*

人流ビジネスと利用運送

公開日: : 最終更新日:2023/05/20 ライドシェア, 路銀、為替、金融、財政、税制

旅客運送事業法が設備の数量規制を行っていた時代は、旅客運送行為は運送事業者が自ら行うことが前提となっていた。各旅客運送事業法は旅客運送事業者の事業遂行能力を審査することとしており、自ら運送行為を行う運送事業者である実運送事業者とは規制法上の概念であった。これに対して契約運送事業者とは、実際に運送行為を行うか否かは問題では なく、請負った運送を完成させる契約責任を負う者のことをいい、管理能力、信用力、賠償能力が重要な事業遂行能力と判断される。運送行為が規制されるのは当然と認識されている時代は、実運送事業者と契約運送事業者を区別することの社会的な必要性も薄く、契約運送事業者即ち実運送事業者であった。しかしながら事業参入規制制度のもとでも現実には需要に波動性があり、実運送事業者の 間で運送契約が取り交わされる元請、下請関係や、運送契約が取り交わされない用車(船、機)関係が利用されて現実の需要に対応してきた。運送行為の機能分化が発生したわけである。

制度上実運送の概念が明文化されたのは1989 年貨物運送取扱業法においてである。自動車貨物運送事業の規制緩和に伴い貨物運送取扱事業法が制定され、規制対象としての利用運送を範疇化するため、実運送概念が明文化された。制度としての数量規制の緩和も実施され、事業規制の中心が安全規制へとウェイトを移していった。従来の運送事業区分では自家用と区分される運転代行サービスの規制に、営業運送サービスを対象とした二種運転免許の規制が適用されるようになったことが代表例である。

旅行業法は、利用運送について旅行業の範疇として規定している。旅行業法においては貨物利用運送事業法と異なり、「実運送」の法的定義を設けておらず、これに相当するものとして「他人の経営する運送機関」という用語を無定義で使用している。

契約運送事業者イコール実運送事業者を基本スキームとしてきたこれまでのわが国の旅客運送事業に関する法体系のもとでは、利用運送事業を行う旅行業者は事実上存在しなかったとされる。旧旅行あっ旋業法では実運送事業者の登録義務を免除していた。このことが実運送事業者の行う利用運送を 旅行業法上の旅行業務と考えない意識形成に結びつけたのではないかと思われる。

関連記事

no image

定額乗り放題タクシーの開始

いよいよ定額乗り放題タクシーが始まりました。 福岡の模様がテレビ東京のワールドサテライトビジネスで

記事を読む

no image

 『財務省の近現代史』倉山満著 馬場鍈一が作成した恒久的増税案は、所得税の大衆課税化を軸とする昭和15年の税制改正で正式に恒久化されます・・・・・通行税、遊興飲食税、入場税等が制定されたのもこの時であり、戦費調達が理由となっていた 「日本人が汗水流して生み出した富は、中国大陸に消えてゆきました」と表現

p.98 「中国大陸での戦争に最も強く反対したのは、陸軍参謀本部 p.104 馬場

記事を読む

no image

🌍🎒 🚖シニアバックパッカーの旅 2019年9月11日 チームネクスト 清華大学やDiDiで考えさせられた無人運転車

筆者の参加しているタクシー事業者等の研究グループ(チームネクスト)で、恒例の海外視察に参加した。

記事を読む

英国通貨がユーロでない理由 志賀櫻著「日銀発金融危機」

  ポンド危機と英国通貨がユーロでない理由 サッチャー政権

記事を読む

no image

livery stable とlivery cars 流し営業の歴史

図書館から「真昼の決闘(ハイヌーン)」を借りてきて見た。 そのなかで、Livery stapleの

記事を読む

🌍👜 🚖シニアバックパッカーの旅 2018年9月10日 チームネクストモスクワ調査➂ モスクワ大学での意見交換会

今回モスクワ大学を訪問で来たのは、鳩山紀一郎長岡科学技術大学准教授のおかげである。氏はモスクワ大学

記事を読む

no image

人口減少と配車アプリ  Taxi Japan 19.1.25 No.337号 長野県タクシー協会講演会内容へのコメント

長野県新年臨時総会後の講演会なので、テーマは将来ビジョン関係であろう。その意味で会員に日本の配車

記事を読む

書評『みんなが知りたいアメリカ経済』田端克至著

高崎経済大学出身教授による経済学講義用の教科書。経済、金融に素人の私にはわかりやすく、しかも大学教

記事を読む

no image

自治会の無料バス(実費程度)

毎日新聞2017年2月21日にニュースが出ていた。 http://mainichi.jp/art

記事を読む

no image

福岡でウーバー「ライドシェア」の実験開始について

まだ自家用車が庶民のものではない時代に、阿川弘之氏が愛車で赤の他人をピックアップして好意同乗させる随

記事を読む

no image
ロシア旅行の前の、携帯wifi準備

https://tanakanews.com/251206rutrav

no image
ロシア旅行 田中宇

https://tanakanews.com/251205crimea

no image
2025年11月25日 地球落穂ひろいの旅 サンチアゴ再訪

no image
2025.11月24日 地球落穂ひろいの旅 南極旅行の基地・ウシュアイア ヴィーグル水道

アルゼンチンは、2014年1月に国連加盟国58番目の国としてブエノスア

no image
2025年11月23日 地球落穂ひろいの旅 マゼラン海峡

プンタアレナスからウシュアイアまでBIZBUSで移動。8時にPUQを出

→もっと見る

PAGE TOP ↑