*

『素顔の孫文―国父になった大ぼら吹き』 横山宏章著 を読んで、歴史認識を観光資源する材料を考える

公開日: : 最終更新日:2023/05/20 出版・講義資料, 観光資源

岩波書店にしては珍しいタイトル。著者は「後記」で、「正直な話、中国や日本で、革命の偉人として、孫文がなぜここまで称揚されるか、不思議でたまらない」と書いている。鈴江言一「孫文伝」(1950.岩波書店)も「人びとは彼を『孫大砲』と綽名した。これは、大隈重信の『大風呂敷』と同じ意味である。この綽名はともに愛嬌味を含んでおり、かつ本人達の言動そのものも愛嬌たっぷりのものだった」(1977.10版.420p)と書いている。

孫文が眠る南京の中山陵は立派だそうだ。共産党も国父と評価する。有益な本だ。孫文の女性好きは有名だが、これについての本書の記述はいささか品位に欠けるが、観光資源としてみれば、南京大虐殺記念館を見学した日本人にはそのほうが南京観光の価値は高くなるのかもしれない。

孫文は辛亥革命時には日本にいた。つまり清朝を倒した男ではないのに、臨時大総統になった。アメリカ、日本で亡命生活を余儀なくされていたが、在外中国人を始め日本人からも資金を集め、清朝打倒の反乱軍を何度も起こしている。すべて失敗に終わったが、それだけの資金を集めることができた孫文は、魅力あふれる人物だったようだ。1911年の「辛亥革命」に際して、アメリカから帰国した孫文が、資金難に苦しみ、満洲を一千万で日本に売買する交渉を三井の森格と行ったことは、1995年頃、藤井昇三の研究で明らかにされた。兵隊に対する賃金や革命政府の樹立のために一千五百万必要だったが、日本側との交渉は不調に終わり、とうとう用意できなかった。
このとき、孫文の亡命生活を支援したのが日活映画で財を成した梅屋庄吉である。2004年に、西木正明が実話に基づく「孫文の女」という短編を発表した。最初に亡命した頃の孫文の年端もいかぬ少女たちを愛玩する性生活を描いたものだ。そのうちの一人は娘を産んだ。辛亥革命後の亡命生活で梅屋の娘と結婚しようとして不首尾に終わった48歳の孫文は、宋財閥の次女、22歳の宋慶齢と結婚することになる。もちろん、政略結婚であり、そのために若き日の妻も内縁関係にあった糟糠の同志妻も捨てた。

関連記事

『脳の意識 機械の意識』渡辺正峰著 人間は右脳と左脳の2つを持ち,その一方のみでも意識をもつことは確かなので,意識を持っていることが確実である自分自身の一方の脳を機械で作った脳に置き換えて,両脳がある場合と同じように統一された意識が再生されれば,機械は意識を持ちうると結論できる.

Amazon 物質と電気的・化学的反応の集合体にすぎない脳から、なぜ意識は生まれるのか―。多くの

記事を読む

no image

観光立国から経済立国へ Recommendations with Respect to U.S.Policy toward Japan(NSC13/2)

この翻訳テキストは、細谷千博他『日米関係資料集1945~97』(東京大学出版会,1999)<当館

記事を読む

no image

『シベリア出兵』広岩近広

知られざるシベリア出兵の謎1918年、ロシア革命への干渉戦争として行われたシベリア出兵。実際に起

記事を読む

『近世旅行史の研究』高橋陽一 清文堂出版 宮城女子学院大学

本書の存在を知り港区図書館の検索を探したが存在せず都立図書館で読むことにした。期待通りの内容で、

記事を読む

no image

Quora ヨーロッパ人による境界がなかった場合には、今日のアフリカには幾つくらいの国があったと思いますか? 欧州にはバスク語しか残らなかった

https://youtu.be/i28l-t4H1GM ヨーロッパ人による境界がなかっ

記事を読む

no image

明治維新の見直し材料  岩下哲典著『病と向きあう江戸時代』第9章 医師シーボルトが見た幕末日本「これが日本人である」

太平の世とされる江戸時代に自爆攻撃をする「捨足軽」長崎奉行配下 福岡黒田家に「焔硝を小樽に詰めて肌身

記事を読む

『チベットの娘』リンチェン・ドルマ・タリン著三浦順子訳

河口慧海のチベット旅行記だけではなく、やはりチベット人の書物も読まないとバランスが取れないと思い、標

記事を読む

『築地と豊洲』澤章 都政新報社

Amazonの紹介では「平成が終わろうとしていたあの頃、東京のみならず日本中を巻き込んだ築地市場の

記事を読む

no image

『QUORA 日本人の賃金が30年間増えなかった理由』vs 渡辺努東大教授の「物価と賃金の心地よい状態」説

渡辺努「世界と日本の物価に何が」2022年12月13日 (火) https://www.nhk

記事を読む

『高度経済成長期の日本経済』武田晴人編 有斐閣 訪日外客数の急増の分析に参考

キーワード 繰延需要の発現(家計ストック水準の回復) 家電モデル(世帯数の増加)自動車(見せびら

記事を読む

no image
🌍🎒2024シニアバックパッカー南極太平洋諸国の旅 福建省(24番目)厦門

中国渡航にビザが必要な段階で計画したので、金門島から廈門に渡る

🌍🎒シニアバックパッカー南極太平洋諸国の旅 台湾省🏳‍🌈 金門島

  昨夜桃園空港から台北駅に鉄道で移

no image
🌍🎒シニアバックパッカー南極太平洋諸国の旅 台湾省🏳‍🌈 台北

国連加盟国第一か国目は中国。1970年に香港、台湾と旅行した。当時は、

🌍🎒2024シニアバックパッカー南極太平洋諸国の旅 パラオ共和国(国連加盟国188か国目)

    2024年12月4日早朝マニラから

🌍🎒2024シニアバックパッカー南極太平洋諸国の旅 セブ・マクタン島

youtubeで、マゼランの世界一周を 取り上げた動画があり、船

→もっと見る

PAGE TOP ↑