ジャパンナウ観光情報協会原稿2016年5月号 月極定額乗り放題サービス
公開日:
:
最終更新日:2016/11/25
ジャパンナウ観光情報協会
月極定額乗り放題制は、携帯電話やプロバイダーが月極定額で使い放題なら、飛行機の代金も月払いにしてはどうだろうかという発想である。アメリカン航空は1980年代はじめ、生涯にわたってファーストクラスを無制限に利用できる25万ドルのパスを発売した。ジェットブルー航空も2009年に乗り放題パスを売り出したことがあるが、今度ONEGOが売り出したのは、2950ドルの月額料金を払えば、米国の大手航空会社7社の飛行機が乗り放題となるサービスである。米国のすべての大都市をカバーしている。キャリアではなく、サードパーティとして販売するところがこれまでと違う。その目的は閑散期に売れ残ってしまう可能性のある座席を埋めるとともに、観光旅行者の評判を高めることにあり、ネット社会の旅行会社の生きる道でもある。
日本で高齢者向けのジェロンタクシー・乗り放題旅行商品を提案している間に、アメリカではさらに深化した航空機の乗り放題サービスを発売したのである。このスピード感の差に社会の違いを考えさせられるが、日本も乗り放題を可能とするマルチ・パッケージ・ツアー約款ができたのであるから、新しい商品を開発してもらいたいものである。
定額乗り放題制の魅力は、価格調査や購入手続きといった要素をなくすことで、ユーザーは自分がどこに行く必要があるのかだけを考えれば済むようになるところにある。ネットを使用して自分で旅行を計画し、航空券から現地のランドまで手配するとなると、かなり時間がかかる。季節、曜日で変化する料金やダイヤ等に振り回されるから、海外旅行を計画する場合、最後には疲労困憊することとなる。早割商品は払戻不可、変更不可だから神経をすり減らす。
航空は、セキュリティ、気象条件等不安定要素が多く、代替手段も考慮しないと安心できないから、乗り放題といっても限界がある。その点、タクシーのほうがはるかに商品形成は楽なはずであるが、進展しないのは、ドライバーの歩合制賃金が採用されているからなのであろう。乗り放題タクシーがある観光地であれば、明日にでも旅行したくなるのであるが、残念である。
関連記事
-
-
2022年8月ジャパンナウ観光情報協会原稿 アフターコロナという名の観光論 原稿資料
◎ジャパンナウ原稿案 2020年冬から始まった新型感染症は日本の人流・観光業界に
-
-
「若者の海外旅行離れ」という 業界人、研究者の思い込み
『「若者の海外旅行離れ」を読み解く:観光行動論からのアプローチ』という法律文化社から出版された書
-
-
箱根について 藤田観光元会長の森本昌憲氏の話を聞いた結果のメモ書き ジャパンナウセミナー
2017年10月13日ジャパンナウ観光情報協会の観光立国セミナーで森本氏の話を聞く。日本ホテル・レス
-
-
「衣食足りて礼節」をあらためて知る(2014年5月)
クールJapan戦略のため日本社会のCOOLな部分が取り上げられる機会が多くなりました。中国製品との
-
-
ジャパンナウ2019年9月号原稿「森光子記念館」
著名人の顕彰施設は著名である限りは存続する。問題は経年変化により著名人でなくなった場合である。文化
-
-
ジャパンナウの今後の原稿 ロボットと観光
「変なホテル」が話題になっている。ロボットがフロントで出迎えるからだ。練れていないネーミン
-
-
ジャパンナウの今後の原稿 観光情報論序説 言語が生み出した記憶と時間
人類は二足歩行により手を獲得したが、骨盤が発達し難産になった。石器が使用できるようになり、
-
-
ジャパンナウ観光情報協会機関紙138号原稿『コロナ禍に一人負けの人流観光ビジネス』
コロナ禍でも、世界経済はそれほど落ち込んでいないようだ。PAYPALによると、世界のオンライン
-
-
ジャパンナウ予定原稿 感情と観光行動
観光資源に対して観光客に移動という行動をおこさせるものが感情である。言葉を換えれば刺激であ
-
-
JN原稿 観光資源反応譜(音譜に相当)の作成 観光資源の進化研究手法
利己的遺伝子の理論がドーキンスによって提唱され話題になった。社会現象の進化のプロセスを遺伝子の視
