『動物の解放』ピーターシンガー著、戸田清訳
工場式畜産 と殺工場
https://www.nicovideo.jp/watch/sm11088087
シンガーの基本的な主張は単純明快だ。シンガー曰く、たとえヒト以外の動物であっても、苦痛を感じる能力をもつものに対しては、不必要に苦痛を与えてはならない。もし、ヒトでないという理由だけで、ある動物に苦痛を与えてもよいというのなら、それは「種差別(speciesism)」以外の何物でもないだろう。しかし種差別は、人種差別や性差別と同様、とうてい擁護しうるものではない。こう主張してシンガーは、ヒト以外の動物に対しても「平等の配慮」を求めていくのである(第1章)。
続けてシンガーは、とくに動物実験(第2章)と工場畜産(第3章)に焦点を当てながら、現代の動物虐待を告発する。当該箇所はまさに初版刊行時に広く注目を集めた部分であり、150ページにも渡って積み重ねられていくそのレポートは、さすがに鬼気迫るものがあるといえるだろう。
さらにシンガーは、第4章でベジタリアニズムのすすめを説いている。じつは、平等の配慮(のみ)を求めるシンガーの立場からは、肉食の否定は厳密には帰結しない(動物に苦痛を与えずに屠殺すればよいからだ)。しかし、前章で論じられたように、食用家畜が現に酷い扱いを受けている以上、われわれはボイコットの意味も込めて食肉を拒否すべきだという。つまり、「不必要に動物を殺すことに反対する人びと」と、「苦しみを与えることだけに反対する人びと」は、ここで共同歩調をとるべきだ(203頁)というのである。
関連記事
-
-
『サカナとヤクザ』鈴木智彦著 食と観光、フードツーリズム研究者に求められる視点
築地市場から密漁団まで、決死の潜入ルポ! アワビもウナギもカニも、日本人の口にしている大
-
-
『永続敗戦論 戦後日本の核心』、『日米戦争を起こしたのは誰か ルーズベルトの罪状・フーバー大統領回顧録を論ず』『英国が火をつけた「欧米の春」』の三題を読んで
「歴史認識」は観光案内をするガイドブックの役割を持つところから、最近研究を始めている。横浜市立大学論
-
-
ジャパンナウ2019年9月号原稿「森光子記念館」
著名人の顕彰施設は著名である限りは存続する。問題は経年変化により著名人でなくなった場合である。文化
-
-
『ピカソは本当に偉いのか?』西岡文彦 新潮新書 2012年 を読んで
錯覚研究会での発表に備えて読んでみた。演題が「ピカソの贋作は本物を超えるか」としたため、慌てて読んで
-
-
高木由臣 公研2019.1月「ゾウリムシ研究でたどり着いた『私の生命観』」
生命とは死なないのが本来の姿であり、死ぬことができるように進化した どうして? どのように?
-
-
『国債の歴史』(富田俊基著2006年東洋経済新報社)を読んで
標記図書を読み、あとがきが要領よくまとめられていた。財政に素人の私には、非常に参考になる。 要約す
-
-
動画で考える人流観光学 観光資源論 宇宙旅行
https://youtu.be/KpGnwLiTYj8 https://youtu.be/a
-
-
中国語の中の日本語(Chinese Borrowings from the Japanese Language) 陳 生保(Chen Sheng Bao) 上海外国語大学教授
中国語の中の日本語(Chinese Borrowings from the Japanese
-
-
『中国人のこころ』小野秀樹
本書を読んで、率直に感じたことは、自動翻訳やAIができる前に、日本型AI、中国型自動翻訳が登場す