然的に「伴立」する「現象」であること、また因果作用をもつのはC’のほうであること、
プロセスC‘の動態は物理法則に完璧に従属していることなど、たしかに著者の見解は心脳問題への一つの決着の付け方となるかもしれない。
• またエーデルマンは、体験(クオリア)CがプロセスC’に何ゆえに伴立するのか、その理由は「問わない」のが科学者としての正しい態度であるとみなしているように見受けられる。
 
クオリアはなぜ主観的か
• エーデルマンは「意識Cはコア・プロセスC‘の特性」であり、それゆえ、いわゆる哲学的ゾンビ論はそもそも問題にならないと言っている。C’があってもCがないゾンビは論理的に不可能であるということ。
• また、なぜクオリアが主観的であり、コンピュータへの置き換えができないかもこのことで説明される。つまり、コア・プロセスC’そしてそれに伴立する意識プロセスCにおける「知覚カテゴリー化および記憶系への入力の重要な供給源が、その個体の身体から送られてくる信号である」から、意識は一人称的である以外にないというわけです。

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