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松尾豊氏の「デープラーニングの先にあるもの」を聴講して、「配車アプリ」を考える

公開日: : 最終更新日:2016/12/17 配車アプリ

本日、東大の山上会館において資本主義研究会が主催した表記講演を聞いてきた。

松尾氏の説明では、人工知能研究は1956年にスタートしており、今回で三回目のブームを迎えるとのことであった。今回が、これまでのブームを異なるのは「ディープラーニング」である。

ディープラーニングを一言で説明すると、特徴量を機械が自ら把握できるようになったことである。赤ちゃんと同じ学習をするのである。「60分の今日の講義を5分にまとめ、再度60分の講義を再現させるには、高度の特徴量をつかむ必要がある」が、これを機械ができるようにしたということである。。これにより、機械の認知能力は2015年には人間の認知能力を超えている。

 これに、強化学習が加わる。ゴルフの練習を機械が行うとき、周りの状況も機械が作るようにする。「モラベックのパラドックス」と言って子供ができることほど難しいものはなかったが、できるようになった。NHK放送技研時代に福島邦彦氏が「ネオコグニトロン」(視覚パターン認識に関する階層型神経回路モデル)を提唱しているから、デープラーニングは日本発なのである。「認識」には膨大な計算量が必要だったからこれまでできなかったが、今では可能になったのである。認知から運動そして言語である。言葉の意味を理解して、映像を思い浮かべ、また言葉に置き換える作業をするようになれば完成。予想より早くできるようになるであろう。
AI予算はデープラーニングに特化して使用すればいいのであるが、在来型の人工知能研究者が大勢いるので少ししか回ってこない。

 ディープラーニングはパターンの処理である。アンドリューバーガーが「カンブリア紀の爆発」には眼の誕生があったという。今度は眼を持った機械のカンブリア爆発が発生する。

 人間はパターンの空間処理を行っている。一秒後を予測して行動できる。トマトの収穫は人間しかできなかったが機械ができるようになる。コストのかかる作業は機械が置き換われる。「家のホテル化」がかたづけロボットの出現で可能になる。

 海外の動きが速い。2012年にスタートしたのだからたかだか3年。若い人が圧倒的に有利。企業には文化があり、エンジンを作る人が一番偉いから、情報系は一番底辺になり、なかなか企業でも受け入れがたい。ここが問題になる。

「知能」と「生命」は別である。知能には目的を与えなければならない。目的の善悪の判断は難しいが人間が与えるもの。生命は目的を持つ。進化の過程で生き残ったものである。人間の生命から知能を除くと何が残るか。社会性?どういう価値基準?フリーライダーを嫌う。人工知能は政治はできない。
人工知能が発達すれば社会主義国家になれる。どの人がどのくらい努力しているかが観察できるから、報いることが可能となる。これができないとサボっている人を排除できないからである。Amazonの現実店がレジをなくしたように、定額食べ放題料金ではなく、食べた分をキチンと把握できるようになる。課金システムが合理化できる。自動翻訳が可能になれば、日本文化と日本語のセットを崩すことができる。

自動運転になると、スピード制限が不要になる。どこでバランスさせるかが難しいが、人間が決めなければならない。

においや味覚はセンサーがあれば感知できるから情報量は少ないが、目と耳は波であり情報量が多い。「感情」は進化の過程で生まれた。「意識」は時間方向に自己を抽象化できる過程で生まれたものとする仮説、外界をシミュレーションするときに自己をその中に入れて抽象化する過程で発生したとする仮説等があるといわれている。

人工知能のこれからの制約は、データの集積である。1000万のラベル付きのデータを集めれば人間と同じレベルになる。学習工場である。このデータ集めがボトルネックになる。ロボット系の人はディープラーニングが嫌いな人が多かった。ハードウェアやコストで嫌っていた。
子供はデータがないので冒険をして学んでいく。ロボットも同じで、最初は冒険をするが徐々に学習効果が出てくる。人間は「進化による作り込み」だからAIとは別である。

金融は眼を使わないのでデープラーニングとは関係が薄い。

トヨタはシリコンバレーの1000億投資した。トップが思い込みで早く動くところができるのである。Uberの配車アプリは膨大なデータ収集を行うことにつながる。自動運転開発に、世界中で収集しているuberやGoogleのデータは金の宝ということになる。トヨタのトップは自動運転車にはデープラーニングが必須であり、デープラーニング自体は難しくなくても、自動運転車がもつ認識力の開発には、車を運転するということのデータを収集することが必要であり、それがコスト等を含め制約となることに気が付いているのであろう。

このことに気が付いているトヨタとは異なり、日本のタクシー業界は、トヨタがUberに出資したことに過剰反応をした。Uberの配車ビジネスの収益を期待してのものでないことぐらいはわかりそうなものである。日本のみならず世界のタクシー業界は自らが毎日関与しているデータが、自動運転車の認識システム開発には宝の山であることがわかっていないから自から配車アプリの推進を行うことなど考えもしないのである。

なお、人間の認識は、錯覚のコーナーでも紹介したように、人間に都合よくできている。自動運転車は人間の目と同じでよいのか、あるいは別のセンサーを多用したシステムにするのか、多分後者であろうから、道路側からも多くの信号を発信する必要があるのではないだろうか。自動運転車は一種のサイボーグになるのであろう。

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