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チームネクスト・ロンドンタクシー事情調査にあたって

公開日: : 最終更新日:2016/11/25 配車アプリ

○ ロンドンタクシー事情調査

3月中旬にチームネクストの事業として、ロンドンのタクシー事情を調査する予定が進んでいます。参加者の関心事はそれぞれ異なりますが、受けてのHailo、Uber等のかたがたは日本のような単なる調査という感覚ではお付き合いいただけません。先方からは実務的な話し合いが進展することが期待されています。

私のこれまでの海外調査の経験では、事前調査がしっかりできていないとほとんど成果が得られないと思っています。ロンドンのタクシー制度等について詳しくわかっている人に会えるかどうかだけでも左右されます。またそれ以前に、問題意識が明確でないと日本と英国で仕組みが違いますから、双方の問答が頓珍漢なことになりかねません。ましてや通訳を交えての話になりますと、通訳の能力に大きく作用されます。

ロンドンのタクシー事情を知るうえでは、その前にロンドン全域の都市事情を知る必要があります。

○  ロンドン都市事情

CNN(http://www.cnn.co.jp/world/35059870-2.html)によれば、「 英首都ロンドンの人口が、過去最多だった1939年の860万人を突破した。ロンドンの人口は第2次世界大戦を境に50年あまり減少を続けた後、25年ほど前から再び増加に転じていた。人口増加が続くロンドンの特徴を示す次の7点を見てみよう。1.人材の流入 欧州の金融中心地として、ロンドンには毎年高いスキルを持った数千人の移民が流入する。2.経済発展 ITやクリエイティブ業界の発展、金融業界の回復、住宅市場の活況がロンドン経済の成長を支えている。3.ビッグマネー ロンドンに住む億万長者は世界の都市の中で最多の72人。モスクワの48人、ニューヨークの43人を上回る。4.住宅の高騰 富裕層の流入により、ロンドンの不動産市場規模はブラジルの国内総生産(GDP)に匹敵する規模に成長した。5.市内の移動 人口増大で公共交通機関への負担は増している。市内での移動数は1日当たり2400万。多くは混雑した地下鉄を利用する。6.今後も成長 人口はさらに増え続け、2021年までに900万人、2050年までに1100万人に達する見通し。7.世界との比較 1939年のロンドンは世界最大の都市だった。しかし現在は世界のトップ10にさえ入っていない。」と報道されています。

道路に関してはロンドン交通局が作成した「OUR PLAN FOR LONDON’S LOADS」https://www.youtube.com/watch?v=qL02__XuUfIの動画がわかりやすいでしょう。オリンピック以降ロンドンの発展は目覚ましいものがあり、人口も増加傾向にあります。Uberの幹部が “街を変える。それは第三のレールだ” といっているように、ロンドンの発展はその移動の確保も重要性を増しているのでしょう。なお、上記の動画でも道路工事情報をリアルタイムでITを活用して伝達すると紹介しており、後述するようにタクシードライバー試験制度がこのITをとりいれていなことに違和感を覚えます。

ロンドンのタクシードライバーライセンスは法令と地理の知識を重視しているのですが、ハイテク機器の活用を前提としてません。数年かけて体で覚えなければ試験を合格できない運用になっています。私は、ロンドンのタクシーサービス提供に制約があればるほど、ロンドンの都市としても発展に支障が出るのではないかと思っています。Uber等の位置情報アプリを駆使すれば簡単に運転できる時代であり、いずれロンドンのタクシー試験制度の在り方もみなおされるのではないかと思っています。

ただし、You-Tubeに面白い動画アップされています。カーナビとブラックキャブ運転手の競争で、後者の勝ちというストーリーです。さしずめプロの棋士と将棋ソフトの勝負みたいなものですが、これからは確実にITが進歩してゆくでしょう。

 

 

○ロンドンタクシー事情

ロンドンのタクシー制度が日本と大きく異なる点は次の3点だと私は思っています。一点目は、日本のタクシー行政は国の行政ですが、イギリスはロンドン交通局(TFL、具体的にはThe Public Carriage Office (PCO) )という自治体行政である点です。二点目は、ロンドンのブラックキャブは日本で言う個人タクシーが中心で、ドライバーランセンスが重要であるということです。東京のような大手タクシー会社が車両を保有して運転手を雇用しているという感覚でみると大きな間違いを犯します。三点目は、ブラックキャブ(23000台)の他にミニキャブ(約53000台)に代表されるような自家用自動車の有償運送制度が発達しているということです。ちなみに東京のタクシー台数は約45000台です。

① タクシードライバー免許制度

ロンドン交通局は情報公開制度が進んでいますから、必要な情報はほとんどHP(http://www.tfl.gov.uk/modes/taxis-and-minicabs/)で入手できます。私のHP(http://www.jinryu.jp/category/lecture/ubiquitous/london)にも解説してあります。わかりやすいのは四篇のYOU-TUBEの動画でしょう。ライセンスにはグリーンバッジとイェローバッジがあり、前者はロンドン全域ですが、後者は郊外の地域限定です。

タクシー需要を生み出すロンドンと東京の都市構造の大きな違いは都心集中度の違いですが、これからは東京もパリほどではないにしても、ロンドンのように都心集中が進むのではないかと思われます。そのことが東京のタクシービジネスにも影響を与えるでしょう。

ブラックキャブのドライバーライセンス取得には、ロンドン交通局の資料によれば、かっては50カ月以上かかっていたようですが、動画の中では2年程度で取得できると語っています。いずれにしろ東京の感覚からすれば資格取得に時間がかかっていますから、参入障壁になっていることは間違いないでしょう。その分タクシードライバーの所得が高くなることが、別のレポートでも示唆されています(東京都タクシー協会レポート(未発表))。ロンドンのタクシーは東京で言えば個人タクシーによって維持されていると考えて間違いないでしょう。従ってHailoやUberのタクシーアプリのセールスもドライバーに対して行われているのでしょう。日本のタクシー企業経営者(ロンドンではa taxi proprietorに相当)が、HailoやUberの経営者にアプローチする場合に、この事情の違いを認識しておかないといけないでしょう。

② 自家用運送であるminicabの存在

minicabは、Private Hire Vehicles (London) Act 1998により誕生しました。 ロンドン交通法の隙間(a loophole in the law) から誕生したと報告されています(although in some areas it is possible to hold a dual hackney/private hire licence)。法の隙間からの誕生の経緯が日本の乗合タクシーと同じであるところが面白いです。法令、条例を読み込まないと理解できない部分であり、英国においてもこの点を正確に説明できる人はそれほど多くないでしょうから、これからもあきらめないで調査を継続する必要があります。資格のないminicabが存在し、ロンドン交通局のHPでは利用者に対して注意喚起する動画が掲示されています。またタクシー乗り場(taxi rank)も掲示されています。流しが制限されていることの裏返しでしょう。

配車アプリはブラックキャブを中心に導入されましたが、車庫待ちのminicabの利用も当然予想されることであり、Uber等も利用するようになっていったことから、報道されているような反対運動が発生しました。流し営業(street hiring)ができるタクシメータの使用はブラックキャブにのみ許されていますが、配車アプリもこのタクシーメーターに当たるとブラックキャブは主張しています。ロンドン交通局の対応はHailo等の配車アプリを認めてきましたから、当然配車アプリはタクシーメータには該当しないという判断をしているのでしょうが、最終的には司法の判断となるのでしょう。ロンドン交通局のHPには、minicabも参加している配車アプリを掲示しています。

注)ブラックキャブは、Hackney and Stage Carriages Law を改正したMetropolitan Carriage Act 1869(ブラック・キャブ規制法)により存在してします。

注)Private Hire Vehicles (London) Act 1998 では、 “private hire vehicle” means a vehicle constructed or adapted to seat fewer than nine passengers which is made available with a driver to the public for hire for the purpose of carrying passengers, other than a licensed taxi or a public service vehicle; and (b) “operator” means a person who makes provision for the invitation or acceptance of, or who accepts, private hire bookings. とあります。わかりづらいのですが、免許を受けたタクシーと公共交通の乗り物(乗合バス)以外の、定員9名以下の運転手つきの乗り物でだれでも利用できるものを “private hire vehicle“と定義していますから、さしづめ日本では有償許可を受けた自家用自動車が該当するでしょう。

注)Private Hire Vehicles (London) Act 1998 では、4.—-(l) The holder of a London PHV operator’s licence (in this Act Obligations of referred to as a “London PHV operator”) shall not in London accept a London private hire booking other than at an operating centre specified in his operators. licence. とありますから、流し営業ができないこととなっています。疑問点は予約はオペレーションセンターで受けるにしても、車自体はどこにいてもいいのではないかという点です。

③ タクシ配車アプリ企業の法的性格

UberやHailo運営企業が運送事業のライセンスが必要か否かという議論がありますが、ロンドン交通局はテクノロジ―プラットフォームであり不要と考えているようです。Uberにより配車されたタクシーに関し、インドではドライバーの強姦事件をめぐり話題になりましたが、ドライバーの不法行為責任(主に交通事故でしょうが)まで負うものではないでしょう。日本Uberは、旅行業法の手配契約として営業していますから運送責任を負うことはありません。

Hailo等はおおざっぱに「サードパーティ」といわれていますが、サードパーティが経済的に支配しているものの、利用者に対しては契約者として対応しないことが、これから社会的問題となる可能性がでてきます。わが国のパック旅行では、旅行業者が旅程保証責任と特別補償責任を約款上負うことでの解決を図っていますが、これからは配車プリについて同様の解決方策が探られることになるのではないでしょうか。これらの問題点は極めて重要ですが、おそらくロンドンでは、損害賠償制度等がことなり、これらの点の意見交換ができることにならないと思われます。

④ 乗合タクシー

私のブログの別項で「乗合と貸切」の記述をさせていただきましたので、問題点はそこを読んでいただくとして、ロンドンでは、Uberへの対抗上ブラックキャブは配車アプリのMaaxiと提携を始めました(情報はHPのMaaxi情報(準備用))。乗合用の運賃表はロンドン交通局のHP(ロンドン相乗りタクシー運賃表)に掲載されています。ITをとりいれている点では日本のタクシー行政より進歩しているようです。Hailo、Uberにおいても乗合タクシーを実施ないのか、実施しないとすればその理由は何か興味があります。

⑤配車アプリの競合

ロンドンのドライバーは複数の配車アプリを利用することが可能のように思われますが、優先度はつけているのか不明。

⑥国際提携

ロンドンの配車アプリは、東京でもインストールが可能です。しかし、電話番号等の入力に、例えばAddison Leeですと+44から始まるように設定されており、日本での登録ができない場合があります。Maaxiも同様。

東京オリンピック時に、海外からの観光客が自国で利用していた配車アプリをそのまま旅行先の日本で利用できると便利であり、また顧客獲得の強力な武器になると思われます。

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