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ジャパンナウ原稿 視覚   過去・現在・未来の時制(概念)が生 まれるのは、言語の使用つまり概念記憶となってからである。

公開日: : 最終更新日:2023/05/21 ジャパンナウ観光情報協会, 観光情報 コミュニケーション

 生物に目という臓器ができて、進化の過程で人間にも目ができあがって、宇宙空間を飛んでいる光子を目で受け取り、その情報を解析して認識し、解釈できるようになって、はじめて世界が生まれた。世界があってそれを見るために目を発達させたのではなく、目ができたから世界が世界としてはじめて意味をもった。

 外の世界は「目」を通して第1視覚野に写し取られ、そのあと、色に反応する第4視覚野や動きを見る第5視覚野に信号が送られる。第5視覚野が壊れると動いているモノが見えなくなってしまう。止まったボールは見えるけれどもボールが動くと見えなくなる。

 「見る」とは、ものを歪める行為(一種の偏見)である。二次元で網膜に映ったものを脳が強引に三次元に再解釈する。我々は脳の解釈から逃げることはできない。「見える」というクオリアは脳の不自由な活動の結果である。これは脳の宿命である。

 だから、見る、という行為はおそらくは人間の意識ではコントロールできなくなってしまっている。網膜の上には多くの毛細血管が走っているので、その部分は血管が邪魔で見えないはず。それでも見えるのは、血管で見えていない陰の部分に周囲の情報を埋め込んでいるから。目で見た情報は欠陥だらけで、脳がそれを(無意識的に)補完している。色を感じる細胞は、網膜の中心付近に偏っている。実際は、視野の中心のごく狭い範囲しか色が見えていない。「見る」という行為はほとんど無意識の行為であり、目に入った光をどう解釈するかというのはあくまでも脳が非意図的に行っている。「見る」というのは受動的な行為。人間の行動の中で意識してやっていることは意外に少ないし、人間の行動のほとんどは無意識かもしれない。

 映像記憶は刻々と変わり、それは無垢の眼で見ているのみである。従って、 この場合時間の概念は生まれない。過去・現在・未来の時制(概念)が生 まれるのは、言語の使用つまり概念記憶となってからである。

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