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シニアバックパッカーの旅 ロンドン配車アプリ調査④ Addison Lee社における配車アプリ

公開日: : 最終更新日:2023/05/26 シニアバックパッカーの旅, ライドシェア, 配車アプリ

Addison Lee社ではCOOのMS. Catherine Faiers氏から説明を頂いた。

Addison Leeはジョングリフィンが1975年に1台からスタートした会社であり、他の会社を買収して大きくなり2千台になった時に現在のロゴに統一ものである。PHVでは初めてであった。現在は4500台を配車する規模となっている。2013年にカーライルグループが海外展開のためAddison Lee社を買収し、2014年にはニューヨークに進出した。アジア進出も将来は考えているとのことである。

 

AddisonLeeの資料(人流・観光研究所HPに掲載)によれば、ロンドンの市場はB2B市場が6割とB2C市場を上回っており、B2C市場においてもミニキャブが6割とブラックキャブの4割を上回っている。我が国の統計との比較が必要との認識を深くしたところである。

日本のタクシー事業者がロンドンを視察するのであれば、個人タクシーであるブラックキャブを視察しても企業経営の参考にならないことは当然であり、むしろ企業経営の観点からはAddison Leeに代表されるミニキャブ会社を視察したほうが得られるものは多いであろう。資力のない自家用運転手に車を貸与し、運転技術を伝授し、電話やパソコン、配車アプリ等により利用者をアレンジする企業形態は、日本のような運転手を雇用する形態ではないものの、経済社会的機能はほぼ同じであると思われる。特にスマホが導入されてからの国際展開ぶりは、日本のタクシー企業にとってみならうべきものが多く、狭い国内事情にのみ汲々としている状態では、これからの国際観光市場において取り残されるのではないかとの印象を強くしたところである。

Addison Lee社は年間8百万回配車している大手の企業である。同社からは丁寧な資料を頂いたので、人流・観光研究所HPに掲載しておく。コールセンターは300人部隊の強みを発揮し、4割はコールセンターからの配車、2割はパソコン、残り4割がスマホ配車である。配車のアルゴリズムはB2Bを優先している。配車ソフトではなく人間が直接行うことが1%程度あるが、そのあと手直しをしてアルゴリズムに反映させている。いずれ人間ではかなわないソフトが誕生するであろう。

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写真にもあるように流し営業は認められていいないにもかかわらず、車はロンドン全域に配置されている。RANKと呼ばれるタクシー乗り場でも待機している。配車を受けた時点で顧客が乗車する場所から目的地までの料金が確定しているということは、顧客にとってもメリットが多く、近代的経営ということができる(企業顧客との契約で時間制の場合もあるが金額は事前に確定している)。日本のタクシー営業も見習うべき点ではなかろうか。

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運転手は個人事業主であるが、会社としてスキルアップの機会を伝授している。企業向けの配車の場合、ナビ入力しなくても目的地まで到達できる知識があったほうが顧客の印象が良くなり望ましいのである。運転手を研修するノレッジプールでは四分の一位が合格する。不合格者は再訓練して試験を受けてもらう。試験に当たっては英語力、地理知識 カスタマーサービスを学んでもらう。運転手の年間収入は年間3万ポンドで悪くはない。外国人が80%である。女性はほとんどいない(25名)。平均年齢は46歳である。このあたりが外国人労働者を受け入れられるロンドンの都市力であり、東京の場合日本語の問題で立ち往生してしまうかもしれない。

運賃収入額の6~7割が運転手の取り分である。残りは配車手数料、車のレンタルフィー等として会社が得ている。ガソリン代は運転手もちである。車はあくまで自家用車であり、運転手は自宅までそのまま乗って帰る。法人企業とは270社契約しており、運賃を一般顧客と比較して3割くらい安くしている。法人向けに割引した運賃は、運転手には影響しないように配布計算している。

CLASSIC Galaxy5千台 EXECUTIVE CARS250台 chauffeur CARS 30台等を保有しており、付帯事業として、International CAR JOURNEY, luggage Forwarding等も行っている。

なお、日本では運転手派遣形態が普及している。車両は派遣先企業の所有となっているのであるが、ロンドンでは車両は配車会社が保有し、運転手は個人事業主として従事させているから、日本と異なり、混雑時にこの車両を他へ流用しやすいわけである。

なお、Addison Leeの車体(下記写真)に書いてある“We also deliver people”はまさに人流の発想であると意を強くした次第である。IMG_2367

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