JN原稿 言語と二元論
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最終更新日:2023/05/29
ジャパンナウ観光情報協会
人類は二足歩行により手を獲得したが、骨盤が発達し難産になった。石器が使用できるようになり、出産に協力できるようになった。そしてなによりも石器使用により言葉を獲得した。人類は石器を使用してから、顎が退化し、丸い舌を獲得し、喉道が変化した。変化に富む音声を発することが出来るようになり、生き残れる確率が高くなった。口、喉は呼吸・栄養摂取器官であり、言語器官として誕生していない。つまり、言葉は自然淘汰でできたわけではなく、副産物として発生した。ものをのみこむ時に誤飲しないように発達した筋肉の一部を使っているのである。
人類は集団生活により外敵の危険性が少なくなり、乳児は親をコントロールするため、複雑で大きな泣声を出すようになった。呼吸をコントロールする機能が発達し、人間は言葉の習得が可能となった。
研究者は歌のような音の流れが先にあって、それを切り分けてゆくことで単語ができ言葉ができたとする。日本人は英語にある高い周波数帯の音を聞き取れない。成人してから聞き取れるには、高い周波数の音を人工的に言語野に送り込んで、これを認識するニューロンのネットワークの生成が必要なのである。
人間が出せる音は50種類程度、少ない音を組み合わせて単語をつくっている。当初は動物のように絶対音感を持っていたが、進化の過程で相対音感に移行した。言葉は音同士の相対的な関係で記号化されている。
聴覚障害者の人工内耳は、マイクで拾った音を電気信号に変え、その電気信号で蝸牛を刺激する。人工内耳から聞こえてくる音は、ロボットが発している電子音みたいなものである。そのまま我慢してつけていると、いつしかその音との一体感が生まれて、自然の音声に化け、1か月後には会話ができるようになる。
このことは聴覚に限らず視覚等についてもいえることである。手話等が言語である由縁でもある。脳への信号と、視覚としての信号が同期しているのであり、いわば自分のもののような錯覚が生まれる。無意識の部分である。運動神経の上流だが、その源流をたどっていくと消えていく。その過程で時間概念が生み出されたのである。
映像記憶は刻々と変わり、それは無垢の眼で見ているのみである。従って、この場合時間の概念は生まれない。過去・現在・未来の時制(概念)が生まれるのは、言語の使用つまり概念記憶となってからである。
人は「感覚」により意識を持つようになったのである。そして、「意識」が成立するには自己言及つまり、記憶・時間という言語概念を必要とする。「自己意識」とは、錯覚であり実体はない。また、「意識」とは、言語による偽りの実体を創り出すメカニズムである。そして、錯覚であることを隠蔽せざるを得ないため「意識」は解かりにくくなるのである。心身二元論も「意識」の罠だと考えるのである
では意志とは何か?電気信号は神経線維の上に、タンパク質を通す穴が開いていて、普段は閉じている。それが一瞬開くと、電気が上がる。最初にタンパク質の形を変化させたものがあるから連鎖反応を起こすが、最初に変化させたものを意志としているのである。しかし、その意志のほとんどは、無意識の部分で決めている。その無意識の、たんぱく質を変化させたのは何なのか不明であり、念力で動かしているのと似ている。電気信号が意味を持つものに変化するメカニズムの解明が脳科学の課題なのであり、一元論と二元論の分岐点でもある。
現在進展中の深層学習技術では、人間のような少ない事例から一般化することはできないし、抽象概念をあつかえない。仮に「意味を理解するAI」が生まれるなら、それは人工知能の世界で革命が起きるのではなく、それらを支える理論が、数学の世界で発見された時であると考える。
人類は言語情報を記録するため文字を発明した。その文字情報は聴覚情報を視覚情報に置き換えたものであり、人間は文字のための感覚器官を備えてはいない。従って、文字情報は言語(通常は音)に変換して記憶している。文字がない場合でも、稗田阿礼等恐るべき記憶力で記録できるのである。
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