*

人流観光学の課題(AI活用)江戸時代の旅日記、紀行文はその9割以上が解読されていない。「歴史学の未来 AIは膨大な史料から 何を見出せるか?」

公開日: : 観光学評論等

江戸時代の旅日記、紀行文は2%程度しか解読されていない(『江戸の紀行文』板坂曜子)。古文書を読む人手が足りないからだ。そのような中でも高橋陽一氏(『近世旅行史の研究』)のように地道な研究から人流観光学の発展に寄与された研究者も存在するが、既に他分野ではAIを駆使した研究の進歩がみられることが報告されている(MIT Tech Review 2023 .06.23 by Moira Donovan「歴史学の未来 AIは膨大な史料から 何を見出せるか?」)。

 

歴史家によると、現代のコンピューター科学を遠い過去に適用すれば、1つの文書だけを分析することで生じる歴史の歪みを修正し、他の方法ではまず不可能なほどの広い範囲の歴史的記録の関連性を引き出せるという。だが、この手法ならではの歪みが生じることもある。例えば、機械学習によるバイアスやあからさまな改ざんが歴史記録に滑り込むリスクだ。結局、歴史家をはじめ、歴史を検証することで現在を理解しようとしている人々は、1つの疑問に行き着く。将来、機械の役割が大きくなるとして、我々は過去の歴史についてどのくらい機械に委ねるべきなのだろうか。

増え続ける歴史的文書をデジタル化する取り組みを通じて、人文科学の分野でもビッグデータが誕生した。米国議会図書館の数百万ページに及ぶ新聞のコレクションや、フィンランド公文書館所蔵の19世紀にさかのぼる裁判記録などがその例だ。研究者にとって、これは問題であると同時にチャンスでもある。情報量は莫大に増えているのに、多くの場合、これまではそれを精選する方法がなかったからだ。

課題は、複雑性の解析を支援するコンピューター・ツールが開発されることで解決されてきた。2009年、オーストリア科学アカデミーのヨハネス・プライザー・カペラー教授は、14世紀のビザンチン教会が決定した登録簿を調べていた。数百もの文書の意味を理解するには、司教たちの関係性を体系的にデジタル化して調査する必要があることに気づく。教授は、人物ごとのデータベースを構築し、ネットワーク分析ソフトウェアを使って彼らの関係性を再構築した。

 

How AI is helping historians better understand our past

 

『近世旅行史の研究』高橋陽一 清文堂出版

関連記事

no image

「若者の海外旅行離れ」という 業界人、研究者の思い込み

『「若者の海外旅行離れ」を読み解く:観光行動論からのアプローチ』という法律文化社から出版された書

記事を読む

no image

岩波新書『日本問答』

本書では、大島英明著『「鎖国」という言説 ケンペル著・志筑忠雄訳『鎖国論』の受容史 人と文化の探究』

記事を読む

no image

Ctripの空予約騒動について 大山鳴動に近い騒ぎ方への反省

「宿泊サイト、予約しない部屋を販売」といった表題でテレビが取り上げ、関係業界内ではやや炎上気味であ

記事を読む

no image

Deep learning とサバン(思い付き)

「 スタンフォード大学の研究チームが、深層学習を用いて衛星画像からソーラーパネルを探し出すディープ

記事を読む

no image

観光と人流ビッグデータとウェアラブルに関する意見交換会

2015年2月17日14時から一般社団法人日本情報経済社会推進協会/gコンテンツ流通推進協議会におい

記事を読む

『眼の神殿 「美術」受容史ノート』北澤憲昭著 ブリュッケ2010年 読書メモ

標記図書の存在を知りさっそく図書館から借りてきて拾い読みした。 観光資源の文化資源、自然資源という

記事を読む

no image

『働きたくないイタチと言葉がわかるロボット』川添愛著

ディプラーニングを理解しようと読んでみた。 イタチとロボットの会話は全部飛ばして、解説部分だけ読め

記事を読む

電子出版事始め『人流・観光学概論』

大学のテキストで使用するつもりであった『人流・観光学概論』、ウィネットの好意で、校正済みのPDFを

記事を読む

no image

京都大学経営管理大学院講義録「芸術・観光」編を読んで

湯山重徳京大特任教授が編者の講義録、京都大学なので興味が引かれた。エンタテインメントビジネスマネジメ

記事を読む

no image

観光資源、観光行動の進化論

「クラシック音楽に隠された「進化の法則」、東大京大の研究者が発見」tいうひょだいの興味深い記事を発

記事を読む

PAGE TOP ↑