*

橋本健二 『格差と階級の戦後史』

公開日: : 最終更新日:2023/05/20 出版・講義資料

この社会はどのようにして、現在のようなかたちになったのか?
敗戦、ヤミ市、復興、高度成長、「一億総中流」、
バブル景気、日本経済の再編成、アンダークラスの出現……
「格差」から見えてくる戦後日本のすがたとは――
根拠なき格差論議に終止符を打った名著『「格差」の戦後史』を、
10年の時を経て、新データも加えながら大幅に増補改訂。
日本社会を論じるならこの一冊から。

格差と貧困から見えてくる、この社会の自画像
貧しさからの出発――敗戦から1950年まで
「もはや戦後ではない」――1950年代
青春時代の格差社会――1960年代
「一億総中流」のなかの格差――1970年代
格差拡大の始まり――1980年代
日本社会の再編成――1990年代
新しい階級社会の形成――2000年代
アンダークラスの時代――2010年代
日本の階級社会に未来はあるのか――!?

 

書評1

豊富なデータを基に階級と格差の形成過程を分析している。本書334頁では、「階級別にみた政党支持率の変化」が掲載されている。いずれの階級も、2000年以後は自民党支持率が下がっており、「支持なし」が増えている。
法人税減税など企業優遇策を採用してきた政府自民党に対し、資本家階級は強い不満を表明していることが分かる。この自民党への不満が野党最大勢力(政権も獲得)である民主党には向かわず、いずれの政党も支持しない「支持なし」側に回り、無党派層を形成しているのが興味深い。民主党政権崩壊の理由は、東日本大震災への対応の不手際によるものである。旧中間階級のみが、民主党支持を微増させている。
②しかし、総選挙では明らかに与党民主党が勝利しているところを見ると、「支持なし」としながらも、とりあえず、他にユウリョクナ政党もないので、あるいは自民党に代わる政党もないので、安倍政権支持に回っている無党派層も多いのではないか?
③どの階級においても「支持なし」が50%前後を占めながら結果的には選挙で自民党が圧勝している構図が面白い。
④バブル崩壊後の低所得者層の増加と少子高齢化による深刻な労働力不足が日本経済が直面している最大の課題であるである。人件費を上げても働く人は集まらない。それゆえ倒産・閉店する企業が続出している。人件費の高騰は確実に企業の経営を圧迫するので、上げるにも限界があるのである。
⑤外国人投資家労働者は都市部であれば、小用することも可能であるが、地方都市ではそれも集まらない。AI導入はまだまだ先の話である。
「格差」は、政治家・医師・経営者・大學教員・公務員等で二世が多いことを見れば拡がっていることがわかる。政治家の大半は二世議員であり、医師も親が医師である者が多い。親が富裕でなければなれない職業が増えた。質の高い教育を受けるためには家庭の豊かな経済力が必要である。私大医学部に入学するには貧困階級、中間階級はでは不可能である。政治家も親の選挙基盤を受け継がなければ、当選は難しい。
⑦「格差」を埋める政府の政策が必要だ。子育て支援、中等教育・高等教育の無償化が必要だ。 「階級」をなくすには「ベーシックインカム」の導入が必要だ。高齢化は社会の活力を低下させる。高齢者の雇用の拡大が必要だ。

書評2

私も戦後すぐから話が始まっているのが面白いと感じました。
戦後、農民層から世代間移動が始まって、高度経済成長にのっかっていくダイナミックさが、社会の活力だったのでしょう。私の夫の父も農家から労働者階級に移動しました。
しかし、バブル期に資本家階級と新中間階級が勢力を伸ばし、その後バブル崩壊を経て、やや固定化しました。富裕層が再生産されるようになったのは、このためです。

就職氷河期世代が非正規雇用に多く流れたために、従来の階級の下にアンダークラスが生まれ、格差が拡大し、反転が困難になりました。
資本家階級は自分の子を自分の階級で働かせることができましたが、新中間階級は、正規雇用に成功する家庭と、非正規雇用に甘んじた家庭とに別れ、必ずしも再生産されているとは限りません。私の兄弟の家庭でも、有名大学を出て一流企業の正社員になった子と、大学を中退してフリーターに甘んじている子が、1つの家庭にいます。そういう例は少なくないのではないかと思います。

私自身は明治時代から新中間階級の家系という、やや特殊な出身です。私で4代目になります。
でも今感じるのは、これからは新中間層で生き抜くのは難しいということです。農林水産業が復活するのではないでしょうか。私の子は地方公務員2人と看護師で、まあ2人は20代で結婚して子供も2人いて、中古ですがマイホームも手にいれようかとしています。その子供が、息子(私の孫ですね)はいざとなれば水産高校に進めばいいと言い、また地方公務員の1人は林業職公務員です。
食糧生産と環境問題が、今後注目されるようになると思います。若いアンダークラスはそちらに移動すればいいのでは?
まあこの予測は外れるかもしれませんが。(それでもいいんです。競争が少なくなるでしょ笑)

全てが農業からの移動が発端だったと知った時、農業に帰る時代がきたと思いました。

関連記事

no image

『日本経済の歴史』第2巻第1章労働と人口 移動の自由と技能の形成 を読んで メモ

面白いと思ったところを箇条書きする p.33 「幕府が鎖国政策によって欧米列強の干渉を回避した

記事を読む

no image

 『財務省の近現代史』倉山満著 馬場鍈一が作成した恒久的増税案は、所得税の大衆課税化を軸とする昭和15年の税制改正で正式に恒久化されます・・・・・通行税、遊興飲食税、入場税等が制定されたのもこの時であり、戦費調達が理由となっていた 「日本人が汗水流して生み出した富は、中国大陸に消えてゆきました」と表現

p.98 「中国大陸での戦争に最も強く反対したのは、陸軍参謀本部 p.104 馬場

記事を読む

no image

「太平洋戦争末期の娯楽政策  興行取締りの緩和を中心に」 史学雑誌/125 巻 (2016) 12 号 金子 龍司

本稿は、太平洋戦争末期の娯楽政策について考察する。具体的にはサイパンが陥落した一九四四年七月に発

記事を読む

『日本車敗北』村沢義久著  アマゾンの手厳しい書評

車の将来の議論の前提に、地球温暖化への見解 ガソリン車 電気自動車 エンジンではな

記事を読む

『築地と豊洲』澤章 都政新報社

Amazonの紹介では「平成が終わろうとしていたあの頃、東京のみならず日本中を巻き込んだ築地市場の

記事を読む

『1964 東京ブラックホール』貴志謙介

前回の東京五輪の世相を描いた本書を港区図書館で借りて読む。今回のコロナと五輪の関係が薄らぼんやりと

記事を読む

no image

ジャパンナウ観光情報協会機関紙138号原稿『コロナ禍に一人負けの人流観光ビジネス』

 コロナ禍でも、世界経済はそれほど落ち込んでいないようだ。PAYPALによると、世界のオンライン

記事を読む

no image

江戸時代の交通事故

交通事故は、自動車の登場以前にもあった。江戸時代にも、大八車や牛車、馬車などの“クルマ”があったか

記事を読む

『鎌倉時代の交通』新城常三著 吉川弘文館 

交通史の泰斗新城常三博士の著作物をはじめて読む。『社寺参詣の社会経済史的研究』が代表作であるが、既

記事を読む

『セイヴィング・ザ・サン』 ジリアン・テッド

バブル期に関する書籍は数多く出版され、高杉良が長銀をモデルに書いた『小説・ザ・外資』はア

記事を読む

🗽🎒2026シニアバックパッカー全米の旅 ノースダコタ  独語 人口流出 パイプライン反対

  https://youtu.be/Q_Aem-vrXD8

🗽🎒2026シニアバックパッカー全米の旅 ミネソタ州 MN MPS  ソマリア語  GREYHOUNDの誕生、ミネソタの卵売り

#161 2021年8月25日(水)公開 アメリカ・

no image
AIに聞く ミネアポリス

私はバックパック一つで旅行しますので、移動は簡単です。ミネアポリスでは

no image
AIコパイロットに聞く ソルトレイクシティー

1. 24日 23:15 ソルトレイクシティ到着後の動き ✔ 夜のS

no image
AIコパイロットにきく カンザス

秀一さん、もちろん続けます。 アルバカーキー(Albuquerque

→もっと見る

PAGE TOP ↑