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中国の環境問題、日米中問題(公研2015年7月号)と沖縄・朝鮮

公開日: : 最終更新日:2016/11/25 戦跡観光

雑誌『公研』に「爆食」中国と世界の食料問題と題する、村田興文氏と柯隆氏による対話記事が掲載されていた。公研は電力会社がスポンサーの雑誌だが、原子力汚染問題に跳ね返る可能性のある記事であるから、この記事を掲載することには議論があったことだと思う。

 

中国の農地面積は一億二千ヘクタールだが、政府発表では、そのうち16%が水銀・カドミニウム等の重金属で汚染されている。十年、二十年単位では除染は不可能とのこと。揚子江の汚染も想像を絶するようだ。中国版の水俣病、イタイイタイ病はあちこちで発生している。

環境問題に関して中国が抱えているのは技術ではなく制度の問題である。かってに気温を測定するだけでも違法であるようだ。発電所の環境基準を守るためには高いコストがかかる。でもわいろを贈って見逃してもらうことができるから、環境技術が役に立たない。翻って、日本も科学技術が進歩したから環境基準が守られたのではなく、大石武一環境庁長官のおかげであると通産省に入った連中がいっていたと化学出身の村田氏は語る。政治家は政治献金をもらっているし、経団連等の産業界はコストが上昇すると大反対していたが、大石氏がメディアをうまく使って押し切ったのである。中国だけではなかったわけである。

環境庁ができたのは私が霞が関に勤め始めた時代のことであり、このことをあらためて実感している。いまでこそ、環境技術が発展したのは日本の産業界の手柄のようにいわれるが、水俣病等が認定されるまでの経団連の動きは逆であったから、自ら意図して達成したというよりも、厳しい基準を受け入れざるを得なかったから、結果的に環境技術が進歩したということであろう。中国と違うのは、マスコミ等の批判勢力の存在が許されているということであるから、中国も政治的自由をある程度認めてゆかないと、社会は改善されないのであろう。そのことは中国指導層は十分に理解しているのであろうが、国の規模が大きいだけにその実施のタイミングが難しいのであろう。

 

同じ『公研』7月号に寺島実郎氏の「戦後70年と日本の選択」が掲載されていた。日米関係は米中関係できまるという本旨。自己中心主義的な価値観を持っている米国、中国同士として、意思疎通の密度の濃い連携を積み上げている。日本の方が本音の部分でコミュニケーションを書いた過疎的な状況になっているとする。戦勝国だった中国が二つに割れてアメリカの対アジア政策が混迷したことが戦後の日本の運命を決めた。国民党が勝っていたら日本の復興は30年後ろにずれただろう。

日本の外交に関する議論が劣化している象徴が沖縄への対応。アメリカの琉球に対する見方はヤマトんチュウがみる見方と違う。米琉条約をペリーは締結。5回85日間沖縄に来ている。近代史に入ってから日本に併合されたという意味で朝鮮半島と同じアナロジー。朝鮮半島は戦後独立した。沖縄も2度チャンスがあったが、戦争でへとへとになっていてそれどころではなかった。

このあたりの見方は、日中韓の観光政策論議を進める意味では参考になる論点である。ちょうど福永文夫著『日本占領史』中公新書を読み終えたところで、占領史を沖縄と本土を同時並行的に分析している点が、朝鮮戦争と日米講和条約を分析している点と併せて、理解がしやすかったところである。沖縄を貧しくした最大の原因は琉球処分以来の日本の統治であると主張して独立論を説いた沖縄群島議会の共和党の立場は、どこか現在の韓国の主張に通じるものがありそうである。すべてに賛同するものではないが、そのような考えを抱く背景は理解しておいた方がいいのであろう。

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