*

「正座」の始まりは百年前 千利休は、あぐらをかいて茶を点てていたのである

ホテルと旅館を法律上区分する日本の宿泊法制度は珍しい。
その違いを考えると、和式と洋式の違いは「靴を脱ぐか否か」程度になり、それのの本特有ではないことに行き着く。
その思索の過程で、「畳」(旅館の特徴)の普及までは想像できたのであるが、なぜ日本人は正座をするようになったのか疑問を抱いていたが、一つのヒントが週刊現代に掲載されていた。

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50264

普及のナゾにふたつの理由

和室での法事や会食、茶事など様々な場面で必要な「正座」。椅子とテーブルに慣れた現代人にとっては、畳の間での「正しい姿勢」と言われても、苦手な人が大半だろう。だが、ご安心あれ。日本人が古来より正座していたかというと、それは大間違い。礼儀作法の上で正座が定着したのは、ほんの100年ほど前のことだったという。

そもそも両膝を折って腰を下ろす座り方は、かつて「かしこまる」と呼ばれ、庶民が貴人の前で平伏する際など限られた場面での姿勢であった。時代劇などで見られる、奉行所のお白洲に呼ばれた町人の姿を想像してもらうといいだろう。逆に、今では行儀が悪いイメージの強い「あぐら」は、かつて「安座」と呼ばれ、江戸時代以前には大名の正しい座り方として認められていた。正座のイメージがありがちな茶道においても、千利休は、あぐらをかいて茶を点てていたのである。

では何故、「かしこまる」が正しい座り方として採用されたのか。実は、明治新政府が、国民に等しく修身教育を施すにあたり、外国文化との対比を強調しようと、日本人としてあるべき正しい座り方として正座を選んだという。

さらにこの同時期に起こった二つの事柄が、正座の普及と関係している。一つは、「」が誰でも使用できるようになったこと。それまで畳は贅沢品とされ、時として厚みや材質、縁の色や柄で身分を表現するのに使われていた。そのため農民や町人は畳を持つことができず、板張りの床での暮らしでは正座が定着するわけもなかった。

もう一つは、「脚気」の解明である。「江戸患い」と呼ばれるほど当時の人々に大流行したこの病気は、足の末梢神経障害を引き起こす。そのため、江戸時代の人々にとって正座は、まさに拷問に等しい姿勢であったのだ。明治に入ってようやく、脚気が白米を中心とした食生活によるビタミンB1の欠乏であると解明され、治療・予防法が確立される。こうして人々は安心して正座できるようになったのだそうだ。(栗)

関連記事

no image

動画で考える人流観光学 【コンテナホテル宿泊記】災害時は移動して大活躍

こうなると、自動運転機能が付随すると、社会は大きく変わるかもしれない。まさに、住と宿の相対化である。

記事を読む

no image

書評『ベルツの日記』

ベルツが来日早々に経験した江戸の華、火事に関する記事。シュリューマンと同じ目であ

記事を読む

Google戦略から見るこれからの人流・観光(東京交通新聞2014年6月23日)

『モバイル交通革命』の出版から11年がたちます。スマホに代表されるように『位置情報研究会』での論議以

記事を読む

 ホテルと旅館『西洋靴事始め』稲川實 現代書館

観光学でホテルと旅館の違いを説明するときに、私は芦原義信氏が西洋建築と日本家屋の違いを述べられた

記事を読む

no image

『ビルマ商人の日本訪問記』1936年ウ・ラフ著土橋康子訳 大阪は「東洋のベニス」

1936年の日本を見たビルマ人の記述である 1936年当時の大阪市は人口三百万、町全体に大小

記事を読む

no image

動画で考える人流観光学 従と宿の相対化 

https://youtu.be/-_Z9TeVxNtc https://youtu.be/X

記事を読む

no image

旅行業法の不思議② 宿泊引受義務と民泊(Airbnb)論議

Airbnbは、同社にとって最も成長率の高い市場である日本において、登録物件の近隣に住む住民が苦情を

記事を読む

運送機能の分化に対応した旅行商品の創成

レンタカー会社から高級車を借り上げ、多国語を操るカリスマ運転手を派遣してもらい、その他のサービスを組

記事を読む

no image

一見さんお断りの超一流旅館のコンプライアンス

インバウンドブームがまだ本格的に始まる前、大連にある大学の観光学の教授から、中国の富裕層を数人日本

記事を読む

世界人流観光施策風土記 ネットで見つけたチベット論議

立場によってチベットの評価が大きく違うのは仕方がないので、いろいろ読み漁ってみた。 〇 200

記事を読む

PAGE TOP ↑