『進化のからくり』千葉聡 ガラパゴス島が観光資源になる過程の材料として面白い
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最終更新日:2023/05/21
観光資源
ダーウィンが進化の着想を得たのがガラパゴスだとは航海記には書いてない。進化論発祥の聖地になったのは1935年 ダーウィンフィンチの伝説
『種の起源』の初版では「転成」(transmutation)という用語を使い、「進化」(evolution)という用語を使わなかった。
講義序盤のオリエンテーションは、じつに鮮やかだ。
「進化論」の着想へと導いたマネシツグミ(鳥)の形質変化についてのダーウィン自身の“気づき”に始まって、やがて世に流布していくダーウィン伝説の紆余曲折。さらに、ある時点から『種の起源』着想の原点として認識されるようになったダーウィンフィンチ類(鳥)の進化を解明していく“後継ダーウィン”たちのエピソードまで。『種の起源』がまさに転生していく過程をコンパクトに紹介していく。
とくにグラント夫妻の研究について語るあたりで、「進化論」のエッセンスを明解に示してみせる。
グラント夫妻は、40年という短いスパンの中でリアルタイムに起こる「進化」を観測・分析し、「種分化」を実証した“後継ダーウィン”のひとり。その研究によれば、フィンチ類は大陸から遠く離れたガラパゴス諸島の島ごとに数種ずつ生息する。山側・海側に棲む種、固い大きな種子を割って食べる種、小さな実を啄む種……。同じ島内で進化・種分化したという。
リアルタイムで進化していく様子が興味深い。例えば、嘴(くちばし)の形質はこんな具合に進化する。ある時エルニーニョに伴う気候変動によって島の植生が変わった。フィンチが好んで食べていた固く大きな種子が減った代わりに、小さな種子が増えた。それまでは大きな嘴をもつ個体の方が固く大きな種子を割って食べるのに適していたが、小さな種子を啄(ついば)むには都合が悪い。すると徐々に小さな嘴をもつ個体の生存率が高まり、やがて種集団を作り、種分化した。40年間で他にもそうした環境変化に伴う「進化」が何度も起こったという。
「進化」というと、何十万、何百万年という年月を想像するが、意外にも人の半生程度のタイムスケールで現れたと知って驚く。と同時に、「進化」自体が多義性を含むことに興奮を覚える。
すると、著者の講義は生物学を超えて、思いもよらぬ分野へ広がりはじめた。
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