*

『維新史再考』三谷博著 NHKブックス を読んで

公開日: : 最終更新日:2018/03/11 観光資源

p.4
維新というと、とかく活躍した特定の藩や個人、そして彼らの敵役に注目しがちである。しかし、この選択は実は後世になされ定着したものである。具体的には、およそ明治の末期から形成されて、文部省『維新史』全五巻(1939-42年)で集大成された。 それは・・・戦後の維新史学にも継承されている。・・・世襲身分制の解体と犠牲の少なさという基本的事実が忘れがちなのは、そのせいに違いない。

p.45  本家本元の中国では決して生じえない「忘れえぬ他者」(中国のこと)症候群  特定の国を対等以上の存在として意識する必要は全くないのである。  朝鮮も日本も同じ
p.46  違いは日本は「武威」であり、「人倫」ではなかった。近代西洋の築いた主権国家体制が規定する対等外交のルールを認めるか否かは、・・・中国的価値観から見た日本の周辺性はこの点で極めて有利に働いた

p.49 幕藩体制という言葉をここでは使わない。近世に生きた人々は「幕府」や「藩」や「朝廷」という言葉をほとんど使わなかったからである。(渡辺浩『東アジアの王権と思想』東大出版会1997年)これらの言葉は明治初期に定着した言葉。幕府は朝廷より正当性の乏しいもの、藩は中央の政府を守るべき正当性の乏しい存在であるといったイメージ

p.66 令以来の宮中行事は重ければ重いほど中国風

政治秩序の崩壊の発端をなしたのは安政五年の政変。ペリー来航よりも重要な事件である。

戊辰戦争の副次的効果 武家の世襲身分制に与えた打撃、拡販の財政を急激に悪化

西郷は凱旋後播元にとどまる。国父久光と結んでいた保守勢力との激しい対立。新政府の諸改革を手厳しく批判し西郷に矛先が向けられた。
三藩献兵の際に上京

人類の近代化 西洋でいくつか枠組みが生成 当時の日本人はそのことは知らなかった。軍事的脅威に対処するため科学技術に注目し、ついで主権や国民の概念に符合するような政体変革に踏み込んだ。新政府を作ってからはこれらを応用しはじめ、「公論」を「民主」に発展させて現在に至っている。
西洋産の秩序規範に従うことへの不快感は世界中で語られる。しかし、大体モデルを提示しているわけではない。「近代」の西洋が作りだしたモデルを上回り、人類に普遍的に歓迎されるような秩序規範は果たしてどこで生まれるのか

関連記事

no image

仏フォアグラ生産者が米加州の禁止措置に反発、人道的飼育を主張    「観光資源フォアグラと動物愛護」の教材

世界のこぼれ話2019年1月18日 / 11:26 / 3日前 [モ

記事を読む

no image

シャマンに通じる杉浦日向子の江戸の死生観

モンゴルのシャマン等の観光資源調査を8月に予定しており、シャマンのにわか勉強をしているところに、ダイ

記事を読む

no image

ヒトラー肝いりで建造の世界最大のホテル・プローラ

観光政策というより、福祉政策なのかもしれませんが、現代なら民業圧迫という声が出るでしょう。

記事を読む

no image

『帝国陸軍師団変遷史』藤井非三四著 メモ

薩長土肥による討幕が明治維新ということになっているが、なんと首都の東京鎮台本営に入った六個大隊のう

記事を読む

no image

観光資源評価の論理に使える面白い回答 「なぜ中国料理は油濃いのか」に対して、「日本人は油濃いのが好きなのですね」という答え

中華料理や台湾料理には、油を大量に使用した料理が非常に多いですが、そうなった理由はあるのでしょうか

記事を読む

no image

童謡「赤とんぼ」から躾を考える

村のしつけが対象とするのは正規メンバーだけで、共同体からはみ出た子供たちは、アウトサイダーとして

記事を読む

no image

観光資源としての明治維新

NHKの大河ドラマは、源平合戦、関ケ原の戦い、明治維新が三大テーマのように思うが、観光資源としての価

記事を読む

no image

プロテスタンティズムと現代政治 学士會会報NO.927 2017年Ⅵ 深井智朗 pp24-27

マルティン・ルターによる神聖ローマ帝国の宗教の改革は、彼の意図に反して、すぐに政治化し、彼の死後まも

記事を読む

no image

「地消地産」も「アメリカファースト」も同じ 

『地元経済を創りなおす』枝廣淳子著 岩波新書を読んだ。ちょうど教科書原稿を書いているときだったので参

記事を読む

no image

『サカナとヤクザ』鈴木智彦著 食と観光、フードツーリズム研究者に求められる視点

築地市場から密漁団まで、決死の潜入ルポ! アワビもウナギもカニも、日本人の口にしている大

記事を読む

PAGE TOP ↑