高齢化社会における祝日「海の日」と連続休暇制度を考える
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最終更新日:2016/11/25
随筆など
日本は四方を海に囲まれ、経済的のみならず文化的にも海の恩恵を受けてきた国である。海のおかげで日本独特の風土を形成してきたと言える。世界的にも珍しく気候に変化があり、水資源の豊富さ等が上質の環境水準の維持を可能としていることも四面をとり囲む海のおかげであり、日本文化形成の原動力となっているとも言える。また、古代から海は物流、人流において想像以上に日本と周辺国との文化的経済的距離の短縮効果をもたらし、日本及び周辺国の社会経済的繁栄をもたらしてきたと考えられる。
このわが国に恩恵をもたらしてきた海のことを広く国民に知らしむべく7月20日「海の日」を国民の祝日とする法律が、長年にわたる関係者の尽力と国民の理解により、平成8年に施行された。阪神淡路大震災直後のことであった。
その一方、成熟した我が国においては「観光」の位置づけが大きく変化し、観光のもつ社会的、経済的重要性の認識が強まってきたところから、関係者の強力なリーダーシップのもと、観光立国推進基本法が制定され、観光庁が設立されたことは国民の記憶に新しいところである。その観光を振興する政策の一環として、日本人の働き方の裏返しである「休み方」に国民の関心が集まり、連続休暇取得促進の観点から、平成15年に関係者の尽力により「祝日三連休化法」が制定された。この大きな政策動向の中で「海の日」は成人の日、敬老の日、体育の日とともに月曜日(ハッピーマンディ)に移行することとなり、今日の観光の発展に大きく寄与してきたところである。
科学技術の進展は地球の七割を占める海洋活用の可能性を大きく広げることとなった。このことは、陸上資源には乏しいものの四方を海に囲まれた日本にとっては将来の可能性を更に大きくするものである。平成19年7月20日に「海洋基本法」を制定し、海洋問題に対する各省庁の一元化、海洋開発の促進、環境の保全、海洋における安全確保、海洋産業の発展及び海洋の国際協調等を規定した。まさに日本は進路を海にとることによって、新しい国造りへの歩を強め始めたわけであるが、残念ながら一般国民における理解が進展しているとは言い難い状況である。国民の間の海に対する認識を深める意味では、海洋国家日本の礎の日として再度7月20日を海の日として祝日化する必要性が高まってきている。
退職者のウェイトが高くなった高齢化社会においては、休日に対する考え方も変化しつつある。日本はこれからさらなる高齢化社会に突入してゆく。この超高齢化社会においては、団塊の世代を中心に休日に対する認識が大きく変化してゆくものと考えられる。毎日が休日である退職者にとって、現役世代と同様に全国一斉に休日となる連続休暇制度は、さらなる制度的な工夫を講じる必要性が高まってきていると感じられるようになっている。また現役世代にとっても、有給休暇の積極的取得により、休日を加えた総合的な連続休暇の取得を促進する必要性が高まってきている。海の日にあっても、ハッピーマンディから元の7月20日の固定日に戻したとしても、その前後に有給休暇を取得することにより海事思想の普及と観光振興が同時に図れる時代が来ているのではないだろうか。関係者の積極的な理解を期待するものである。
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