ジャパンナウ原稿2019年11月 太平洋島嶼国等の観光政策
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最終更新日:2019/10/25
人流・観光政策への評論
ラグビーのワールドカップ戦を偶然サモアでむかえた。現地は日本時間より五時間早く、開始時間は深夜。皆寝てしまっている。おまけに翌朝は日曜日だから皆教会。私の周りではどこにもラグビーの余韻などなかった。 今回の旅行は太平洋島嶼地域をアイランドホッピングしていた。トンガやツバルなどは名前が知られているが、ポンペイ、ウベアのように知られていない島も多い。その点サモアは知名度は抜群。サマセットモームやスティーブンソンなど著名作家が話題を提供したからだ。しかし、島の規模は淡路や佐渡とあまり変わりがない。従ってサモアのラグビーチームがいかに国際宣伝に寄与したかという評価をした方が良い。チーム淡路がイングランド相手に国際試合をすれば、淡路の国際的知名度は一気に上昇するはずだ。 ツバルも海面上昇による水没危機で有名になった。これらの島は、広く他の太平洋諸島等と交流はあったものの、自給自足的社会であった。しかし現代は、車を筆頭に、テレビ、スマホ、ビール、コーラ、リンゴにサッカーボールと、島では生産できない物資であふれている。といって価格は先進地域と変わりはない。生活廃棄物が発生し、毎朝ごみ収集車が回っている。こんな地域で政策として観光を推進すべきか考えさせられる。既に住民用で、物流や廃棄物処理はキャパシティギリギリに近い状態にある。金を稼ぐためとはいえ、よそ者のために割く余裕などない。オーバーツーリズムなどと言わなくても、当たり前なのである。だからか、ツバルでは全く観光宣伝ポスターは見かけなかった。島を離れる人の首にかけてあげるお別れの首飾りが、唯一空港前で売られていた観光土産品だった。日本の有名観光地も、ツバルのように周りが海に囲まれていないだけで、物流や生活廃棄物処理などを通して、地域にはキャパシティの限界があることを知り始めている。
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