*

観光とツーリズム~日本大百科全書(ニッポニカ)の解説に関する若干の疑問~

日本大百科全書には観光に関する記述があるが(https://kotobank.jp/word/%E8%A6%B3%E5%85%89-469729
以下特に気になる点を取り上げる。この解説でも「井上萬壽藏(ますぞう)著『観光と観光事業』1967」を引用しているが、井上氏の解説には原典が示されていないことから、正確であるのか疑問が残っている状況である。

〇 「日本で観光の語が現代的な意味で使用されるようになったのは、英語のツーリズムtourismの訳語としてあてられるようになった明治なかば以降である。」

◆ 字句「ツーリズム」が明治半ばに日本の訳語になったか否かの点は、辞書及び新聞記事検索結果では証明できない(むしろ否定的)ことをすでに本ブログでも明らかにしているところであり、帝京平成大学紀要27巻にも掲載しているところである。残された手段として、英文の原典と日本の訳本を突き合わせて照合しなければならないが、そのような作業は今のところなされた研究はない。

〇 「とくに一般化したのは大正に入ってからで、とりわけ1923~1924年(大正12~13)ごろ、アメリカ移住団の祖国訪問に際して新聞紙上で「母国観光団」として華々しく報道されたためだといわれる。」

◆ 朝日新聞記事データベース聞蔵Ⅱの検索結果では、「母国観光団」の記事は朝鮮からの母国観光団の記事が1911年に掲載されて以来1925年までに38件掲載されているが、1923年から24年の掲載件数は1924年6月18日の記事1件である。しかも当該記事は、母国観光団のブローカーが船賃を三倍にして横浜から米国に移民団を送り大儲けしたという、全く観光とは無縁の内容である。ちなみに1935年までに検索期間を拡大してもヒット数は49件であり、同期間の「観光」のヒット件数345件と比較しても格段多いということでもない。
朝日新聞だけが当時の日本語の報道であるわけではないが、たぶん読売新聞記事検索ヨミダスでも同じ結果になるであろう。

〇「日常的な語として広く使用されるようになったのは昭和初期以降であり、世界的な観光黄金時代を背景にして鉄道省に国際観光局が設置(1930)されたのを契機に民間機関も設立され、国内観光の気運が高まりをみせ始めたころからである。」

◆ 「国内観光の機運が高まり」の記述も不正確であることは帝京平成大学紀要27巻に記述しているが、人流観光研究所HPに『概念「「楽しみ」のための旅」と字句「観光」の遭遇』として掲載してある(http://www.jinryu.jp/category/study

関連記事

no image

『科学の罠』長谷川英祐著「分類の迷宮」という罠 を読んで

観光資源論というジャンルが観光学にはあるが、自然観光資源と文化観光資源に分類する手法に、私は異議を唱

記事を読む

Madagascar · Antananarivo (145) February 16th – 18th, 2019

 Because I had a visa, I could enter the country

記事を読む

ウーバーが「100ドルで乗り放題」 NYでも定額サービスを開始

フォーブスジャパンに乗り放題サービスの記事が出ているのをNEWSPICKSが紹介していた。

記事を読む

no image

『AI言論』西垣通 神の支配と人間の自由

人間を超越する知性  宇宙的英知を持つ機械など人間に作れるか 人間は20万年くらい前に生物進

記事を読む

ジャパンナウ原稿「アフリカ大陸中南部の旅行から見えたもの」 

 2月の10日から27日までアフリカ大陸中南部の14か国を駆け足で旅行した。航空機の予約はGoog

記事を読む

no image

自動運転車の可能性 『ロボットは東大に入れるか』(新井紀子著)と冷泉彰彦『from 911/USAレポート』から判断されること

自動運転車の可能性は、「自動」の定義にもよるが、まったく人間の手を借りないで運転することはか

記事を読む

5月17日、18日 バーレーン

〇17日 バーレンの入国審査。ビザがないのでどのレーンかわからず、皆が右往左往。それらしき列は

記事を読む

no image

『満州事変はなぜ起きたのか』筒井清忠著 中央公論新社 2015年

日米戦争=太平洋戦争はかなりの程度、日中戦争に起因し、その日中戦争はかなりの程度、満州事変に起因する

記事を読む

no image

2016年3月8日錯覚研究会

錯覚研究会におよびいただき、観光の話をさせていただいた。発表資料はHPの講演資料集に掲載してある。h

記事を読む

no image

幸田露伴『一国の首都』明治32年 都議会議員和田宗春氏の現代語訳と岩波文庫の原書で読む。港区図書館にある。 

幸田露伴は私の世代の受験生ならだれでも知っている文学者。でも理系の人でもあり、首都論を展開している

記事を読む

no image
動画で見る世界人流・観光施策講義最終回(開志専門職大学事業創造学部)2023年1月23日 

◎『観光』とは何か 日常生活圏を離れて「非日常」体験を行うこと(日常

『戦後経済史は嘘ばかり』高橋洋一

城山三郎の著作「官僚たちの夏」に代表される高度経済成長期の通産

no image
動画で見る世界人流観光施策講義 退職理由

https://youtu.be/d4sXc3MH3ag

no image
動画で見る人流観光講義  旅行

https://youtu.be/7H4F1DFHKgI

no image
動画でみる世界人流・観光施策風土記 中東イスラム編 イラク

◎イラク戦争 https://youtu.be/s-W7sv

→もっと見る

PAGE TOP ↑