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JN原稿 視覚情報を解釈する脳

公開日: : 最終更新日:2023/05/29 ジャパンナウ観光情報協会

生物に目という臓器ができて、進化の過程で人間にも目ができあがって、宇宙空間を飛んでいる光子を目で受け取り、その情報を解析して認識し、解釈できるようになって、はじめて世界が生まれた。世界があってそれを見るために目を発達させたのではなく、目ができたから世界が世界としてはじめて意味をもった。

 外の世界は「目」を通して第1視覚野に写し取られ、そのあと、色に反応する第4視覚野や動きを見る第5視覚野に信号が送られる。第5視覚野が壊れると動いているモノが見えなくなってしまう。止まったボールは見えるけれどもボールが動くと見えなくなる。

「見える」という時間的秩序は、知覚内容を外部の物理的実在の一様な前向きの時間進行に関連づけて理解するために、我々が押しつけたものである。この時間順序の逆転は、目が見えることの代償として発生。皮膚受容器からの信号や網膜の視細胞からの信号を、手や目の動きを考慮に入れて「視覚空間」に統合するための代償として、時間の流れが犠牲 イチロウは、物理的に球を見たと意識してからでは、時間計算上間に合わないはず。視覚に合わせて時間の流れが逆転してしまうように感じる。

「見る」とは、ものを歪める行為(一種の偏見)である。二次元で網膜に映ったものを脳が強引に三次元に再解釈する。我々は脳の解釈から逃げることはできない。「見える」というクオリアは脳の不自由な活動の結果である。これは脳の宿命である。

 だから、見る、という行為はおそらくは人間の意識ではコントロールできなくなってしまっている。網膜の上には多くの毛細血管が走っているので、その部分は血管が邪魔で見えないはず。それでも見えるのは、血管で見えていない陰の部分に周囲の情報を埋め込んでいるから。目で見た情報は欠陥だらけで、脳がそれを(無意識的に)補完している。色を感じる細胞は、網膜の中心付近に偏っている。実際は、視野の中心のごく狭い範囲しか色が見えていない。「見る」という行為はほとんど無意識の行為であり、目に入った光をどう解釈するかというのはあくまでも脳が非意図的に行っている。「見る」というのは受動的な行為。人間の行動の中で意識してやっていることは意外に少ないし、人間の行動のほとんどは無意識かもしれない。

 意識を考えるとき、時間に対して通常の物理的法則を適用するのは実は大きな誤りを犯している。意識は、とにかく時間がそれに従って「流れる」必要のあるものとして我々が知っている一つの現象なのである。錯視のメカニズム、視覚のメカニズムが数式レベルで解明されるようになると、視覚を効率的に活用した観光資源化や街づくりが可能となる

人は「感覚」 により意識を持つようになったのである。そして、「意識」が成立するに は自己言及つまり、記憶・時間という言語概念を必要とする。「自己意識」 とは、錯覚であり実体はない。また、「意識」とは、言語による偽りの実 体を創り出すメカニズムである。そして、錯覚であることを隠蔽せざるを 得ないため「意識」は解かりにくくなるのである。心身二元論も「意識」 の罠だと考えるのである

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