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2016年3月1日朝日新聞8面民泊関連記事でのコメント

 東京都大田区が、国の特区制度を活用して自宅の空き部屋などを旅行者に有料で貸し出す「民泊」を解禁して、1カ月がたった。しかし、事業者の申請は3件のみ。ホテル不足も背景にトラブルを避けながら民泊を広げるという、国のねらいどおりには進んでいない。 2月22日に大田区が開いた4回目の民泊の説明会には、民泊に参入したいと考える企業や個人ら、316人が参加した。当初予定していた会場の定員の3倍を超えたため、より大きな会場に変更になった。 だが、1月29日に解禁されてから、事業者の認定は旅行関連会社「とまれる」(東京)の2件だけ。2月29日に、新たに個人1人が1件の申請を出した。 低調な背景には「規制が厳しすぎる」(説明会参加者)との声がある。国の特区での民泊は、「6泊以上」の連泊を義務づけている。国は、感染症が広がるリスクを抑えるねらいと説明するが、競合するホテルや旅館を守るための規制との見方もある。さらに大田区では、近隣住民に書面で知らせることや設備について消防署に相談することなど、独自ルールを決めている。 羽田空港がある大田区では特区で認められる前から、旅館業法には基づかない民泊が広がっていた。 マンション2室を大手の民泊仲介サイト「Airbnb(エアビーアンドビー)」に登録している60代の男性は、2014年末から、月に10組ほどの客を泊めているが、区の認定を受けるつもりはない。多くの客は1~2泊なのでルールに当てはまらず、同じマンションの住民の理解も得られるとは思えないためだ。(辻健治) ■拡大に向け議論  旅館業法を所管する厚生労働省と、訪日外国人の受け入れ拡大をはかる観光庁は、大田区の試みを「社会実験」ととらえ、その動きに注目している。 民泊は騒音やごみ捨てのマナーなどで、近隣住民とのトラブルの一因となることもあるが、安倍政権は成長戦略の一つと位置づける。厚労省などは、特区とは別に、旅館業法を規制緩和して民泊を広げていく議論を急いでいる。 客室床面積の基準を緩和して、事業者が旅館業の許可を取りやすくする方針は固めている。特区のように連泊の必要もない。だが、防火設備などの面でホテルと同じような規制を義務づけ、住居専用地域での民泊を認めない点は、これまでの規制と変わらない。 このため、内閣府の規制改革会議の委員からは「旅館業法の対象としている限り、民泊は広がりにくい」との声も出る。うまくしくみづくりができなければ、違法の可能性のある民泊が野放しにされかねない。帝京平成大学の寺前秀一教授(観光学)は「規制緩和が限定的なものにとどまっては、制度に手をつけた意味がない。安全な民泊を広げるという目的から外れずに、議論をしてほしい」と指摘する。(野口陽、竹野内崇宏)

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