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伊勢観光御師の会

公開日: : 最終更新日:2023/05/28 随筆など

昨日恒例の伊勢観光御師の会が開かれた。伊勢志摩サミットの後だけにいろいろな報告があった。2015年は内宮下宮あわせて840万人の参拝者があったが今年はそれを上回る勢いだそうだ。
ジャパンツーリストビューロができる一年前の1911年から始まった全国菓子博覧会が来年4月に伊勢で開催されるとのこと、伊勢観光協会の浜田会長は赤福の社長でもあり大変なようだ。

伊勢のタクシー運転手に対する苦情が観光協会に寄せられるそうだ。そこでタクシー運転手総選挙をして、上位五位を検証しているとのこと。同様に宿泊施設の接遇にも苦情が寄せられるが、従業員の給与等が低くて、それではなかなかサービスの向上にはつながらないという感想が出ていた。タクシーも同様である。

伊勢志摩サミットで各国首脳が伊勢神宮を訪問された。公式のコメントでは訪問であるが、非公式には神宮は参拝と表現しているとのこと。英訳するといずれもVISITである。

現在われわれが行っている伊勢神宮方式の二礼二拍手一礼の儀式は明治になって定められたものであり、それまでは一礼であったそうだ。天皇陛下は今でも一礼だそうである。小泉首相が靖国参拝の時も一礼であったそうだ。サミットの首脳も一礼であった。政教分離はどこの国でも政治問題になるから、お辞儀一つでもサミット主催者は相当神経を使ったであろう。

政教分離は大日本帝国憲法でも規定されていたから、国家神道は宗教ではないとした。その結果、戦後の軍国主義復活を防止するため、アメリカ等がかなり政策的に日本国民を洗脳した結果が、今日の問題にも影響しているのであろう。

横浜市立大学の講師を昨年からしているが、これはなくなられた太田元近畿日本ツーリスト社長の後を引きうけたものである。太田氏は母校で講義をしていたのである。ご出身が伊勢ということで伊勢観光御師の会で面識を得た。

その横浜市立大学の論叢という学術論文集に三上真司氏の「レりギオ」が掲載されていた。書き出しは「宗教という日本語は二重・三重に不幸な言葉である」で始まる。三上氏はオックスフォード英語辞典からreligion は、「ある集団に帰属しているという事実」と「超人的な力」に対する信仰心という二つに焦点があるとする。そのうえでreligionには「教え」という意味合いは全く含まれていないとする。その理由は集団的現象としてのreligionから個人の内面の現象としてのreligionへという変遷において容易に埋められない溝があり、religionという語には内部に大いなる分裂を抱えており、religionにふさわしい訳語などというものは存在しないとされる。これが「宗教」のもう一つの不幸であると結論づけられる。

しかし三上氏はそれだけではないとする。日本語の「宗教」とreligionの間で起こったことは、潜在的に他のあらゆる地域で起こりうることであり、実際起こったことである。文化なり宗教は多様な自然環境とのかかわりの中で規定されたものであるならば、はじめから普遍的な共通性を想定することよりも、その多様性をまず認めることが「宗教」に近づくための第一歩となる。西洋語が非西洋と遭遇することによって自らのローカル性と意味の狭隘さを自覚せざるを得なくなるときに感じられる困惑があるとする。

訳語「宗教」が適当かどうかという問いは、ある意味で的外れな問いだということになる。そのような問いが意味を持つのは、訳語がオリジナルの語(religion)の意味を忠実にとらえているかという点についての吟味が成り立つ場合であるが、religionという語にはそのような意味的安定性が二重にかけているとする。そのうえで、三上氏は西洋語のreligionに関する考察を『レりギオ』で詳細に展開されるのである。

中国や韓国、ロシアの首脳が伊勢神宮にVISITされるときは、どのような時代になっているのであろう。

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