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Uberの中国市場撤退の見方

公開日: : 最終更新日:2016/11/25 配車アプリ

わが国ではUberに対する生理的反感を持つ人(交通学者に意外とみられる)と手放しで歓迎する人(Newspicksのコメンテーターは圧倒的にこの傾向がある)がいて、その気分が記述にも微妙に反映されるから面白い。コメントを見ると、敵の敵は味方なのか、中国の配車アプリがUberを打ち負かしたことに快感を覚える者がいるようであるが、そんな単純なものではないのではないか。中国の配車アプリの支配者はIT企業であり、Uberははやり運送業者であるから、IT企業が運送業者を打ち負かしたということであろう。また、シンガポールの配車アプリ関係者がUberの中国撤退に歓声を上げる姿勢は、日露戦争で、英米の力により「日本がロシアに勝利したことにしてもらったこと」にアジア植民地の住民が喝采したこと思い出してしまう。それよりも中国が強烈なスピード感をもって進んでいることに日本は驚くべきであろう。

中国の事例に限らず、論点はライドシェア配車アプリである。配車アプリはロンドンもニューヨークも市長が力を入れている。Uberを排除するのではなく、既存のブラックキャブやイエローキャブの配車アプリの普及が遅れていることにいら立ちを隠していないのである。日本と違い、事前予約の営業所受付の配車は、流しとは別の形で行政が行われている(ロンドンは自家用扱い)から、配車アプリのUberに行政は否定的ではない。従ってライドシェアに対しても日本のように白タクだという反応は見られないのである。市長は選挙民を見ているから、ロンドンのブラックキャブがGPSも使わず長期間かかる地理試験合格にしがみつくことにシンパシーを感じている余裕がないのであろう。ニューヨークのイエローキャブは権利価格が一億円を超えているくらいに供給不足であるから、やはりシンパシーを感じない。配車アプリを使えば問題がないとして外国人ドラーバーの導入にも議会は前向きである。

英米と異なり、日本のタクシー行政にはこれまで権限がないことから東京都知事や大阪市長は関心がなかった。しかし、田舎の高齢者が多い地区の首長はこれから次第に関心を持たざるを得ないが、その時に地方側から見ると存在価値の不明なスピード感の欠如した「協議会」にはうんざりするのであろう。都市計画法の地方計画審議会のように規範性のある組織に慣れている地方行政からすると、残念ながら運送業者を守る組織にしか映らないからである。地域では圧倒的に利用者が多く、運送事業者は少数派であるから、声があげられない。従って運送事業者が声の上げやすい「協議会」で運輸局も加わって声を上げるものだから、今度は利用者の声が小さく扱われてしまい、最終的には期待されなくなるのである。地域住民が納税する税金を使用して交通を維持しようとするのであれば、自治体のハンドルさばきに任せるしかないであろう。大都市と過疎が一緒に扱われる道路運送法が限界にきているのである。

トラック事業から宅配便そしてAmazonが生まれたように、バスタクシーから何かが生まれないかと発想したのが『モバイル交通革命』であり、自家用と営業用の相対化を指摘した。特定少数と不特定多数の二項対立ではなく、特定多数の登場がITにより生まれると思ったからである。図らずも、UberやHailo、Lyftが誕生した。それには道路運送法が追い付いていない。道路運送法創設時の「乗合」と「貸切」の単純な二分類のほうがまだましである(当時は「乗用」概念はなかった)。でも道路運送法がどうであろうが、旅行業法を活用すれば、「明日にでも考えている創意工夫は実現できますよ」というのが、『モバイル交通革命』の主張である。前向きなIT事業者には「協議会」など不要なのである。

さて、中国であるが、配車アプリの普及は日本をはるかにしのいでいる。交通サービスの供給不足も影響しているのであろう。ライドシェアは、中国なので法律がよくわからないのであるが、白タク行為が違法なのか合法なのか不明のまま実態が先行し、中国共産党は合法化する方向のように報道されている。従って中国のライドシェアがUberに勝利したということは、中国の白タク集団が勝利したということで、わが国の関係者が単純に喜ぶ姿には理解ができないのである。

Uberは中国で大赤字であるということで撤退したと報道されているが、中国に限らずアメリカでも赤字である。それでも投資家は将来を見越して投資しているのである。今儲かるのなら私でも出資する。Uberが中国から撤退した本当の理由はわからないが、Googleですら中国には参入できていない。人を運ぶだけのビジネスがそんなに収益性があるとは思えない。供給不足が続けば中国共産党ですら住民の不満を抑えられないから営業車両は増加する。あるいは白タクに目をつむるのである(前述のとおり合法化が検討されている)。世界の投資家が注目するのは、配車アプリやライドシェアによってもたらされる人流情報である。私はUberよりもGoogleが最後は勝利すると思っているのも、情報価値の活用がGoogleのほうが優れていると思っているからである。今の中国の体制では人流情報を生かすには西洋人では無理だと思ったのであろう。

シンガポールは、淡路島くらいのところに人がひしめいているから、自家用車のコストが極めて高いのである。従ってライドシェアやタクシーの価値があるのである。中国とはそこが違う。

配車アプリの普及は、利用者にある。中国人は中国でインストールした配車プリを使用する。従って巨大な中国市場で普及した配車アプリを、日本は無視できない。ましてや中国人観光客の誘致を考えるのであればなおさらである。電子マネーも中国が進んである。私はuberやLyftよりも中国製の配車アプリが日本では普及すると思っている。そのタイミングはおそらく東京オリンピックの時期であろう。そして、逆に、日本で普及した中国製アプリをもって、多くの日本人が中国旅行を始めるのである。

付論 参考になるネット記事を見つけたので紹介しておく。
http://honichi.com/chinese_sns-app_access-control_and_news-app
「LINEを除くと、これといって海外にユーザーを抱える国産アプリを生みだしていないのが日本の現状です。厳密に言えば、そのLINEでさえ韓国系の会社によるプロダクトであることを考えると、アプリ市場を巡る日中間の格差は小さくないといえそうです。百度でさえ、中国、シンガポールから撤退してしまいました。20世紀末に「iモード」サービス等を展開し、世界に先駆けたモバイル技術を展開しながら「ガラパゴス化」した世界に閉じ込持っていた日本。そんな失敗の二の舞いにはならないという決意と大きな野望が、アリババやテンセントなどのグローバル展開から垣間見えそうです。」

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