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JN原稿 観光資源反応譜(音譜に相当)の作成 観光資源の進化研究手法

公開日: : 最終更新日:2023/05/29 ジャパンナウ観光情報協会

 利己的遺伝子の理論ドーキンスによって提唱され話題になった。社会現象の進化のプロセスを遺伝子の視点で考えるものであるが、実際に遺伝子が視点や意志を持っているという意味でない。遺伝子の視点に立って考えることで、進化が分かりやすくなるということである。利己的遺伝子と呼ぶのは、進化が人間の幸福のためではなく、遺伝子がいかに自己複製を増やすか、をめぐって進行しているように見えるからである。

 この発想により、音楽に関する実証的研究が進められている。https://newspicks.com/news/3371305/body/?ref=index 研究者はまず、新曲が人気を集めるには、新奇性がありながら、既存音楽の伝統とも結びついていなければならないという仮説を立てた。音程が3全音離れた2つの音を同時に出す三全音は、響きの悪い不快な音程と考えられている。これらの単位がどれだけ頻繁に起こり、数世紀を経る中でどれほど広まったのかを調査したのである。76人の作曲家による9996曲の音楽を調べ、パターンを規定する進化の数学的法則を探った。1500年から1900年までの間に、三全音の現れる頻度(確率)の平均と標準偏差は増加の一途をたどったことが分かった。16世紀に作曲された曲には稀にしか登場しないが、時代を経るにつれて一般的になる。稀な音楽的事象の広まりが、伝播の一般的なメカニズムによるものか、個々の作曲家の独特な行動による結果なのか、それを調べるために、これら2つの状況を見分けられる進化の数学的モデルを作成した。その結果、三全音の使用頻度が増加してきた様子が、伝播の原則となる「ベータ分布」と呼ばれる統計的法則に正確に従うことを発見したのである。音楽文化におけるいくつかの動向が、個々の作曲家の状況によって起こるというよりは、むしろ、統計的な進化則として定式化できると結論づけられている。そして、この研究は何よりも音譜という再現可能なデータが保存されていたことにより可能であったことが重要であった。

 この手法は更に一般化して、聴覚メカニズムと文化の関係の科学的解明にも活用できる。既に、心地よい音、音楽あるいは耳障りな音の分析は進展している。子供の注意を引く音はテレビコ マーシャルに活用されているくらいであるから、聴覚情報と脳内反応のさらに普遍的な分析が期待できる。

 この手法は聴覚情報に限定されず、文化的進化が文化様式の伝播と選択の一般的なメカニズムを通じて起こることを示す現象の進化研究に使える可能性を秘めている。現段階では、複数の感覚情報による脳内反応分析にまでは応用できるものではないが、今後の感性情報研究の進展如何では、発展が期待できる。観光資源論、観光行動論等観光学研究においても、観光客の満足度分析に応用できる。しかしながら、観光学研究にはその前に、感性アナラーザー等の活用による再現可能な有意なデータの収集が求められ、音譜ならぬ観光資源反応譜といったものが求められるであろう。。

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