*

ヨーロッパを見る視角 阿部謹也 岩波 1996 日本にキリスト教が普及しなかった理由の解説もある。

公開日: : 最終更新日:2023/05/28 出版・講義資料, 歴史認識

 

 

 キリスト教の信仰では現世の富を以て暮らす死後の世界はありえない。其の結果財宝の埋蔵は行われなくなって、流通過程に戻ってくることになった。贈与慣行を形を変えてカソリックの教義のなかにいりこんだ。宗教改革の中でルターは贈与関係を全面的に否定。ヨーロッパでは11世紀から14,5世紀の間に大教会が全部できている。宗教改革をひかえ、贈与慣行は教会からも消えていく。

 

聖書を自分たちの理解できる範囲で受け取っている。其のほかの部分は全部自分たちの社会慣行にあうように書き改めている。日本では聖書を至上のものとしたため、無理があり、広がらなかった

 

キリスト教は自分たちの文明より高い文明に教義を広げたことはない。ヨーロッパから来た宣教師の学力があまりにも低くて、もっと学識のある人を送り込まないと日本の僧侶とは太刀打ちできないといっている。世間的な人間関係を駆逐しない限り、キリスト教は普及できない。

 

1215年のラテラノ公会議で告白はすべての成人男女の義務とされた。フーコはヨーロッパの原点はこれにあるという。日本の場合 罪という意識はない。個人を前提としないから贖罪の儀式もないが、世間によるさばきがある。

学校は明治以降日本の社会で大変大きな意味をもった。農村では貨幣が無くても暮らせたが、子供が学校へ行くようになって現金が必要とされるようになり、大きな変化が発生した。学校での名前と通称が違うことが多かった。学校の中では平等であった。

 

贈与慣行が貨幣経済の進展の中で日本で生き残っている。世間という絆が貨幣を使う主体となった。葬式の時に現金は許されない。ご霊前、ご仏前、それぞれの儀礼にふさわしい呪術的なものである袋にいれればよろしい。のしがみ 、これはアワビの代用品。貨幣は実質的に用いられているが 古来の人間関係は形の上では存続、これが世間の約束事である。ヨーロッパでは貨幣で代替されることは許されず、自分で考えたものを贈るから、個人が生まれる。日本は世間に埋没できる

関連記事

no image

聴覚 十二音技法

https://youtu.be/HeXEzMWi2EI 時代は無調の音楽に対する準備

記事を読む

no image

安重根の話 

韓国でも安重根は韓国の独立のために伊藤博文を暗殺したとされているが、それは大きな間違い。彼は熱烈な

記事を読む

『観光の事典』朝倉書店

「観光の事典」に「観光政策と行政組織」等8項目の解説文を出筆させてもらっている。原稿を提出してか

記事を読む

no image

保護中:  『市場と権力』佐々木実を読んで

日銀が量的緩和策で銀行に大量にカネを流し込んだものの、銀行から企業への融資はそれほど増えなかった。

記事を読む

no image

『2050年のメディア』下山進

日本の新聞がこの10年で1000万部の部数を失っていることを知り、2018年4月より、慶應義塾大学

記事を読む

no image

田岡俊二さんの記事 陸軍は「海軍の方から対米戦争に勝ち目はない、と言ってもらえまいか」と内閣書記官長(今の官房長官)を通じて事前に働きかけた。だが、海軍は「長年、対米戦準備のためとして予算をいただいて来たのに、今さらそんなことは言えません」と断り、日本は勝算のない戦争に突入した。

昔、国際船舶制度の件でお世話になった田岡俊二さんの記事が出ていたので、面白かったところを抜き書き

記事を読む

no image

園田、石原も認識していた尖閣問題棚上げ論      川島真『21世紀の「中華」』を読んで

気になったところを抜き書きする。 外国人犯罪者の数で中国人の数が多いが、在留率が30%と多い

記事を読む

no image

書評『人口の中国史』上田信

中国人口史通史の新書本。入門書でもある。概要〇序章 人口史に何を聴くのかマルサスの人口論著者の「合

記事を読む

『尖閣諸島の核心』矢吹晋 鳩山由紀夫、野中務氏、田中角栄も尖閣問題棚上げ論を発言

屋島が源平の合戦の舞台にならなければ観光客は誰も関心を持たない。尖閣諸島も血を流してまで得るもの

記事を読む

no image

朝鮮戦争の経済効果

もし、朝鮮戦争がなかったら日本は戦後の経済復興は遅れていたと思いますか? 確かに3年間ぐらい

記事を読む

no image
🌍🎒2024シニアバックパッカー南極太平洋諸国の旅 福建省(24番目)厦門

中国渡航にビザが必要な段階で計画したので、金門島から廈門に渡る

🌍🎒シニアバックパッカー南極太平洋諸国の旅 台湾省🏳‍🌈 金門島

  昨夜桃園空港から台北駅に鉄道で移

no image
🌍🎒シニアバックパッカー南極太平洋諸国の旅 台湾省🏳‍🌈 台北

国連加盟国第一か国目は中国。1970年に香港、台湾と旅行した。当時は、

🌍🎒2024シニアバックパッカー南極太平洋諸国の旅 パラオ共和国(国連加盟国188か国目)

    2024年12月4日早朝マニラから

🌍🎒2024シニアバックパッカー南極太平洋諸国の旅 セブ・マクタン島

youtubeで、マゼランの世界一周を 取り上げた動画があり、船

→もっと見る

PAGE TOP ↑