「満州を旅した女性たち」ジャパンナウ観光情報協会セミナー 駒澤大学准教授高媛氏の講演
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最終更新日:2023/05/28
ジャパンナウ観光情報協会
2016年7月11日 海事センタービルで表記の講演会を行った。高氏の論文はかねてより読ませてもらっており、観光政策を論じられる数少ない学者であると思っていたが、お目にかかるのは初めてであった。氏のテーマは観光と政治であるから、まさに政策が語れるのであるが、日本人研究者の中には、政策と政策以外のことを混同して論じる者が数多く見受けられ、高氏の論文を日本人観光研究者がもっと多く読むことを期待するものである。
高氏のホスト・ゲスト論はこのブログでも何度も取り上げてきたのでくりかえさないが、昨日の講演内容も基調にはそのことがあった。日本人の数に比較して圧倒的に多いはずの中国人の目から見た大連の描写を、高氏は女性文化人等の口を借りて説明されていた。日本人女性文化人が満鉄スポンサーで満州旅行をしていたことは承知していたが、彼女たちが帰国後、中国人の目から日本人を見る姿勢で批判的に記述してたことには改めて驚いた。考えてみれば与謝野晶子は日露戦争時「きみ死にたもうなかれ」の歌を詠んでいる。満鉄も細かい報道チェックをするスタンスでなかったことが、彼女たちの記述を可能としたのであろう。結果的に貴重な資料を残すことになったわけである。日本中が狂気の沙汰になったのはもう少し時代が後のことでもあったから、女性だけではなく男性にも同じ考えの者もいたであろう。
高氏から「観光・民族・権力 近代満州における「娘々祭」の変容」と題した論文をいただいた。民俗行事である「娘々祭」を満鉄が運賃割引等政策的に活用して民衆の心をつかもうとしたことが題材になっている。当然中国人の反日政治勢力からは警戒の目で見られた。政治と観光を研究する者には大変貴重な資料である。この民俗行事の「娘々祭」が現在でも中国東北部で実施されているのか知りたいところでもある。
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