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シニアバックパッカーの旅 ⒁黒竜江省ハルピン(承前) 安重根記念館

公開日: : 最終更新日:2023/05/28 シニアバックパッカーの旅, 歴史認識

中国の韓国研究者とのハルピン旅行の楽しみの一つに安重根記念館がある。
もともと朝鮮民族芸術館にあったものを2014年にハルピン駅に移設したものであるようだが、今年2017年に、駅の改築工事の際に再び元に戻したようである。

ノンフィクション作家・早坂聡の「テロリスト・安重根」
https://books.google.co.jp/books?id=8CAyCwAAQBAJ&pg=PT212&lpg=PT212&dq=%E6%9C%9D%E9%AE%AE%E6%B0%91%E6%97%8F%E8%8A%B8%E8%A1%93%E9%A4%A8&source=bl&ots=eYFA7JRGCY&sig=ktEkmwIRPcN_aOOPIlqZvvBq_EQ&hl=ja&sa=X&ved=0ahUKEwipq5ixz7fXAhUFmJQKHSolBY4Q6AEIMjAC#v=onepage&q=%E6%9C%9D%E9%AE%AE%E6%B0%91%E6%97%8F%E8%8A%B8%E8%A1%93%E9%A4%A8&f=true
を読むと、表題がテロリストとなっている。内容もかなり思い込みがある。
山川出版社の世界史用語集によると、安重根は「韓国の愛国者で、伊藤博文を朝鮮亡国の元凶とし1909年ハルビンで暗殺。刑死した。」[112]とあり、そもそもほとんどの教科書に登場しない語句である。伊藤の暗殺に関連して名前が出てくる程度であり、独立運動家や民族主義者など簡単に表現されることがほとんどで、テロ行為そのものの評価にまで踏み込んでいる日本の教科書は存在しない

テロリストかどうかはともかく、日本での評価は伊藤博文を殺害した犯罪者ということになるが、歴史の評価は別であろう。江藤新平も犯罪者であるが佐賀県では「佐賀の7賢人」である。田中角栄だってその意味では同じである。
当時の関係国は、中国、ロシア、日本、「韓国」であるが、比較的条約が整っており、日本が裁判をしたから、日本では犯罪者ということになるのであるが、ハルピン駅構内はロシアに裁判権があるものの、取り決めで日本に引き渡しこととなっており、しかも、1905年の日韓協約により、在外韓国人の保護は日本の管轄になっていたからである。清国は、韓清通商条約で韓国人に治外法権を認めていた。いろいろ複雑であり、結局法的判断ということであるが、その法的判断もその時の状況による政治的判断である。

韓国では安重根は英雄であり、日本でいえば吉田松陰である。吉田松陰も当時の規範でいえば犯罪者であり、テロリストといえばテロリストである。中東のISの指導者と同じような立場であろう。しかし観光資源としてみれば、安重根は第一級であり、日中韓共通の資源であると思われるが、それには時間が必要である。

暗殺された伊藤博文も韓国と異なり、日本ではどちらかというと融和主義者であり、暗殺により日本の強硬派の勢いが増したことは皮肉であるといわれている。安重根もかなりの思い込みで伊藤を暗殺しているから、複雑である。中国では日清戦争時の日本側の当事者であり、中国でも比較的知られているほうであろう。しかし、現在の中国政府は暗殺という手段には敏感であろう。観光資源としては、韓国人と日本人の比較考慮であるが、その時の政治情勢と観光客数のバランスである。

中国東北部をめぐっては、中韓両国の間で古代史論争が繰り広げられてきた。中国東北部南部から朝鮮半島北部までを治めた高句麗(紀元前1世紀後半~668年)、沿海州から朝鮮半島北部を領有した渤海(698~926年)が、中国の「地方政権」だったとする研究成果が中国で発表され、韓国が激しく反発した経緯がある。

いずれにしろ、日本、韓国、中国を巻き込んだ具体的な事件であり、ドラマであるから、映画化すれば興行成績が得られるものの、評価をめぐりまだまだ定まらない状況では混乱も招く、ましてや南北朝鮮問題が解決していない。
連累者の刑としては比較的短期であり、軽かったことには朝鮮や欧米でも驚きがあったと言う
夏目漱石も登場

安の死から更に5か月後の8月29日に、日韓併合により大韓帝国は消滅した。初代総理大臣の伊藤博文を暗殺した安の死刑を執行した関東都督府の当時の都督大島義昌は、後の総理大臣の安倍晋三の高祖父にあたるという巡り合わせがある。(関連話)
韓国でも伊藤の暗殺だけでなく、彼の唱えた「東洋平和論」やその思想を証明する教育啓蒙活動は活発であるが、非常に一面的である。裁判での陳述や東洋平和論を読む限り、安自身は反日を主張しておらず、(白人支配への)日朝中の共闘を呼びかけているに過ぎない。これは看守など獄中での日本人との親しい交流でも明かで、安重根の日本観[99]は、不幸な形で誤解されている。君主主義者である安は、日韓の皇室に敬意を払い、政道を正すために奸臣を取り除こうとしたのであり、自らを忠義の臣であるとした。「王や皇帝に誤りはなく、悪い臣下がいるから政道を誤るという」[99]考え方は日本の右翼人士と共通する志向であったので、彼らの共感を得たのである。しかし韓国では親日はタブーであり、安重根は一面的に反日の英雄としか見なされていない。

韓国においても「安義士が正式に軍隊に属したこともないので将軍と呼ぶのはふさわしくない」という意見もあり、李明博政権時代の大韓民国国家報勲処は義士であって将軍ではないという立場であった[45]。
かつて北朝鮮の教科書では金日成の反面教師のように扱われたが、これは安重根が黄海道海州の両班(ヤンバン 李氏朝鮮国の官僚になる特権を持つ貴族)、すなわち社会主義国家の建設のためにおこなう階級闘争によって淘汰さるべき支配階級であったためとされ
陰謀論について  ケネディ暗殺と同じで面白い

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