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「相乗り」「乗合」ライドシェア及びタクシー乗り放題制度(「タクシー定期券」)に関する大いなる誤解

公開日: : 最終更新日:2023/05/29 中国人旅行者増大と白タク問題, 配車アプリ

2001年『モバイル交通革命』を出版したときに、乗り放題制度を提唱し、その前提にはライドシェアを置いていた。
テーマは簡単で、貸切と乗合の相対化が始まると予測したのである。

いま、ライドシェアの実証実験が行われている。マスコミの期待を集めているから、3月中旬になると、マスコミは実験の成果に大きな興味を持つに違いない。
しかし、コメントをする経済評論家も含めてライドシェアに関する根本的な理解が不足している。「相乗り」と「乗合」の法的概念区分ができていないからである。

タクシーは法律で完全に乗合は禁止されており、抜け道はない。実験などできないのである。乗合をするのであれば、臨時であろうが、タクシーとは異なる貸切運送(俗にいう貸切バスだが、乗車定員は10人以下でもよい)の許可が必要であり、運賃も改めて作る必要があり、約款も必要となる。親子で相乗りしても、乗合を利用するのであれば、別々に運賃を払うことになる。

これに対して「相乗り」は貸切運送である。現行のタクシーがその代表である。運賃も契約も一つで、貸切契約運賃なのである。それを乗客同士がどう分け合うか、つまり割り勘方法は、利用者同士が決めればいいのである。それを、実験と称してタクシー側が勝手にお世話しているだけである。高校生が駅で同じ学校に行く生徒どうしで相乗りするのと本質は変わらない。

スマホが普及し、相乗りが組みやすくなったのであるが、道路運送法の制度が追い付いていないのである。
しかし、道路運送法だけが法律ではない。日本には旅行業法が存在し、旅行業法の募集型企画旅行制度を活用すれば、制度は作れるということを「モバイル交通革命で」2001年に主張したのである。

旅行会社が、パック旅行で、タクシー利用者を募集し、集団にしたてあげ、タクシーを貸し切ればよいのである。お花見パックツアーを旅行会社が募集し、貸切バスを借り上げて催行することと何も変わらない。車のサイズが11人以上が貸切バスで、10人以下がタクシーというだけである(運転手も含む)。今はスマホがあり、位置情報が簡単に把握できるから、実現しやすいし、海外では始まったのである。しかし、利用者の信用を勝ち得るには、車の配車能力が求められる。名古屋のつばめタクシーのように、一定地域での配車能力が必要である。
一回一回の募集にも問題があるから、月ぎめ乗り放題で利用者を募集することも訴えた。仮に五万円とすれば、利用者千人で月五千万円の収入が確保できる。労働配分率5割とすれば、2500万円であるから、月50万円の月給だとすれば、50台の車で需要が賄い切れるかという経営判断になるのである。ここには乗り放題(勿論一定区域内)概念が重要であり、いわば鉄道の定期券と同じく、一定期間内、一定区域内の乗降が利用し放題であるという、タクシー定期券の発想があるのである。こうなると、小さな事業者では実施できず、大手の配車能力のあるタクシー会社か、あるいは、旅行会社しか実施できないと思われる。

福岡でJERONタクシーが実施されているのは、この発想による。私がJTBの顧問をさせてもらっているときに、幹部社員が「モバイル交通革命」を読んでくれたおかげである。タクシー業者の声として、JTBが実施していることへの不満が、専門紙に記述されていた。既存タクシー業者が先にタクシー定期券を販売しているのだから、余計なお世話だということのようであるが、完全なる乗り放題の、鉄道と同じ定期券は、小さな事業者では実施できないことを理解しておられない。定期券とは「乗り放題」なのであり、乗り放題でなければ定期券というのは誤解を招くだけである。定期券は利用者からみれば、呼び出せば、どこのタクシーでもいいから、すぐに乗れなければならないのである。バスや鉄道が定時定路線乗り放題であるのと同じように、一定条件内は乗り放題なのであるから、歩合制賃体系のタクシーの直営では実施ししにくいのである。逆に、極論すれば、安全性が担保できるのであれば、自家用車でもいいのである。

現実は、東京のように流しと歩合制賃金体制があるところと、流し利用者が期待できず、固定給を求める労働者がいることろがある。同じ都内でも、運転者の嗜好が異なるから、システム設計が必要になる。

3月中旬になると、フラットレートではない「相乗りタクシー」に対する利用者の正直な反応が出てくるはずである。
余談は禁物であるが、利用者にとっては料金がわからない割り勘は不便であろう。バスのように最初から分かっている定額、それも均一フラット料金がわかりやすい。

そのフラット料金であるが、高すぎると利用者集まらず、安すぎると配車できず利益確保も困難であるから、やってみないと分からない。
23区内一円一回1000円なら安いから、すぐに集客できるであろう。5000円だと高すぎて、よほどうまく集客しないと利益が出ない。タクシーと同じ利益が確保できなければ、歩合制賃金の運転手さんにとっても上りが少ないということであり、配車に応じてもらえない。深夜の繁華街だとか、羽田の混雑時間帯であれば、乗合もうまくいくかもしれないが、単発の試みが成功しても、交通機関としての存在意義が小さい、それどころか、公共交通機関の利用者を奪うことにもなり、社会問題にもなりかねない。

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