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モンゴル国フブスグル地区紀行~トナカイとシャマンとドロ━ン(1)~

公開日: : 最終更新日:2016/11/25 海外観光

モンゴル国最北部に、モンゴル人が「モンゴルのスイス」と呼んでいるフブスグル地域(同国最大のフブスグル湖、Darhadyn湿地帯、タイガ地域)があり、トナカイを放牧し、シャーマンが機能しているツァータン族も居住している地域である。観光地としての将来性と環境保全に興味が持たれているが、持続可能な生態系保全は地元遊牧民との共生なしには考えられない。社会主義時代のネグデル(協同組合)解体が遊牧民生活に大きな影響を与え生態系破壊に繋がっているといわれ、現在は羊の値段を見るとモンゴル国の中で最安値グループに属する地域である。首都ウランバートルまでの物流コストが、資本主義化により生産者負担になったからである。

そのようなおり、独立行政法人環境再生保全機構の実施する地球環境基金助成事業の適用を受けているNPO法人モンゴル環境情報センター(西田英郎代表) が実施している「モンゴル国フブスグル地域における環境教育を伴うエコツーリズムの確立」に関する調査に参加する機会を得た(2015年8月17日~31日)。

なお、フブスグル県は新潟県と友好交流協定を2015年6月に締結し、フブスグル県知事、ムルン市長が新潟県知事を訪問しているところである。

事業の概要は次のとおりである。
①エコツーリズム協議会の開催
ツアールートの決定 ツーリストキャンプの設営条件 ツァーガイドの養成・ガイド費の策定 観光産業の育成についての協議
フブスグル地域(ムルン、ウランウール、ツァガンノール、リンチンフンベ)のツァー運転手協会会長のソソムバラム・ツォグトゲル氏(ムルン在住)が中心になりツァーガイドの養成をする。ツァーガイドブックを教本に研修会を開催する。これらに地球環境基金が助成する。
②環境保全啓発活動
最新のリモートセンシングによってツァー地点を選定する。写真集を作成する。地元児童生徒、運転手、大学、観光関係機関等に配布する。
エコクラブの生徒、教員にガイドブックを配布し、モンゴル教育大学観光学科の学生が指導を行う。研修費用を地球環境基金が助成する
③文化的遺産発掘
文化的遺産発掘のためにツァガンノール地区に居住するツァータン族とロシア・トゥバ地区のツァータン族の比較研究を行う。ロシア・ブリヤード大学ドルチェウ教授と共同研究になる。ツァータン族のルーツの解明やシャーマニズムの文化的遺産が新たに発掘されることが期待される。

なお、これまでの研究成果として、初期のころに発表された報告書が存在する。
IMG_3901

また、ガイドブックも編集されている。
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今回の旅は、観光研究に興味を持つ私にとって、文学研究者が言う所のtravelerとtouristの違い(ブログ 羽生敦子立教大学兼任講師の博士論文概要「19世紀フランスロマン主義作家の旅行記に見られる旅の主体の変遷」を読んで2015年4月  日参照)を肌で感じた旅であった。地球環境基金をスポンサーとする調査研究目的(traveler)だからいわゆる「楽しみのための旅」(tourist)ではない。touristの旅は、身銭をきって「楽しむ」ものであるから要求が厳しく千差万別である。旅行者とスポンサーが同じである貴族が中心の旅の時代は数百年前のことである。私にとって今回の参加目的は、観光調査であるから両者を兼ね備えていることになり、これまでの海外旅行と異なり複雑なものであった。
なお、人流観光研究所ホームページは父親が平成元年に旅したモンゴルの旅行記が講義録等の欄に電子書籍としてアップしてある(http://www.jinryu.jp/category/study)(http://www.jinryu.jp/201507142449.html)。興味のある方は併せて読んでもらいたい。

モンゴル・ツァータン族に関する観光を総括すると、私にはエコツーリズム成立以前の段階であると思われた。ツァータン族の暮し向きが良くなれば、これまでの環境は住民により変化するし、すでに変化している(先進国の者には破壊と映るであろう)。しかし観光で影響を受けると言う段階からは程遠い段階である。今回の旅で受けた印象は、むしろツァータン族を訪れるtravelerやtouristは礼儀正しく遠慮がちであった。この地まで訪れる者は先進国の環境意識の高い者であるからである。しかしながら確実にツァータン族に文化的影響をもたらしていることには間違いがない。今回われわれが調査に使用したドローンもその例であろう。残念ながらエスニックツーリズムを叫ぶ欺瞞性もそこにある。

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