ヨーロッパを見る視角 阿部謹也 岩波 1996 日本にキリスト教が普及しなかった理由の解説もある。
キリスト教の信仰では現世の富を以て暮らす死後の世界はありえない。其の結果財宝の埋蔵は行われなくなって、流通過程に戻ってくることになった。贈与慣行を形を変えてカソリックの教義のなかにいりこんだ。宗教改革の中でルターは贈与関係を全面的に否定。ヨーロッパでは11世紀から14,5世紀の間に大教会が全部できている。宗教改革をひかえ、贈与慣行は教会からも消えていく。
聖書を自分たちの理解できる範囲で受け取っている。其のほかの部分は全部自分たちの社会慣行にあうように書き改めている。日本では聖書を至上のものとしたため、無理があり、広がらなかった。
キリスト教は自分たちの文明より高い文明に教義を広げたことはない。ヨーロッパから来た宣教師の学力があまりにも低くて、もっと学識のある人を送り込まないと日本の僧侶とは太刀打ちできないといっている。世間的な人間関係を駆逐しない限り、キリスト教は普及できない。
1215年のラテラノ公会議で告白はすべての成人男女の義務とされた。フーコはヨーロッパの原点はこれにあるという。日本の場合 罪という意識はない。個人を前提としないから贖罪の儀式もないが、世間によるさばきがある。
学校は明治以降日本の社会で大変大きな意味をもった。農村では貨幣が無くても暮らせたが、子供が学校へ行くようになって現金が必要とされるようになり、大きな変化が発生した。学校での名前と通称が違うことが多かった。学校の中では平等であった。
贈与慣行が貨幣経済の進展の中で日本で生き残っている。世間という絆が貨幣を使う主体となった。葬式の時に現金は許されない。ご霊前、ご仏前、それぞれの儀礼にふさわしい呪術的なものである袋にいれればよろしい。のしがみ 、これはアワビの代用品。貨幣は実質的に用いられているが 古来の人間関係は形の上では存続、これが世間の約束事である。ヨーロッパでは貨幣で代替されることは許されず、自分で考えたものを贈るから、個人が生まれる。日本は世間に埋没できる
関連記事
-
-
観光資源の評価に係る例 米国の有名美術館に偏り、収蔵作品は「白人男性」に集中
https://www.technologyreview.jp/s/117648/more-th
-
-
『インバウンドの衝撃』牧野知弘を読んでの批判
題名にひかれて、麻布図書館で予約をして読んでみた。2015年10月発行であるから、爆買いが話題の時代
-
-
『ルポ ニッポン絶望工場』井出康博著
日本で働く外国人労働者の質は、年を追うごとに劣化している。 すべては、日本という国の魅力が根本のと
-
-
『QUORA 日本人の賃金が30年間増えなかった理由』vs 渡辺努東大教授の「物価と賃金の心地よい状態」説
渡辺努「世界と日本の物価に何が」2022年12月13日 (火) https://www.nhk
-
-
『「源氏物語」と戦争』有働裕 教科書に採用されたのは意外に遅く、1938年。なぜ戦争に向かうこの時期に、退廃的とも言える源氏物語が教科書に採用されたのか
アマゾン書評 源氏物語といえば、枕草子と並んで国語教科書に必ず登場する古典である。
-
-
世界の運営を米国でなく中露に任せる 2023年6月7日 田中 宇
https://tanakanews.com/230607armenia.htm 5月25日、
-
-
QUORAに見る歴史認識の一意見 東条英機と昭和天皇の関係に関する一意見
東条英機氏は几帳面で小心、そして子煩悩なな男だった伝えられている。石原莞爾氏などは、東条氏の小物
-
-
戦陣訓 世間が曲解して使用し、それが覆せないほど行き渡ってしまった例
世間が曲解して使用し、それが覆せないほど行き渡ってしまった例である。「もはや戦後ではない」は私の
-
-
『金融資本市場のフロンティア 東京大学で学ぶFinTech、金融規制、資本市場』に学ぶべきMaaS
本書を読んで、アンバンドリングとリバンドリングという言葉に出会った。金融機能が、テクノロジーが導入