Quoraに見る歴史認識 太平洋戦争(大東亜戦争)は侵略戦争だったのでしょうか?
公開日:
:
最終更新日:2020/12/01
歴史認識
侵略には外交用語として明確な定義があります。計画に基づいて軍事作戦を先制発動することです。
なぜ軍事用語ではなく外交用語であるかと言うと、ある国と安全保障条約(同盟)を結ぶ際には抑止力の強化を目的として戦争が起きたら助けに行く義務を定める訳ですが、同盟相手が勝手にどこかに攻め込んだ場合にまで一緒に戦う義務を負うのは困りますので、参戦義務条項には「侵略を受けた場合」と言う文言が使われるためです。
太平洋戦争は真珠湾攻撃で開始されましたので日本の明白な侵略です。
アメリカが対日戦争プランを持ってた(発動してない)とか、パールハーバーの湾口で日本の特殊潜水艇が米軍に撃沈されたのが先だ(YOUは何しにハワイ来たの)とか、ハル・ノートが云々(外務省が交渉のたたき台って文言を削って陛下に奏上した)とか、全てたわごとです。
大東亜戦争は当時の日本政府の定義では第二次上海事変から始まったとしており、第二次上海事変に関しては蒋介石の計画的な攻撃によるものであり日本は侵略されたと言えます(場所は上海ですが日本軍は条約による正当な権利に基づいて駐留していました)。但し、反撃で圧勝して首都南京を攻略した段階で、蒋介石からの講和交渉(正確には日本側が事変の初期に提案していた)を蹴ったため、国際的には日本が侵略したような認識へと変化して行きました。
この状況で、好意的でなかったとは言え中立であったアメリカに対してあからさまな先制攻撃を仕掛けておいて、継続中だった日中戦争と無理やりくっつけて大東亜戦争だ!と呼称しても、アメリカに対する侵略の非は消えません。大東亜戦争と言う概念自体に無理があったと言うべきでしょう。
関連記事
-
-
横山宏章の『反日と反中』(集英社新書2005年)及び『中華民国』(中央公論1997年)を読んで「歴史認識と観光」を考える
歴史認識を巡り日本と中国の大衆が反目しがちになってきたが、私は歴史認識の違いを比較すればするほど、
-
-
御手洗大輔「示威の自由に関する日中比較と日本人の課題」
『横浜市立大学論叢』第68巻社会科学系列2号 御手洗大輔「示威の自由に関する日中比較と日本人の課題」
-
-
『本土の人間は知らないことが、沖縄の人はみんな知っていること』書籍情報社 矢部宏治
p.236 細川護熙首相がアメリカ政府高官から北朝鮮の情勢が緊迫していること等を知らされ、米国は
-
-
河口慧海著『チベット旅行記』の記述 「ダージリン賛美が紹介されている」
旅行先としてのチベットは、やはり学校で習った河口慧海の話が頭にあって行ってみたいとおもったのであるか
-
-
QUORA 日本の歴代総理大臣ワースト1は誰ですか?
日本の歴代総理大臣ワースト1は誰ですか? 近衛文麿でしょう。彼は首相在任中に国運を左右する二
-
-
書評『大韓民国の物語』李榮薫
韓国の歴史において民族という集団意識が生じるのは二十世紀に入った日本支配下の植民地代のことです。
-
-
保阪正康氏の講演録と西浦進氏の著作物等を読んで
日中韓の観光政策研究を進める上で、現在問題になっている「歴史認識」問題を調べざるを得ない。従って、戦
-
-
世界遺産を巡る日韓問題(軍艦島)
観光資源評価は頭の中の出来事である。ネルソン・マンデラが政治犯として収容されていたロベン島はその物語
-
-
ヨーロッパを見る視角 阿部謹也 岩波 1996 日本にキリスト教が普及しなかった理由の解説もある。
キリスト教の信仰では現世の富を以て暮らす死後の世界はあ
-
-
消費と観光のナショナリズム 『紀元二千六百年』ケネスルオフ著
今観光ブームでアトキンス氏がもてはやされている。しかし、観光学者なら「紀元二千六百年」を評価すべ