*

配車アプリー今年を総括するー総合生活移動サービスの将来

公開日: : 最終更新日:2023/05/20 ライドシェア, 配車アプリ

配車アプリが登場した当初はネット社会では大歓迎で、Uber等の企業評価額も天井知らずでした。欧州でタクシードライバーによる反対デモが始まりましたが、その時点ではネット社会では味方もいました。風向きが変わってきたのはインドでのUberが配車した車の運転手によるレイプ事件あたりからです。配車アプリ会社幹部の個人情報の不正使用事件や自家用車による白タク行為も批判を浴びるようになりました。今度は弱り目に祟り目で、ネット社会では配車アプリの問題点を指摘する声が大きくなっていますから、企業評価額にも影響を及ぼすでしょう。

結論から述べますと、私は車の有効活用の観点から自家用車も含めてアプリによる配車には賛成ですが、配車アプリが配車アプリ段階でとどまっている限りは、無線タクシーと本質は変わらないと思っています。東京のように「流し営業」で十分にサービスが供給されている地域では、ベテランドライバーの暗黙知を上回るアプリの登場はあまり期待できないでしょう。

しかし、タクシー利用者の動きをビックデータとして人流の観点から活用する視点でとらまえてみると、見え方が大きく変わります。ドライバーの頭の中に人流データがある限りビックデータにはなり得ません。利用者の属性等を基に地域における人流データが分析できるようになれば、呼ばれる前に「お迎えにゆく」どころか、コンサートのチケットの手配からレストランの予約までそれこそ総合生活移動サービスが提供できるようになります。さしあたり月極め定額乗り放題制度を提唱していますが、更に移動料金は無料にして、車内空間におけるコマーシャル提供、買物先からの紹介料で原価が償えるビジネスモデルも構築できるかもしれません。

GoogleがUberに出資したねらいもそこにあると思っています。ある都市の住民の人流情報を把握できれば、ビジネスとして次の一手が打てます。自家用車やタクシ車両の有効活用による利益確保程度で、Googleが乗り出してくるとは思えないからです。2007年にGoogleはGoogle Ride Finderを立ち上げています。このころから人流情報に着目していたと思います。

JTBをはじめ日本の旅行業者は収益率の低い旅行商品の販売に苦労していますが、その原因を私は「原価が見える」からだと思っています。一回一回の旅行ではなく、生活全体の人流の手配を引き受け、単位移動だけではなく全体の中で利益を確保するビジネスモデルが考えられないかと思っています。ウェアラブルコンピュータ、人工知能と言ったツールを使いこなし、一方では、物理的な車や部屋を抑え、しかも車も部屋もきちんと商売になるように管理できるビジネスです。これを総合生活移動産業だと言っているのです。

 

関連記事

London Car Dispatch App Report ⑤ Uber

  We reserve the Uber from tablet.  

記事を読む

no image

ブロックチェーンと白タク、民泊シェアリングエコノミー 『公研』2018.12.No.664 江田健二×大場紀章 を読んで考える

白タクや民泊は、絶えずその有償性が問われて、既存業界の攻撃の的になる。無償であれば全く問題がない

記事を読む

no image

『日本のタクシー産業』(太田和博等編著)の読後感想 

表記著作物は日本交通学会で表彰されており、目を通してみたが、 タクシー協会関係者を交えた勉強会をも

記事を読む

沖縄の中国人レンタカー報道

日本政府観光局(JNTO)が2016年6月20日に公表した訪日外国人のレンタカー利用状況に関する資料

記事を読む

ニューヨークのタクシーから予測すること ロボットタクシーよりも外国人運転者

VOAのニュースで、2016年4月の市議会で、外国語で与えられるべきタクシーライセンスを取得

記事を読む

配車アプリの話題と将来  Hailoと提携しているナニワ交通を訪問して

○巨額投資を呼び込む配車アプリ会社 タクシーアプリが話題になっています。Hailo等はロンドン

記事を読む

🗾🚖シニアバックパッカー 2019年2月4~5日 チームネクストi 淡路島 Uber見学

チームネクストのUber見学に参加するため、久しぶりに淡路島に行ってきた。 大阪空

記事を読む

事業所管官庁と規制官庁 グレーゾーン解消制度の運用に関する感想

若いころ、運輸省大臣官房情報管理部情報処理課に勤務した。当時から何をしているところですかと聴かれ困っ

記事を読む

自動運転車の問題 BBCが伝えること driverless-taxis-human-problem

BBCで面白い記事が出ていた。driverless-taxis-human-problemと題する自

記事を読む

no image

🌍🎒 🚖シニアバックパッカーの旅 2019年9月11日 チームネクスト 清華大学やDiDiで考えさせられた無人運転車

筆者の参加しているタクシー事業者等の研究グループ(チームネクスト)で、恒例の海外視察に参加した。

記事を読む

no image
🕌🎒2025シニアバックパッカー国連加盟国192か国達成の旅 計画作成

国連加盟国192か国を訪問するという計画も残り4か国となっている。その

no image
🌍🎒2024シニアバックパッカー南極太平洋諸国の旅 福建省(24番目)厦門

中国渡航にビザが必要な段階で計画したので、金門島から廈門に渡る

🌍🎒シニアバックパッカー南極太平洋諸国の旅 台湾省🏳‍🌈 金門島

  昨夜桃園空港から台北駅に鉄道で移

no image
🌍🎒シニアバックパッカー南極太平洋諸国の旅 台湾省🏳‍🌈 台北

国連加盟国第一か国目は中国。1970年に香港、台湾と旅行した。当時は、

🌍🎒2024シニアバックパッカー南極太平洋諸国の旅 パラオ共和国(国連加盟国188か国目)

    2024年12月4日早朝マニラから

→もっと見る

PAGE TOP ↑