ジャパンナウの今後の原稿 ロボットと観光
公開日:
:
最終更新日:2023/05/28
ジャパンナウ観光情報協会
「変なホテル」が話題になっている。ロボットがフロントで出迎えるからだ。練れていないネーミングであるが宣伝効果としては成功なのであろう。
他の行動を見てまるで自分が同じ行動をとっているかのように”鏡”のような反応をするミラーニューロンが発見されて久しい。サル等にもある共感という現象も、このミラーニューロンによるものであり、「意識」が生まれた進化の歩みの一部が解明されたとされる。すなわち、他人に心があると仮定する能力の副産物として自分の心ができたという「心の他者起源説」である。
ロボットも人間を学ぶことにより、人間へとたどった進化の道を歩むことが考えられる。しかし、ミラーニューロンだけでは、ロボットの進化は期待できないようだ。
パブロフの実験で有名な連合学習等の能力を使えば、一つの記号と一つの対象の結びつきを学習することは動物でもできる。下等な動物ほど記憶が正確であり、つまり融通がきかず、一回覚えた記憶はなかなか消えないのである。
これに対して人間の脳は、記憶は他に例がないほどあいまいであるが、それこそが人間の臨機応変な適応力の源泉にもなっている。このあいまい性を確保するために脳はゆっくり学習している。学習をゆっくりすることで特徴を抽出する。学習スピードが早過ぎると特徴の抽出ができない。
周りの環境は動物にその意味を与える。与えるという意味からアフォーダンスというが、そのアフォーダンスに対して活動する神経細胞であるカノニカル・ニューロンも発見されている。アフォーダンスには記号操作は必ずしも必要ではない。他人の身体と自分が相互作用する物体のそれぞれを認知するシステムが備わっているのである。
優秀なロボットにはカノニカル・ニューロンが必要である。 我々は通常6万の語彙を持っている。この膨大な数の単語をお互いの関係まで含めて、ほとんど他の人から教わることもなしに心内辞書を作成してしまう。「嫌い嫌いも好きのうち」と理解するのは奇跡的な出来事であるから、当分の間、すべてをロボットに奪われることはないであろう。
関連記事
-
-
デジタル化と人流観光(ジャパンナウ観光情報協会原稿)
ジャパンナウ3月号1400字原稿 デジタル化と人流・観光(1) 通信の秘密が大日本
-
-
JN原稿 観光資源反応譜(音譜に相当)の作成 観光資源の進化研究手法
利己的遺伝子の理論がドーキンスによって提唱され話題になった。社会現象の進化のプロセスを遺伝子の視
-
-
「衣食足りて礼節」をあらためて知る(2014年5月)
クールJapan戦略のため日本社会のCOOLな部分が取り上げられる機会が多くなりました。中国製品との
-
-
JN原稿 言語と二元論
人類は二足歩行により手を獲得したが、骨盤が発達し難産になった。石器が使用できるようになり、出産に協
-
-
🌍👜シニアバックパッカーの旅 ⑨ ジャパンナウ観光情報協会9月号原稿 ミャンマー散骨旅行記(2)
ヤンゴンはこれから高度経済成長期を迎える。1970年初めて渡った時の香港に感じが似ていた。宿泊したホ
-
-
ジャパンナウ第百号原稿 中国を中心とした観光社会の予感
ジャパンナウ観光情報協会の情報誌も今回で百号になります。私も「NPOから提言しま
-
-
「満州を旅した女性たち」ジャパンナウ観光情報協会セミナー 駒澤大学准教授高媛氏の講演
2016年7月11日 海事センタービルで表記の講演会を行った。高氏の論文はかねてより読ませてもらって
-
-
ジャパンナウ2019年1月号原稿 ホーキング博士とローマ法王
人流・観光は意識に対する刺激により発生し、最も強いものが死に関するものであるから、戦跡や虐
-
-
🌍🎒ジャパンナウ原稿「アフリカ大陸中南部の旅行から見えたもの」
2月の10日から27日までアフリカ大陸中南部の14か国を駆け足で旅行した。航空機の予約はGoog
-
-
🌍👜台湾のこと(高寛氏の講演)
台湾協会の理事高寛氏の話を聞いた。元三井物産台湾支店長を務めた方である。若い頃、中国語を教えてもらっ
