*

福岡でウーバー「ライドシェア」の実験開始について

公開日: : 最終更新日:2023/05/20 ライドシェア, 配車アプリ

まだ自家用車が庶民のものではない時代に、阿川弘之氏が愛車で赤の他人をピックアップして好意同乗させる随筆(『空旅・船旅・汽車の旅』)がある。私のブログでも紹介しているが、その中で白タクのことをハンカチタクシーと呼んでいることが記述されている。有償運送の脱法行為を理解する上で語源的には大変面白い記述であるが、一方で阿川弘之氏のような著名人がUberのライドシェアに参加したとするならばマスコミ的には大きな話題になったであろう。

1 ウーバーのライドシェアの概要

2015年2月5日の日経新聞によると、スマホを使った配車サービスを提供する米ウーバーテクノロジーズ(カリフォルニア州)は、個人が所有する自動車を共有する「ライドシェア」の検証プログラムを福岡市で始めたと発表した。九州大学(注)などと共同で都市交通の効率化などに向けた研究を進める。運賃の発生しない検証作業と位置付け、市内や近郊を走る車から情報を集める。利用者はアプリで近所を走っているクルマを探し、目的地まで運んでもらうことができる。乗車時間は1回あたり60分以内、1週間の乗車回数が5回以下などの条件を設けた。利用料は無料。ドライバーは専用のアプリを使い、どこに利用者がいるかなどといった情報を得る。このアプリの起動中はウーバーに走行場所などの情報を提供し、同社は起動時間に応じて対価を払う仕組み。利用者の乗車の有無に関係なく対価を払い、データ収集への協力という形を徹底する。車の維持費、ガソリン代はドライバー負担となる。個人のドライバーの報酬は、午後4時から翌午前2時までは時給1500円、それ以外の時間帯1300円、オンライン中は待ち時間も報酬が支払われるが、配車依頼を受けないとペナルティーが科される。配車が確定すると、スマートフォンにドライバーの顔写真や到着時刻等が表示される。相乗りは実施しない。

(注)具体的には国立大学法人九州大学が全額出資している(株)産学連携機構九州が対応。文部科学省、経済産業省の認可を受けたTLOとして発足し、経営陣に九州電力に加えてJR九州、西日本鉄道も参画している。

9695999993819688E2E69A9E948DE2E6E2E0E0E2E3E7869BE2E2E2E2-DSKKZO8282205005022015TI0000-PB1-3米ウーバー、福岡で「ライドシェア」試験運行を開始

2 有償・無償

タクシー関係者は危機感を含め関心を寄せている。問題点は白タク行為に該当しないかということである。今回の実験は直接の対価を得ないところから「無償」運送として実施されるものである。脱法行為ではないかとの疑いを出す向きもあるが、法的には直接の対価を得ない調査事業であり、宿泊料、診察料等の間接の対価を得ている旅館、病院等の無償送迎バス等が社会的に認知されている今日においては、脱法とは判断されないであろうことは司法判断を待つまでもないことである。なお、営業用の定義は、無償性、他人の需要(家族間での有償運送は他人とはされない)、運送(自動車使用事業と認識できれば運送ではない)の三つのメルクマールがあり、詳しくは人流観光研究所HPに解説してある。

基本的にはバスやタクシー、営業用トラック制度を必要とする社会的な公益性を保護するため、非営業行為を取り締まる発想がある。白バスや白タク行為を取り締まる理由である。規制改革以前は、バス事業の経営を守らないと公益性が維持できないとされたが、交通社会の進展とともに利用者の理解が変化し、規制の見直しが進んだ結果、今日では無償行為まで取り締まることの社会からの理解は得られず、無理に取り締まりを行おうものなら規制官庁そのものの存在が危うくなる時代になってきている。

なお、人身事故に関しては、日本では営業自家用を区別せず自動車損害賠償保障制度が確立している。運行供用者責任を広く解釈する、自賠法の判例の延長で考えれば、配車により利益を得るウーバーが負うと司法で判断されることも十分に考えられるところから、強制保険以外に賠償責任に対応した保険を付保しておくことが望ましいであろう。

3 ビジネスモデルのつくりかた

広告の世界でフリーペーパーが一般化したように、移動空間も無償送迎車・フリーライドが一般化する可能性が出てきている。これまでは、公営ギャンブル場、宿泊施設、医療施設等が提供するものが存在したが、特定の施設に限定されないものが出現する可能性がある。Googleの無償タクシーのコンセプトであり、フリーミアムの考え方である。

7694478124_baea354b39_z

フリーミアム(Freemium)とは、基本的なサービスや製品を無料で提供し、さらに高度な機能や特別な機能について料金を課金する仕組みのビジネスモデルである。無料サービスや無料製品の提供コストが非常に小さい、あるいは無視できるため、Webサービスや、ソフトウェア、コンテンツのような無形のデジタル提供物との親和性が非常に高い。この「フリーミアム」(Freemium)という単語は、「フリー」(Free、無料)と「プレミアム」(Premium、割増)という、ビジネスモデルの2つの面を組み合わせて作られたかばん語(混成語)である。

 

 

 

関連記事

no image

「相乗り」「乗合」ライドシェア及びタクシー乗り放題制度(「タクシー定期券」)に関する大いなる誤解

2001年『モバイル交通革命』を出版したときに、乗り放題制度を提唱し、その前提にはライドシェアを置い

記事を読む

Boro Taxis(Green Cab) ニューヨーク市民の新たな足「ファイブボロー・タクシー」  ニューヨークのタクシー台数増加

かつては、車体を独特の黄色に塗装した"メダリオン・タクシー" (medallion taxicabs

記事を読む

November 4, 2016   Survey report No.4 on taxi dispatch application and tourism advertisement in New York by Japanese taxi business CEOs

◎ Taxi & Limousine Commission  In the morning, we

記事を読む

食べ放題飲み放題時間制カフェ

BBCに紹介されていました。 まだスマホは活用していないようですが、いずれスマホでタイムキーピング

記事を読む

🗾🚖シニアバックパッカー 2019年2月4~5日 チームネクストi 淡路島 Uber見学

チームネクストのUber見学に参加するため、久しぶりに淡路島に行ってきた。 大阪空

記事を読む

no image

マニラの観光・交通事情 空港バス

airport  bus という分類が新しくできている。 This was after the M

記事を読む

Conditions concerning taxis, ride sharing and car rental in Manila

As our third overseas camp, this time we went to M

記事を読む

London Car Dispatch App Report ①

8th March 2015 we arrived in London Heathrow Airpo

記事を読む

「セブンタクシーが山手線で中国語広告を出したワケ」

日経ビジネス2015年4月10日に、「セブン銀行が山手線で中国語広告を出したワケ ATMのガラパゴス

記事を読む

配車アプリー今年を総括するー総合生活移動サービスの将来

配車アプリが登場した当初はネット社会では大歓迎で、Uber等の企業評価額も天井知らずでした。欧州でタ

記事を読む

no image
2025年11月25日 地球落穂ひろいの旅 サンチアゴ再訪

no image
2025.11月24日 地球落穂ひろいの旅 南極旅行の基地・ウシュアイア ヴィーグル水道

アルゼンチンは、2014年1月に国連加盟国58番目の国としてブエノスア

no image
2025年11月23日 地球落穂ひろいの旅 マゼラン海峡

プンタアレナスからウシュアイアまでBIZBUSで移動。8時にPUQを出

2025年11月22日地球落穂ひろいの旅 プンタアレナス

旅程作成で、ウシュアイアとプンタアレナスの順序を考えた結果、パスクワか

2025年11月19日~21日 地球落穂ひろいの旅イースター島(ラパヌイ) 

チリへの訪問は2014年に国連加盟国 として訪問済み。イースタ

→もっと見る

PAGE TOP ↑