*

ロンドンのミニキャブは自家用か営業用か? Uber論争を通じて

公開日: : 最終更新日:2023/05/20 ライドシェア, 配車アプリ

○ロンドンのUber 

事実関係は不明ですが、minicabの手配をUberは実施しており、minicab(Private Hired Vehicle)を自家用車とBlack-cabは見ています。その理由は、ミニキャブを規制しているPrivate Hire Vehicles (London)Act 1998において、「 “private hire vehicle” means a vehicle constructed or adapted to seat fewer than nine passengers which is made available with a driver to the public for hire for the purpose of carrying passengers, other than a licensed taxi or a public service vehicle」と定義しているからでしょう。

しかし、タクシーアプリによって配車されることのできる車がライセンスのあるブラックキャブに限定されるとする主張には無理があります。電話や無線で配車される場合と本質的な違いは見出せませんから、ロンドン市長(交通局)も、そのことがわかって対応しているようです。

○ミニキャブ登場以前のロンドンのタクシー事情

トラモンド2003年5月26日号(http://tramondo.info/old/kaiten030526.htm)にミニキャブ登場以前のロンドンのタクシー事情が報告されています。「問題は、ブラックキャブとして日本人にもなじみのある正規タクシーのほかに、ミニキャブという“流し”禁止の安いタクシーの取り扱いであった。従来、きちんとした登録制度もなく運行されていたようで、悪質な営業が新聞種にもなり、旅行者には要注意としてほとんど使われていなかったものである。しかし、ロンドンでは正規タクシーの約2万台に対して、少なくともその2倍以上、4万台以上が主に中心部の外側で運行しており年間7000万人と、タクシーの8500万人に劣らず多くの市民が利用していると推定されている。ロンドン市長はミニキャブについて新たに、事業者、車両、運転者の登録制度を導入し、この3種の資格すべてを満たすミニキャブは安心して使える交通手段で、公共交通手段のひとつとして認め、正規タクシーと同様に課金(注)対象としないことにした。詳細な規定では、乗客の乗車中に限定しており、正規タクシーに比べてより厳しい条件が付いている。このようなロンドンでの検討経緯をみると、ロードプライシングにおけるタクシーの取り扱いは、それぞれの都市で、その役割の実態、免除等が課金目的に与える影響、そしてその執行の難易など、個別の検討が極めて重要であることがあらためて分かる。」と記述されています(寺前注 課金とは混雑時にかけられるもの)

○ロンドンのミニキャブ誕生

戸崎肇著の「タクシーに未来はあるか」(学文社2008年)によれば、近藤順夫「ロンドンのバス・タクシー事業」トラモンド新春特別号「日本のバス・タクシー2007」からの引用として、ブラックキャブに関して「ロンドンの場合、このように試験が相当難しく、質的規制が厳しすぎてタクシー運転者の供給が十分でなく、呼び出してもかなり待たされるといった問題も生じている」とし「その結果、ミニ・キャブといった、割安であり、かつ営業する側も特別な試験を受ける必要がないものが年々増加傾向にある。ミニ・キャブの場合には、TAXIの表示はできず、路上でお客を拾うこともできない電話やインターネットを通じて呼ぶのが原則となっている。料金は事前交渉で決まる。このミニ・キャブに関しては、副業で運転をしているものが多く、一時犯罪が多発したことから、最近では取り締まりが強化され、事態は改善している」と記述しています。

○日本の自家用車の有償運送の許可

日本においても、道路運送法に自家用車の有償運送制度があります。営業用運送サービスが十分に提供されない場合に許可されるものですが、制度改正により、基礎自治体等に権限が委任されました。

ロンドンのミニキャブがライセンスがないということを論議しているようですが、日本のように自家用車が有償運送の許可を受けて営業していると認識すれば済むものでしょう。ロンドンの場合ブラックキャブサービスの供給が不足していると利用者からの声が大きくなって成立しています。日本の場合も道路運送法の権限が地方自治体に委譲されていれば、ロンドンのミニキャブに匹敵するものが成立する可能性があるということですが、現在のところは減車が話題になるくらいですから、その心配はなさそうです。

関連記事

no image

生産性向上特別措置法(規制のサンドボックス)を必要としない旅行業法の活用

参加者や期限を限定すること等により、例えば道路運送法の規制を外して、自家用自動車の有償運送の実証実験

記事を読む

November 4, 2016   Survey report No.4 on taxi dispatch application and tourism advertisement in New York by Japanese taxi business CEOs

◎ Taxi & Limousine Commission  In the morning, we

記事を読む

本山美彦著『人工知能と21世紀の資本主義』 + 人流アプリCONCURの登場

第6章(pp149-151)にナチスとイスラエルのことが記述されていた。ヤコブ・ラブキンの講演を基に

記事を読む

<中国人白タク>横行も検挙困難…スマホ決済で 数千人登録 8/27(日) 9:00配信 毎日新聞

下記記事がようやく一般紙でも出てきたが、既にブログで数回紹介した通りである。取引が中国内で完結してい

記事を読む

no image

マニラのUber報道 Number of Uber, Grab vehicles shocks LTFRB

http://newsinfo.inquirer.net/919650/number-of-uber

記事を読む

no image

旅行業法の不思議③ 「旅行業務取扱料金」と「定額タクシー料金制度」

旅行業務取扱管理者試験では、「旅行業者は料金を定め観光庁長官の認可を受けなければならないか否か」とい

記事を読む

no image

パブリックコメント「道路運送法における登録又は許可を要しない運送の態様について」の一部改正に関する意見公募について

道路運送法の有償性に関する事務連絡の改正が検討されており、パブリックコメントが募集されたので、応募し

記事を読む

no image

『高度人流社会を迎える配車サービスの動向』 WEB観光政策フォーラム(https://www.kankou-seisaku.jp/)視点(2月)原稿

スマホに目的地を入力するとたちどころに経路と時間が表示される。高精度GPSが装備され、Wi-Fi

記事を読む

no image

広告だけに収入を求める無償タクシーの報道

https://news.nifty.com/article/economy/business/12

記事を読む

乗り放題航空サービスの記事

乗り放題航空サービスがonegoにより始まった。過去にもこの種のサービスが行われてきた。日本でも全日

記事を読む

no image
2025年11月25日 地球落穂ひろいの旅 サンチアゴ再訪

no image
2025.11月24日 地球落穂ひろいの旅 南極旅行の基地・ウシュアイア ヴィーグル水道

アルゼンチンは、2014年1月に国連加盟国58番目の国としてブエノスア

no image
2025年11月23日 地球落穂ひろいの旅 マゼラン海峡

プンタアレナスからウシュアイアまでBIZBUSで移動。8時にPUQを出

2025年11月22日地球落穂ひろいの旅 プンタアレナス

旅程作成で、ウシュアイアとプンタアレナスの順序を考えた結果、パスクワか

2025年11月19日~21日 地球落穂ひろいの旅イースター島(ラパヌイ) 

チリへの訪問は2014年に国連加盟国 として訪問済み。イースタ

→もっと見る

PAGE TOP ↑